現在、空飛ぶクルマやドローン等の研究開発が世界各国で進んでいる。これらの「次世代エアモビリティ」は、ヒトやモノの移動の利便性を大きく向上させるとともに、機体製造に伴うサプライチェーンの構築やインフラ整備など、大きな経済波及効果も期待されているという。
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名古屋は自動車や航空宇宙などのモビリティ産業の中心地であり、高い技術力を持つ企業や人材が集積しています。名古屋商工会議所は、当地がこの強みを活かし、次世代エアモビリティを新たな産業として根付かせ、当地の産業競争力強化や地域全体の魅力向上に活用していく必要があると考え、標記提言を策定した。
この提言は、名古屋を中心とする当地の強みと将来的な好機を生かし、名古屋駅を「スーパーモビリティハブ」とすることで、次世代エアモビリティの社会実装と関連産業の集積·育成を図り、住民の生活の質の向上や地域の魅力向上、産業競争力の強化につなげるとしている。提言先(予定)は国、愛知県、名古屋市など。
はじめに
2025年3月現在、世界各国が「空飛ぶクルマ(eVTOL:電動垂直離着陸機)」や「ドローン」等の「次世代エアモビリティ(Advanced Air Mobility)」の実用化に向け、法整備や研究開発に取り組んでいる。これらの次世代エアモビリティは滑走路が不要で騒音が少なく、機体の製造や整備にかかるコストが比較的安価であることや、自律飛行により運用にかかる人的コストやスキルが軽減されることから、実用化が進めばヒトの移動やモノの輸送の利便性向上に大きな役割を果たすと期待されている。
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ドローン物流については米国や中国の一部地域等で既に実用化されており、日用品の宅配やフードデリバリーに利用されている。我が国では、山間部や離島を中心に数多くの実証実験を経て、一部において社会実装が開始されている一方、都市部や住宅地における商用運航には至っていない。空飛ぶクルマについては、米国や中国の一部企業が機体の量産化に向けた各種認証取得の最終段階にあり、運航開始が目前に迫っている。我が国でも大阪·関西万博におけるデモフライトが予定されているが、都市部における本格的な商用運航の実現には課題が多い。
矢野経済研究所の調査によれば、空飛ぶクルマの世界市場は、2050年には約185兆円まで成長すると予測され、我が国の産業競争力の強化や世界市場におけるプレゼンス向上のためにも、官民が連携し、ドローンを含む次世代エアモビリティの社会実装に向けた環境整備や関連産業の支援·育成に取り組む必要があると考える。
次世代エアモビリティの商用運航には、人流、物流、監視点検、災害時における被害状況の調査などのニーズや、運航のベースとなる交通や通信等のインフラ、さらには運航や関連サービスに携わる人材等が不可欠だが、名古屋市を中心とする当地はその条件を十分に満たしている。さらに、航空関連産業の集積地であり、機体の製造に必要な高い技術力を有する企業が多く所在していることからも、次世代エアモビリティ産業の中心地として有力な候補地となり得る。
特に、リニア中央新幹線の開業が予定され、それを見据えた再開発も計画されている名古屋駅周辺は、今後、安全性等の諸課題が解決されれば、次世代エアモビリティの離着陸場(バーティポート等)設置も視野に、名古屋駅が「空飛ぶクルマ」や「ドローン」を含めたあらゆるモビリティの接続拠点となる「スーパーモビリティハブ」として、重要な役割を担うことが求められている。
同提言は、2035年頃を目途とし、世界屈指のモビリティ産業の集積地である当地が、我が国の次世代エアモビリティ産業をリードし、その強みを生かした「最先端モビリティ都市」として発展し、関連企業や専門人材のさらなる集積による国際競争力の強化を図るとともに、当地全体の都市魅力の向上にも資するものとなるよう期待するものだとしている。
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提言の全体像(詳細):名古屋を中心とする当地の特徴
強み
次世代エアモビリティを新たな基幹産業として成立させる経済基盤や都市機能がある。
- 日本一のものづくり地域: 自動車産業や航空宇宙関連産業が盛んであり、高い技術力のある企業が集積している。
- 全国有数の都市圏人口: 名古屋を中心とする都市圏人口は1,000万人規模であり、強い経済力を有する。人流·物流ともに十分なニーズがある。
- 日本屈指のターミナル「名古屋駅」: 新幹線、JR、名鉄、近鉄、地下鉄、高速·路線バスなど多様なモビリティの結節点である。交通機能に加え、オフィスや商業施設等も集積し、高い都市機能を有する。
将来的好機
次世代エアモビリティを含むあらゆるモビリティの活用を想定したまちづくりが進められる将来的なポテンシャルを有する。
- リニア中央新幹線の開業: 東京-名古屋-大阪を含む7,000万人経済圏の中心地となる。
- 名古屋駅地区の再開発: 駅前広場の再整備など、モビリティ空間の再構築によるウォーカブルなまちづくりの推進。今後も大規模な再開発が計画されており、新たなインフラを整備できる余地がある。
- MaaSの進展: 既存交通と新たなモビリティ(自動運転車·シェアモビリティ等)がシームレスに繋がることにより、それぞれのニーズに応じたあらゆるモビリティが容易に選択可能となる。
当地の強みであるモビリティ産業や航空宇宙関連産業を生かし、名古屋駅を次世代エアモビリティを含む「スーパーモビリティハブ」とすることで、移動の利便性向上による交流の拡大を促すとともに、名古屋のまちの個性として活用し、名古屋を中心とする当地全体の魅力向上·競争力強化につなげる。

