PRODRONE「空飛ぶ軽トラ」プロジェクトが、大きく飛躍する
2015年に愛知県で創業したPRODRONEの「空飛ぶ軽トラ」プロジェクトが、ここにきて大きく飛躍しようとしている。「空飛ぶ軽トラ」プロジェクトは、物資を50kg搭載して50km飛行できる物流ドローンであり、まだ世界で誰も成功していない。
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そのような高い目標に向かって突き進むPRODRONEの「空飛ぶ軽トラ」プロジェクトに、株式会社ジェイテクトや名古屋鉄道株式会社、さらに愛知県が参画することになり、社会実装へ大きく踏み出すことになった今回、このプロジェクトを主導している愛知県経済産業局経済産業推進監 柴山 政明氏にお話を伺った。
「A-idea(革新事業創造提案プラットフォーム)」とは?
—:愛知県が構築した新しいプロジェクト創出の仕組み「革新事業創造提案プラットフォーム(A-idea)」についてご説明いただけますか
100年に一度の大変革期と言われ、産業構造が急激に変化していく中で、こうした環境変化は社会システムそのものに多大な影響をもたらしています。社会システムの最適化をミッションとする行政機関として、現行の社会政策や施策にについて、環境変化に適応させていくために抜本的な見直しが求められていると考えています。
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愛知県は、こうした環境変化をリスクではなく、むしろチャンスと捉え、「攻め」の施策を開始しました。
第一弾として、愛知県エリアを中心とするグローバルなスタートアップシステムを形成しました。さらに、第二弾はスタートアップとの連携による農業イノベーションプロジェクトの展開、第三弾では、認知症対策を含む高齢化社会におけるデジタル社会の形成を図ることにしています。第四弾として、社会的課題解決と地域活性化を同時に達成するプロジェクトを継続的に創設していくために、2022年12月に革新事業創造戦略を策定しました。
この戦略は、産学官金の多様な主体からの提案を起点として、具体化を図っていくプロセスを明示しています。その主要なツールが、革新事業創造提案プラットフォーム(愛称:A-idea[アイディア])ということになります。
—:PRODRONEが提案したプロジェクト「あいちモビリティイノベーションプロジェクト 空と道がつながる愛知モデル2030」を採択しましたが、理由を教えていただけますか
このプラットフォームに様々な提案等があった中で、PRODRONEの提案が、イノベーション関連の有識者で構成される革新事業創造戦略会議において優れたものとして選定されました。愛知県が取り組んでいくべき革新事業としての採択になります。愛知県を交えたPPP※、官民連携によるプロジェクトということになります。
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※ PPP(Public Private Partnership)とは、公共施設等の建設、維持管理、運営等を行政と民間が連携して行うことにより、民間の創意工夫等を活用し、財政資金の効率的使用や行政の効率化等を図るもの。指定管理者制度や包括的民間委託、PFI(Private Finance Initiative)など、様々な方式がある。
—:愛知県はどのようにプロジェクトに参画されるのでしょうか
このプロジェクトでは、県も事業の主体に加わり、関連企業も含めた形でPRODRONEの提案を実現していく座組となります。そのため、公共性の高い部分については県の予算も投入する形で事業化を進めることになります。
官民連携のプロジェクトということで、提案者であるPRODRONEのほかにも参加企業を募ることにしていますが、そういった企業にも役割に応じて人的・金銭的な負担をいただくことになります。もちろん県の職員もこのプロジェクトに主体的に参加し、事業化を進めていきます。
※5月1日以降に株式会社SkyDrive 、株式会社テラ・ラボ 、VFR株式会社の参画が決定
—:プロジェクトに参画する企業を募集中とのことですが、このプロジェクトをどんどん大きくしていくという目論みがあるということでしょうか
