今年も開催「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2016」
米国アカデミー賞公認の国際短編映画祭「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2016(以下、SSFF&ASIA)」が幕を開けた。1999年に始まり、今年で18回目を数えるこの映画祭は、短編作品を取り扱う国際映画祭としてはアジアで最大級の規模を誇る。映画祭代表を務めるのは、俳優の別所哲也氏。彼は今年、DJIとタッグを組み、新たな映像を生み出す最新技術として、クリエイターと映画ファンに向けてドローンを紹介した。DJIが生み出すテクノロジーは、映画の未来にどのような影響をもたらすのか。さらに詳しくVol.01に引き続き、DJI JAPAN株式会社代表取締役 呉韜氏と別所氏に話を聞いた。
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出会ったその日に参加を決めた
──今回のSSFF&ASIA2016に、DJIが参加する経緯を教えてください。
別所氏:以前から新しい映像技術としてドローンに注目していました。そこで思い切ってDJIさんを訪ねたら、偶然、呉社長がオフィスにいらしたんです。「DJIというドローンの技術をぜひ紹介したいんです!」と話をして、そこからですね。
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DJI JAPAN株式会社代表取締役 呉韜氏
呉氏:別所さんの熱意を感じて、その日のうちに「やりましょう!」とお答えしました。そもそもドローンはクリエイターのために用意された“道具”に過ぎません。ドローンだけでは何もできない。ですからドローンの価値を生み出そうとするSSFF&ASIAは、我々にとっても素晴らしい機会なのです。
──別所さんと呉社長がお話をされてからイベント開催まで、どのように進められたのでしょうか?
ショートショートフィルムフェスティバル代表/俳優の別所哲也氏
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別所氏:まずは「映画祭に来てくれた方たちにどうやってドローンをプレゼンテーションしようか」と考えました。そこで、SSFF&ASIAのキービジュアルのラッピングをしたPhantom 4で、オープニングセレモニーに登場してもらうことにしたんです。会場をPhantom 4が颯爽と飛んで、とてもドラマティックな演出で。歓声が上がりましたね。
呉氏:後ろから飛んできたので「ええっ!」て(笑)。弊社パイロットが操縦していたのですが、ドキドキしました。
SSFF&ASIAのキービジュアルのラッピングが施されたPhantom 4
別所氏:室内飛行って技術がいるんですよね。すごくカッコよく着陸しました。会場入口にドローンを展示したり、プログラムにトークイベントを組み込んだり、ドローンで撮影したショートフィルムを上映したりと、クリエイターにも映画ファンにもドローンの魅力が伝わるような仕掛けをたくさん用意しました。
映画とドローンの関係性
──現在、映画界におけるドローンの位置づけはどういうところにあるのでしょうか。
別所氏:ドローンによって映像が開拓されるというイメージでしょうか。これまで撮影困難だったバードビューのような映像が手軽に撮影可能になり、映像技術の可能性を切り開いていく装置として注目されています。特にショートフィルムメイカーにおける期待値は高い。ただ「どう触れたらいいのか?」という点はまだ未知数です。その接点をこの映画祭で作っていきたいと思っています。
──呉社長は、映画とドローンという関係をどのように見ていらっしゃいますか?
呉氏:昔から、映画界には無人ヘリコプターでの空撮技術がありました。しかし機体は大きく、コストもかかった。それがドローンの登場によって大きく変化しました。さらにスマートフォンの普及や小型カメラの性能向上によって、非常に安全で手軽に撮影可能なシステムが生まれたんです。このシステムをクリエイティブに活かせるようになったことが大きいと思います。
別所氏:ドローンが革命的なのは、撮影チームをコンパクトにできることですね。すでにショートフィルムの世界はデスクトップフィルムメイキングが主流。ひとりでも映画が作れる時代です。ただ、空撮をする時はヘリコプターを飛ばしたりクレーンを用意したりと大掛かりな技術装置を組む必要がありました。それをドローンひとつで対処できるようになった。これは大きな進歩なんですよ。
──個人的に思うのが、ドローンで撮影された映像はすごくスムーズでクリアですよね。作品によっては荒々しく撮りたいという制作側の要求も出てくると思うんですが、そこはパイロットの技術力が問われるのでしょうか。
呉氏:今の質問ですと、二つの問題がありますね。まず「ドローンをどうやってアグレッシブに飛行して撮影するか」。ドローンにはジンバルが付いているので、安定した映像しか撮れません。アグレッシブに撮りたい場合は、これを外してカメラを直接ドローンに固定すれば問題ありません。そしてもうひとつ、「パイロットの技術力」という点については、ドローンに動きを覚えさせるためのスキルは必要です。
──技術を覚えるには、パイロットの育成が必要になりますね。
別所氏:それは、まさに僕が今後DJIさんと一緒にやっていきたいことのひとつなんです。なぜなら、僕自身もパイロットになりたいから!肩書に「DJIパイロット/アクター」って入ってたら、かっこよくないですか?これからは「ドローンパイロット」も登場してくるでしょうね。
──「ドローンパイロット」が新たな職業になる、と。
別所氏:そうです。映画以外のニーズも考えられます。先日の熊本地震でも、ドローンによって被害状況が可視化できました。災害やセキュリティ、流通などの分野でも、ドローンを飛行させる技術は求められていくはずです。
──そのためにクリアしないといけない部分もありそうですね。
呉氏:日本ではドローンの法規制がありますが、申請すれば撮影は可能なんです。
別所氏:ドローンに限らず、僕たちが映画を作る時は必ず何かしらの撮影許可が必要なんです。道路を使う時は道路使用許可が要るし、どこかの敷地内で撮る場合も予め許可を取りますから。インターネットがそうだったように、技術躍進とともにいろんな課題がクリアされていくと思います。我々も当事者として一緒に取り組んでいきたいですし。
照明から雨降らし、テイク2も楽勝!難しい撮影も何度でもこなせる!
