毎日50m超の階段を上り下りする作業
茨城県日立市にある「東京ガス 日立LNG基地」では、地上式では世界最大級の大きさとなるLNGタンク23万kl2基と、LPGタンク5万kl1基を有している。
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東京ガスの日立LNG基地では、社員1名が地上50m超の階段を毎日昇降し、3つの地上タンクの点検を行っていた。巡視点検は必要不可欠なものである一方、高所への階段の上り下りには時間や体力的な負荷が大きいだけではなく、つまずいて事故につながるリスクや、長時間屋外にいることにより熱中症となるリスクがあることが課題だった。このようなリスクの回避や業務効率化のため、ドローンを活用した巡視点検を検討したという。
ドローンで安全に点検
ドローンを導入する上で、2つの大きな課題があった。それは、「ドローン落下時の災害をいかに防ぐか」と「点検の質をいかに担保するか」だ。
危険物を取り扱う基地では、通常「防爆型」の機器を取り扱いますが、今回「非防爆型」のドローンを導入するため、万が一ドローンが落下しても災害が発生しないようにすること、また巡視点検と同等の質をいかに担保するかが重要だという。この2つを両立させるために、様々な基準見直しや関係各所との調整が必要となった。
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ドローン選定においては、さまざまなドローンを検討した結果、飛行の安定性(自動飛行機能、全方位障害物回避機能ほか)やカメラ性能(4K、1,200万画素)を考慮し、米スカイディオ社のドローンを導入が決定した。
ドローン導入の効果:作業時間は1/3に
2023年9月、ドローンを活用した点検を開始した。従来、人の目で「設備の外観点検」と「ガス漏洩の有無」を判断していましたが、ガス漏洩の有無は現場に常時設置されているガス検知器システムで監視することとし、外観点検をドローンに置き換えることで、保安レベルを目視での点検と同様に維持しつつ、業務負荷を低減できた。
ドローンは社員1名がタブレット端末で動かすが、自動操縦のため操作はほぼ不要だ。設定されたルートを飛行してタンクの映像を撮影し、タブレット上で社員が設備の破損やLNGの漏えいなどの異常の有無を確認する。また、ドローンは設備と一定の距離を保って飛び、通信が途絶えれば離陸地点まで自動で戻ってくるようにするなど、安全対策も万全に行った。
これにより、今までの目視点検で90分を要していた点検作業時間は、1/3の30分にまで短縮することができた。現在は週7日のうち、1日は目視での点検、6日はドローンでの点検を行っているという。
担当者のコメント
今回、ドローンの導入検討を通じて、東京ガスにおけるデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みについて知見を深められた事は良かったと感じています。また、BPR(業務改革)の観点や業務負荷低減として効率化につなげられたことは良い経験となりました。現場の声としても好感触であり、非常に良かった旨の反応があります。
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今後も、これまで人がコストや危険を伴いながら行っていた高所作業や海上構造物点検および、人の立入りが制限される区域での作業などでドローン活用を検討しております。
東京ガスグループではこれからも、新たな技術を積極的に採用し、安定供給の向上を目指していくとしている。