関係者がなるべく多く集まって、それぞれの持つ特徴や役割分担を明確にしながらも、方向性は一致させながら事業化を図っていく考えです。そのため拡大していくことが重要と考えています。
—:非常に興味深いプロジェクトです。今回のプロジェクトの事業主体、先導役は誰になるのでしょうか
プロジェクトを先導するのは、提案者であるPRODRONEです。愛知県と同社が事務局となり、全体の調整を行います。
プレーヤーが多くなると、まとまらなくなってしまったり、意思決定プロセスが煩雑になるといった危惧はよくあると思いますが、このプロジェクトは空のモビリティの社会的受容性の拡大や、社会インフラの形成という側面もありますので、サービスの提供を受ける方、ユーザーの方には多く関与していただくことが良いと考えています。
—:愛知県の官民連携事業ということですが、参画者は愛知県事業者であることが必須なのでしょうか
プロジェクトの目的や展開の方向性に合致しており、参画したい企業であれば地域は限定しておりません。
—:海外の公的プロジェクトだと参画企業やスタッフに国籍制限がありますが、そういった制限は設けていないのでしょうか
このプロジェクトは、国籍・地域を限定するよりもむしろ、多様な人や企業が愛知県に集まっていただいて、愛知県で活動して、その成果が世界や日本に広まってほしいという考え方です。愛知県で活動して、ここから日本を、世界をリードするといった展開を期待しています。
—:PRODRONEの発表資料にロードマップが記載されていましたが、2030年頃までを想定しているということでしょうか
ドローンや空飛ぶクルマの技術課題・制度設計については、国が検討を進めており、段階的にできることが増えていくといった状況です。
それも踏まえて少し長期のスケジュールをとっておりますが、社会的な要請や、技術面・制度面での課題解決が早期に進めば、ビジネスなのでできるだけ早く動かしていきたいと考えています。
—:実証実験などにおいて愛知県が自治体と調整することになる場合、その擦り合わせがスムーズになることを期待してもよいのでしょうか
期待していただきたいと思います。私は以前、このプロジェクトを動かす前に、自動運転のプロジェクトを推進していました。その際、愛知県が国や自治体との調整を行っています。
行政だから何かが緩和されるという意味合いではありません。愛知県は行政ですので、法令の解釈や運用について正確に把握することができるので、早期に調整が図られるということです。
PRODRONEの50kg/50kmドローン「空飛ぶ軽トラ」プロジェクトが、その第1章
—:プロジェクトが目指す2030年に愛知県がどう変わっていくのか、イメージを何かお持ちでしょうか
プロジェクトのタイトルの通り、空と道がつながった新しいモビリティ社会の形成を目指します。その第1章が、PRODRONEの50kg/50kmドローン「空飛ぶ軽トラ」プロジェクトになります。
段階ごとに説明すると、第2章で、空と陸、人の移動と物の移動をどう融合させていくのか、サービス面の融合だけではなく、運行管理面の融合なども解決を図っていくプロセスに入っていくと思います。また、空だけでなくて陸の自動運転というものが加わって、空と道が繋がる新しいモビリティが登場します。
第3章では、新しいモビリティが社会実装されて、空の管制、陸の管制、ITSの整備された社会インフラ、そして移動の母体となる空飛ぶクルマ、ドローン、自動走行車などが一体的に融合する新しい形でのインフラビジネスが作られるであろうと考えています。
「空」と「道」のモビリティ、そして「物」と「人」のモビリティ、4つの事象が一体となった形での運用マネジメントを完成させると、新しいマルチモーダルの重要なインフラになり得ると思っています。
愛知県は航空宇宙産業の集積地、自動車の集積地であり、工作機械やロボットの集積地でもあることから、多くの可能性を秘めています。ドローンや空飛ぶクルマも既に愛知県に集積していますので、そういった可能性を生かして、いち早く実現するのが我々のミッションであり、将来に向けたイメージとなります。
PRODRONEの50kg/50kmドローン「空飛ぶ軽トラ」プロジェクトを皮切りに「空と道がつながる愛知モデル2030」がいよいよ推進されるが、ドローンや空飛ぶクルマも愛知県にて大きく飛躍するのか?楽しみなところである。DRONE.jpでも引き続きこのプロジェクトを追いかけていきたい。