話が尽きないお二人、盛り上がっています!
──コントローラーもかっこいいですし、スマートフォンと連携させて映像をリアルタイムでチェックできます。ガジェット的にも刺激されますよね。
別所氏:例えば自分で操作しなくても、マップ上で位置を指定したら飛行可能でしょうか?
呉氏:もちろん可能です。映画撮影でドローンを使う大きなメリットを紹介しましょう。
同じ動きを設定することで、テイク2が完璧に再現できるんです。手動ではどうしても位置が変りますよね。でもプログラムであれば同じ飛行が実現できるんです。大型のドローンに照明を積めば、ライティングだって可能です。雨を降らせることも、全て同じタイミングでできてしまう。
別所氏:すごいことになりますね…。もちろん職人さんや技術さんが頑張って降らせてくれる雨も、味があって素敵なんですけどね。
──低コストでそういった演出効果が可能になれば魅力的ですね。呉社長は、より映画撮影に特化したドローンの開発は考えていらっしゃいますか?
空撮専用として4月に発表されたMATRICE 600
呉氏:DJIではPhantom 4やMATRICE 600など様々な機種を作っていて、いずれのマシンもハリウッドを始めとする映画界の最前線で使えるような機能を備えています。我々はハリウッドにスタジオも持っていますし、常に映画制作の最前線にいるんですね。常に現場からのニーズを受けて開発を進めているので、映像撮影用というよりは全てのドローンにおいて、そのフィードバックが生きていると思います。
──では、今後映画業界の人たちがドローンを使うようになると、裾野も広がりますね。
別所氏:「技術者が育つ」「そのための現場がある」「成果物として出来上がったものがある」、これらが三位一体で動いていくことが大切なのかなと思いますね。そのひとつの舞台が映画であればと思います。
ドローンと描く「映像未来地図」
──最後に、今年の「Short Shorts Film Festival & Asia」の楽しみ方を教えてください。
別所氏:ドローンのほかにも、VRやAIのような技術が、映像文化、もっというと映像情報産業と相まって広がっていくと思います。僕たちの映画祭はその中心にあるんです。
映画祭というのは20世紀の考え方でいえば、映画が好きな人たちが映画を持ち寄って議論したり評価したりする場でした。21世紀の今は、さらにその場に、テクノロジーやマーケティングの業界の人たちが集まるといいなと。僕らはこのビジョンを「映像未来地図」と呼んでいます。若手映像作家や、技術を持ったクリエイターなど様々な可能性が集まって来ているので、ぜひ、いろんな作品を見ていただきたいですね。
──こうした別所さんの活動を見て、呉社長から若手クリエイターたちに伝えたいメッセージはありますか?
呉氏:クリエイターは、“クリエイターの仕事”をすべきだと思うんですね。その分、機械は僕たちが作ります。何を作りたいか、何をやりたいか、それを強く持って欲しいです。ドローンは今、ここまで安くなりました。これからもコストパフォーマンスの高い機種を開発します。みなさんは安心して、価値のある映像作品を生み出すことに注力してもらえたら嬉しいです。
ドローンと映画の関係を熱く語る二人、今後、映画、映像の世界でもドローンが活躍する事は言うまでもない。「Short Shorts Film Festival & Asia」は、都内数拠点で6月26日まで開催されている。是非脚を運んでもらいたい。詳細は下記リンクオフィシャルサイトから。
聞き手:飯田ネオ 構成:編集部