スーパーモビリティハブとは
モビリティハブ
鉄道駅等を中心とした身近な生活圏における移動サービスの質の向上を図るため、公共交通やシェアモビリティ等の結節点となる拠点のこと。主に狭域交通(鉄道駅からのラストマイル等)の観点で語られることが多く、各地域の実情に応じて、ハブの配置やモビリティの種類等をカスタマイズし、それらをMaaSによってシームレスに繋ぐことで、地域課題の解決を目指す。近年では、単なる乗換拠点ではなく、ハブ自体にコミュニティ機能を設けることで、地域の活性化に役立てることも必要とされている。

スーパーモビリティハブ
「スーパーモビリティハブ」は本提言においては、リニアと新幹線の結節点であり、そこにJR、名鉄、近鉄、地下鉄、路線バス、さらにはシェアサイクル等のシェアモビリティを含めた、広域·中域·狭域すべての交通手段が集まるハブ機能を持つ拠点と定義する。とりわけ本提言で扱う「名古屋駅」においては、上記の陸上交通手段に加え、空飛ぶクルマやドローン等の「次世代エアモビリティ」の活用も前提として考える。
さらに、名古屋市内やその周辺にあるモビリティハブにスポークを繋げる「モビリティハブのハブ」としての機能を担うことも求められる。なお、空飛ぶクルマの駐機場や大規模な充電設備等、広い土地を必要とする設備を名古屋駅に設置することは難しいと考えられることから、笹島地区や中川運河周辺など、名古屋駅周辺が一体となって、総合的なハブ機能を果たしていくことが望ましいとする。
さらには、名古屋駅周辺が単なる乗換拠点だけではなく、次世代エアモビリティをきっかけとして、ビジネスや観光の目的で多くの人々が名古屋駅に集まり、交流できるようなコミュニティ機能の創出にも期待するとしている。

次世代エアモビリティとは
本提言で取り上げる「次世代エアモビリティ」は、下記の2類型とする。
空飛ぶクルマ(eVTOL)
電気を動力として垂直に離着陸する新たな空のモビリティであり、航空法上は「航空機」として扱われる。そのうち、固定翼を有するものは「垂直離着陸飛行機」、固定翼を持たないものは「マルチローター」に分類される。
国内では一般的に「空飛ぶクルマ」と呼ばれるが、国際的には「eVTOL」(electric Vertical Take-Off and Landing=電動垂直離着陸機)と呼ばれている。充電設備を備えた離着陸場バーティポート等が必要。航空法上の航空機は、人が乗って航空の用に供することができるものとされているが、将来的に空飛ぶクルマのパイロットレスによる計器飛行が実現すれば、「無操縦者航空機」に分類される可能性もある。

ドローン
航空法において「無人航空機」と定義され、構造上人が乗ることができない機体のうち、重量が100g以上であり、かつ遠隔操作または自動操縦により飛行できるもの。専用の離着陸場は不要。ただし、総重量(設計により定められた装備及び燃料その他の搭載物を装備·搭載したときの重量)が150kg以上のものについては「無操縦者航空機」と呼ばれる航空機に分類される。


次世代エアモビリティの特徴
移動時間の短縮による経済圏の拡大
既存の陸上交通(鉄道·バス·自家用車等)と比較し、海や山を越えて点から点へ直接移動でき、渋滞等に巻き込まれる恐れも無いため、ヒトやモノの移動の速達性·自由度が大幅に向上する。そのため、鉄道駅や高速道路から離れた交通不便地域にも効率的にアクセスできるようになり、名古屋駅を中心とした経済圏の拡大が期待できるとする。

