この技術では、「空芯ビーム」と呼ばれる特殊なビームを形成することで、ドローンに搭載されたカメラなどの機器に影響を与えずに電力を供給できる。
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実験では、空芯ビームを使って伝送した電力を直流に変換し、ドローンの中心部を避けた位置にあるLEDのみを点灯させることに成功した。中心のLEDが点灯していないことから、干渉が回避されていることが確認できる。
この技術は、飛行中のドローンに電力を供給しながら様々なミッションを遂行するための基盤となるもので、将来的には無線電力伝送の実用化や多様な分野への応用が期待されるという。
本研究の成果は、2025年5月28日から東京ビックサイトにて開催される「ワイヤレスジャパン×ワイヤレス・テクノロジー・パーク(WTP)2025」において展示予定だ。
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研究背景
ドローンの社会実装が進み、スポーツ観戦や物流、農業、さらには災害時の情報収集や通信復旧など、さまざまな分野での活用が期待されている。しかし、ドローンは搭載できるバッテリー容量に限りがあり、連続飛行時間が短い(30分から1時間程度)という課題があった。
この問題を解決するため、本研究ではマイクロ波を用いた無線電力伝送システムを提案する。ただし、無線電力伝送を行うには、電力を受け取るための「レクテナ」をドローンの下部に設置する必要がある。これにより、ドローンに搭載するカメラなどのミッション機器と電波的・物理的に干渉してしまうという問題が発生するという。
解決手法
本研究では、電力伝送時の干渉問題を解決するため、「空芯ビーム」と呼ばれる特殊なビームを利用した無線電力伝送システムを開発した。
まず、伝送距離や送受電アンテナの大きさをもとに、空芯ビームを形成するために必要な振幅・位相分布を設計しました。空芯ビームは、アンテナから放射される電波の位相を渦状に回転させることで、伝搬軸上で電波が打ち消し合い、中心の電力がゼロになる特性を持つ(図3)。
この設計に基づき、24GHz帯の空芯ビームを生成できる直径30cmの送電アンテナを開発。さらに、受電側として5cm角の軽量なレクテナを開発し、ドローンの下部に19個を平面状に配置した。各レクテナにはLEDを取り付け、電力が伝送された場所を光で確認できるようにした。
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本システムの性能評価のため、送電アンテナから1m離れた位置にレクテナパネルを設置し、実験した(図4)。その結果、ドローンの中心部には影響を与えず、周囲のLEDが点灯することを確認した。今後は、さらに大型の送電アンテナを開発することで、より長距離・大電力の無線電力伝送が可能になると期待されるという。

今後の展望
本研究の成果は、無線電力伝送システムにおいて、ビームの中心部分に干渉を回避できる領域を作り出せることを示した。これにより、ドローンに搭載されたカメラや各種ミッション機器と電力伝送の干渉問題を根本的に解決できる技術となるという。
この技術は、地上から電力を送ることで長時間飛行しながら様々なミッションを遂行できるドローンの実現に向けた重要な一歩だ。また、長距離の無線電力伝送をはじめとする様々な分野への応用が期待されるとしている。