関西エリアでドローンをテーマにした本格的な展示会は、東京オリンピックのため大阪開催となった2020年の第6回国際ドローン展を除いて初めてとなる。新型コロナウイルス感染症の影響により事前登録制だったが、両日とも多くの来場者でにぎわっていた。
- Advertisement -
プログラムは展示会を中心に、業界の最新動向と自治体の取り組みを紹介するシンポジウム、会場セミナー、商談会で構成され、2日目には神戸港に隣接する公園でのデモンストレーション飛行も行われた。毎年この時期に開催されるビジネス展示会「国際フロンティア産業メッセ」と併催され、特別展示[次世代モビリティ&ドローン]ゾーンにはドローンを活用する自治体・関連企業など68社・団体が出展し、初公開という機体も複数あった。
ここでは会場で注目を集めていたブースを中心に紹介する。
テトラ・アビエーション
大阪・関西万博での導入を目指す空飛ぶクルマ関連では、テトラ・アビエーションが開発するMk-5の実機が展示されていた。同機は米国で実験航空機として認証を受けており、日本での試験飛行も可能となっている。会場の中央に置かれた機体は間近で詳細を見ることができ、ドローンを初体験となる来場者たちからも大きな関心を集めていた。
- Advertisement -
兵庫県・NIROドローンコーナー
ドローンビジネスを支援する本展示会では、実装に向けて自治体と民間が協力する協議会の出展コーナーが目立っていた。その一つ、兵庫県内でのドローン産業創出を目指して続けられているドローン社会実装促進実証事業(令和4年度)に選ばれた8つのテーマに参加する10社を集めた兵庫県とNIRO(新産業創造研究機構)のコーナーでは、様々な地域課題の解消や新技術の実現に向けて開発が進められているドローンが展示された。
ドローン用パラシュートとエアバック装置を開発する日本化薬のドローンは一部(パラシュート部分)がすでに製品化されており、2日にデモが披露された。山陽電気鉄道とジャパン・インフラ・ウェイマークによる洗堀調査と橋梁補修用のドローンはプロトタイプによる実証実験が進められている。
他には、漁場を耕す海底耕耘作業などを行うKDDIスマートドローンの水空合体ドローンや、神戸港を横断するドローンデリバリーの検証を10月から実施するTOMPLAのドローン、設備警備業務でのドローンDX推進に向けた実証試験ではセブントゥーファイブが、屋内外の狭い空間の点検業務に活用できる小型ドローンなどを出展していた。
全国新スマート物流推進協議会
山梨県小菅村や千葉県勝浦市など国内の6自治体との実証実験を行っている全国新スマート物流推進協議会は、現地で使用しているSky Hubの量産型物流専用ドローン「AirTruck」を展示していた。荷物を上から入れる方式で安定させ、出し入れもしやすいよう工夫されている。小菅村ではクルマで40分かけて買い物に行くところを、注文から最短30分で村内に5か所設置したドローンスタンドに商品を届けている。2011年11月から実装されているサービスではセイノーホールディングスらが協力している。
DroneWorkSystem
最大49kgのペイロードを持つEAGLEシリーズ2機種とドローン教習用機体として認定されている「TranerACE-3」を展示。EAGLEシリーズは本体のサイズは基本的に同じだが、機体全体の軽量化やバッテリーの容量を変えるなどでバリエーションを出している。
- Advertisement -
TEAD/パナソニック システムデザイン
ドローンの遠隔制御で協力関係にあるTEADとパナソニック システムデザインは、災害対応巡視ドローンとリモートID機器を出展し、ブースでは日本製ドローン「GNAS SKY」を展示していた。機体は大きいが、アームが折りたためるので現地にクルマで持ち込めるなど運用しやすいという。
IHI
IHIは今回が初公開となる高所作業用の特殊ドローンを展示していた。水を噴射して窓を清掃するドローンは、機体を安定させる制御方法に苦労していたが、噴射する方向と反対側に横力カスラスタを追加することで回転モーメントを発生させ、継続した安定飛行が可能になった。通販で手に入る雪下ろし器具と組み合わせられるなど様々な用途を試しているところで、さらに新たなイデアを募集しているところだ。
ロボデックス
次世代型ハイブリッドドローンを開発するロボデックスは、より長時間の飛行が可能となる水素燃料電池を搭載したドローンを展示。本体の中央に水素タンクを格納するユニークなデザインになっている。
神戸トヨペット
神戸トヨペットは災害時に燃料電池自動車トヨタMIRAIを動力源とし、PRODRONE製の有線給電ドローンをつなげて避難所や被災地で簡単に設置できる携帯電話基地局にする取り組みを紹介した。有線なので長時間使用でき、ガソリンやカセットボンベを使用する発電機よりクリーンであることもポイントだ。
ダスキン
ハチを駆除するドローンの実用化を進めるダスキンは実証実験に使用した実機を展示していた。長いノズルで蜂の巣を壊しながらハチを吸い込むというユニークなアイデアは、兵庫県とNIROによる令和3年度のドローン先行的利活用事業に採択されたことをきっかけに実用化が進み、来年の夏ごろのサービス開始を予定しているという。
岩本石油/ACSL
岩本石油とACSLは閉鎖環境を点検する「Fi4(ファイフォー)」の実機を展示し、使用する様子を動画で紹介した。主な用途は下水道内の点検で、発射台を使ってマンホールから機体を投入した後は自動で撮影を行うため、安全で臭いの問題も低減できる。
新明和工業
US-2型救難飛行艇とボーイング社の787向け主翼スパーを開発する航空機事業を持つ新明和工業は、新たな領域として開発を進める固定翼型無人航空機「XU-S」を展示。観測、監視、通信など幅広い分野に向けて実用化を進めており、淡路島での環境観測試験などを行っている。2日には8月に完成したばかりの「XU-M」のデモンストレーション飛行を披露し、見事に成功させている。
今回展示されていたドローンは、よく知られる撮影や農業での利用だけでなく、物流やインフラ点検、災害・獣害対策など幅広く、ドローンをあまり知らない人たちも何かしら興味を持てるポイントがあったのではないかと感じた。併催の国際フロンティア産業メッセは、社会見学で地域の学生たちがたくさん参加する展示会でもあるので、これを機会にドローン産業を目指す若い世代が増えてほしいものである。