制作:日建設計総合研究所 今枝秀二郎氏
高い静音性·アクセシビリティ
電動モーターで飛行する次世代エアモビリティは、内燃機関で飛行する従来の機体と比較し、静音性が高い。特に、機体の大きいeVTOLはヘリコプターと比べて大幅に騒音が低減されるため、都心部や住宅地においても離着陸場の設置が容易になり、アクセシビリティの向上が期待できる。

コスト面での優位性
複雑な内燃機関を必要としないため、ヘリコプターと比較するとシンプルな機体構造となっており、製造コストが安価で量産化も容易である。そのため、機体の維持管理に必要なコストも削減できる。また、運航にかかるガソリン等の燃料費が不要であり、ユーザビリティの向上によりヘリコプターと比べて多様なニーズに対応できることからも、運航コストの削減が期待できる。将来的に無人化が実現されればパイロットの人件費も不要となり、1kmあたりの運賃がタクシー並みになるとの試算もある。

本提言で想定する2035年頃の技術成熟度
2025年時点では、次世代エアモビリティの実用化に向けて、機体の自律飛行技術やバッテリー性能等の技術的な課題が指摘されているが、本提言では、想定する2035年までに、下記のレベルまで技術が成熟していると仮定する。
空飛ぶクルマ(eVTOL)
- 都市部において定常的に運航可能な安全性や運航管理システムが確立されている
- 名古屋駅から周辺の都市や観光地へ移動するのに十分な航続距離が確保できている
- パイロットレスによる計器飛行が実現されている

ドローン
- 都市部において高頻度目視外飛行が可能な安全性が確立されている
- 1人のオペレーターが複数機体を運航できる技術が確立されている
名古屋の強み
産業構造や高い技術力、ニーズ、交通機能や都市機能の観点から、名古屋を中心とする当地には、次世代エアモビリティを新たな基幹産業として成立させる基盤がある。
日本一のものづくり地域
愛知県は製造品出荷額が52.4兆円(2022年)と46年連続で日本一を誇るものづくり地域であり、自動車や航空機等の「輸送用機器」については全国の約4割を占める、モビリティ産業の中心地である。
愛知県をはじめとする当地には、航空機やロケット等の部品製造を担う高度な技術力を持った企業が数多く集積しており、機体製造の約35%を国内メーカーが担うボーイング787においては、その大部分が当地企業によって製造されている。
このように、当地には日本一のものづくり産業とそれを支える強固なサプライチェーンが存在することから、空飛ぶクルマやドローンの研究開発及び機体製造にも適していると考えられ、次世代エアモビリティ産業の中心地となるに相応しいと考えているという。

全国有数の都市圏人口
名古屋を中心とする都市圏人口は1,000万人規模であり、次世代エアモビリティの商用運航に十分な人流·物流ニーズを有すると考えられる。また、ものづくり産業が盛んであることから、機体製造や部品供給、メンテナンスなどのニーズも見込むことができるとしている。
日本屈指のターミナル「名古屋駅」
名古屋駅は、東海道新幹線やJR、名鉄、近鉄、地下鉄等の鉄道や、高速バス、路線バス等の交通機関が集まる日本屈指のターミナル駅であり、1日当たりの鉄道の乗降客数は100万人を超える(2018年:約130万人/2022年:約108万人)。さらに、オフィスや商業施設等も集積しており、交通機能だけでなく高い都市機能も有することから、次世代エアモビリティ関連企業が拠点を設置する候補にもなる。
当地の将来的な好機
リニア中央新幹線の開業
今後予定されているリニア中央新幹線の開業により、名古屋駅は東京·名古屋·大阪を含む世界最大級の経済圏の中心に位置するターミナルとなる。これにより、名古屋駅·品川·大阪を起点とする2時間圏人口は、名古屋駅が品川を抜いて国内最大となると試算されている。


名古屋駅地区の再開発
リニア中央新幹線の開業を見据え、名古屋駅周辺では今後も大規模な再開発が計画されており、空飛ぶクルマの離着陸場(バーティポート等)など、次世代エアモビリティの活用に不可欠な新たなインフラを整備できる可能性が期待できるという。
また、名古屋駅周辺では、名古屋市による駅前広場の再整備など、ウォーカブルで歩いて楽しいまちづくりが進められており、多様な働き方に適したサードプレイスや、まちの活性化を促すオープンスペースの創出が想定されている。それにより、新たな産業の担い手となるイノベーション人材や、名古屋のまちの将来を担うクリエイティブ人材が働きやすい環境が整うと期待される。
MaaSの進展
MaaSの進展により、名古屋駅に乗り入れる鉄道やバス、シェアモビリティ、自動運転車などのあらゆるモビリティがシームレスに繋がることが想定される中で、次世代エアモビリティの社会実装が実現すれば、モビリティの選択肢の一つとして、人々の移動の選択権の多様化に貢献できると考えられるとしている。

リニア開業や再開発、MaaSの進展を見据え、次世代エアモビリティを含むあらゆるモビリティの活用を想定したまちづくりが進められるポテンシャルを有するとする。
名古屋駅周辺におけるユースケースの想定
人流のユースケース(空飛ぶクルマ)
ユースケース(例) | 運航経路(例) | 活用イメージ |
国内外から訪れる観光客の移動 | 名古屋駅⇔観光地 |
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ビジネスにおける拠点間移動 | 名古屋駅⇔各企業の拠点·研究機関·官公庁 |
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MICE等におけるVIPの移動 | 名古屋駅⇔会議場·イベント会場·宿泊施設 |
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通勤·通学利用 | 名古屋駅⇔オフィス·学校 |
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物流のユースケース(ドローン等)
物流のユースケースについては、主に「①緊急性を要するもの」「②軽量で高付加価値のもの」が想定される。また、リニア開業後は、東海道新幹線において貨客混載の運行も想定されることから、鉄道貨物とエアモビリティの連携による速達性も強みとなる可能性がある。
ユースケース(例) | 運航経路(例) | 活用イメージ |
宅配·郵便 | 集配拠点·商業施設⇔官公庁·オフィス·マンション |
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医薬品·医療機器 | 名古屋駅·宿泊施設⇔病院·研究機関 |
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精密部品等の輸送 | 工場⇔工場 |
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フードデリバリー | 飲食店·スーパー⇔宿泊施設·公園·イベント会場 |
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生鮮食品の輸送 | 宿泊施設·飲食店⇔市場·生産地 |
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災害時·緊急時のユースケース
地震などの大規模災害発生時には、鉄道や道路など既存の交通手段が一時的にストップし、名古屋駅周辺に帰宅困難者が多く発生すると想定される。それに対し、空飛ぶクルマやドローンは、離着陸可能なスペースが確保されれば運航できるため、災害時には特に重要な役割を果たすことができる。
空飛ぶクルマについては、帰宅困難者の輸送のほか、人命救助のために医師を派遣するといったユースケースも考えられる。ドローンについては、立入困難な場所への偵察、被害状況の確認などに加え、孤立した人々への食糧や支援物資の輸送にも効果を発揮すると考えられる。
災害時以外でも、事故発生時など人命に関わる場合には、空飛ぶクルマがドクターヘリを補完する移動·輸送手段として活用されることが期待できる。また、緊急手術を要する場合などには、既存交通手段とドローンのベストミックスにより、臓器や血液製剤等をいち早く必要な場所に届けることができるようになる。
運航体制の確立に向けて各ステークホルダーに期待する役割
前述の通り、名古屋駅を中心とする当地は、様々な観点から次世代エアモビリティの運航に最適であり、幅広いユースケースも想定できる。しかし、社会実装の実現に向けては、バーティポートや通信·電力等のインフラ整備や、法整備·規制緩和など、課題も多い。
特に、社会実装の初期段階においては、スケールメリットが得られないため、民間事業者単独で採算を取るのは困難であり、複数の民間事業者が協調してインフラ整備やシステム構築を行う、あるいは民間と行政が連携して課題解決を図る等の取り組みが不可欠である。
ここでは、次世代エアモビリティの運航体制の確立に向けて「民間が協調して取り組むこと」「行政への期待」について整理する。
1.運航サービスの提供[空飛ぶクルマ][ドローン]
課題 |
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民間が協調して取り組むこと |
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行政への期待 |
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2.初期需要の創出[空飛ぶクルマ][ドローン]
課題 |
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民間が協調して取り組むこと |
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行政への期待 |
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3.機体の開発·製造[空飛ぶクルマ][ドローン]
課題 |
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民間が協調して取り組むこと |
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行政への期待 |
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4.バーティポートの設置[空飛ぶクルマ]
課題 |
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民間が協調して取り組むこと |
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行政への期待 |
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5.バーティポートの運営管理[空飛ぶクルマ]
課題 |
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行政への期待 |
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6.駐機場の設置[空飛ぶクルマ]
課題 |
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行政への期待 |
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7.運航管理システムの構築[空飛ぶクルマ][ドローン]
課題 |
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民間が協調して取り組むこと |
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行政への期待 |
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8.通信ネットワークの整備[空飛ぶクルマ][ドローン]
課題 |
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民間が協調して取り組むこと |
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行政への期待 |
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9.電力設備の整備[空飛ぶクルマ]
課題 |
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行政への期待 |
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10.その他の法整備·規制緩和[空飛ぶクルマ][ドローン]
課題 |
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行政への期待 |
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関連企業の集積と産業の育成に向けて
名古屋を中心とする当地に次世代エアモビリティ産業を集積させ、新たな基幹産業とするためには、先に述べたようなバーティポートの整備や規制緩和などを他都市に先駆けて実施し、地元企業を中心とする事業者が事業展開をしやすい環境を作ることが欠かせない。
これらに加えて、国内外から次世代エアモビリティを担うスタートアップやイノベーション人材が集まるために、名古屋駅周辺に必要な要素は何か、また地域全体に求められることは何かを検討する。
<想定される関連企業の一例>
- 航空関連エンジニアリング
- 運航管理やメンテナンス等に関わるサービス企業
- 次世代エアモビリティの開発会社
- 通信インフラ関連企業
- 次世代の都市インフラ整備やまちづくりに関わる企業等
<想定される関連人材の一例>
- 機体開発を担うエンジニア
- 機体のソフトウェア開発を担うシステムエンジニア
- 自動運航のためのログ解析を担うロボティクス人材
- 地形や地上構造物の3D データを扱う3D エンジニアリング人材
- 通信インフラを管理する通信人材
- 次世代エアモビリティを活用したまちづくりや観光開発を担うクリエイティブ人材※ 等
(※参考:名古屋まちづくりビジョン2030)
名古屋駅に必要な要素
名古屋駅のデスティネーション化
名古屋駅に次世代エアモビリティを担う企業や人材を集めるためには、名古屋駅が単なるハブ(乗換拠点)ではなく、人々が名古屋駅を目指して集まるような目的地(デスティネーション)である必要がある。例えば、リニア開業により、名古屋駅が東京·大阪·中部国際空港·名古屋市周辺の製造拠点等からの時間的中心となることから、国内外の企業や人材を名古屋駅に集め、当地のものづくり企業との商談や交流の場を設けるような取り組みが考えられるという。
また、空飛ぶクルマやドローン、リニア、鉄道、自動車などあらゆるモビリティが実際に運行される名古屋駅のまち全体が、「モビリティのショーケース」として、名古屋市が掲げる「最先端モビリティ都市」実現に向けた象徴的な役割を果たすことも期待するとしている。
コミュニティの創出
名古屋駅がデスティネーションとなることにより、人や情報が集まるようになれば、次世代エアモビリティを核としたコミュニティの創出が期待できる。そのコミュニティを中心とした情報交換や人材交流、事業者同士の連携が生まれるようになれば、さらなるイノベーションに繋がり、そのビジネスチャンスを求めてより多くの企業や人材が名古屋駅に集積する好循環を目指すという。
モビリティ空間の再構築とウォーカブルな駅まち空間の創出
リニア中央新幹線や次世代エアモビリティ、既存の様々な交通手段が集まる名古屋駅が、スーパーモビリティハブとしての機能を最大限発揮するためには、あらゆるモビリティがシームレスに繋がり、利用者がニーズに応じて最適な交通手段を選択できるようなモビリティ空間の再構築が必要である。さらには、モビリティ空間の再構築を、今後予定されている名古屋駅の再開発や駅前広場の再整備と一体となって推進することで、ウォーカブルな「駅まち空間」を創出し、名古屋駅を中心とする都心部の魅力向上や賑わいの創出に資するものとなるよう期待するとしている。
地域全体で取り組むべきこと
専門人材を育成する体制の整備
- 産官学の連携により、当地において、次世代エアモビリティを担う人材を育成する研究機関やカリキュラムを設置する。
- 当地の強みである高度なものづくり技術を次世代エアモビリティにも活用できるよう、人材のリスキリング等の環境を充実させ、既存産業との相乗効果を図る。
事業者のファイナンスに関する支援
- 官民が連携して当地における次世代エアモビリティの産業振興を目的としたファンドを設立し、新たに参入する事業者の支援や、民間が協調して取り組むべき分野に関して共同で資金を投入するなど、資金面での負担軽減を図る。
周辺自治体との連携·仲間づくり
- 次世代エアモビリティは、都市部だけでなく、山間部や離島においても重要な役割を果たすことが期待されており、愛知県や名古屋市のみならず周辺自治体とも連携し、地域全体で次世代エアモビリティを地域創生や産業振興に役立てるための仕組みづくりを進めていくべきである。