導入背景
コンテナ用岸壁クレーンは、潮風にさらされるなど厳しい環境に設置されているという。倒壊などによって人命や財産、社会経済活動に重大な影響を及ぼす恐れがあるとされることから、コンテナ用岸壁クレーンは、港湾関連法令の中で重点点検診断施設に位置付けられている。
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2013年には港湾法関連法令が改正され、こうした重点点検診断施設については、「港湾荷役機械の点検診断ガイドライン」に基づいて、納入してから15~20年目に詳細定期診断を行うことが示された。
この詳細定期診断では、鋼材で箱状に作られたクレーン構造物の内部に、マンホールから人が入って目視で点検する。ただ、構造物の内部はとても狭く暗いうえ、構造物の中には通常、人が入らないため、作業するための足場がなく、中に入って目視で点検するのは非常に困難な作業だ。
さらに構造物の内部は普段密閉されていて、内部の酸素が少なくなってしまうことから、人が入るのはとても危険な箇所である。こうしたクレーン構造物内部の点検に、三井E&SではIBISを導入する取り組みを2022年から始めています。同社ではそれまでもクレーン構造物の内部を飛行できるドローンを探していたという。
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通常の小型ドローンの場合、壁面と機体が接触すると、機体が吸い付いてしまい飛行を続けられなくなるものが多い。そんな中でIBISは、クレーン構造物の中で飛行させたところ、壁にぶつかっても安定した飛行ができ、機体が小さく、軽いので構造物を傷めることもないことが点検サービス導入の決め手になった。
成果
IBISを使ったクレーン構造物内部の点検は、マンホールからIBISを進入させ、機体を上下に移動させながら内部を動画で撮影します。内部が格子状になっていて人が通れないようなところでも、隙間を見つけて奥まで進入し、箱状になっている構造物の四隅まで漏れなく撮影できた。
また、酸欠の危険性のある構造物内部に作業者が入らなくて済むため、安全性がはるかに向上し、さらに構造物内部で人が作業しないため換気の必要がなく、ダクトや送風機といった換気に必要な機材の準備と、換気にかかる時間を省くことができる。
点検漏れの防止と撮影範囲の拡大により点検品質が向上
これまでは真っ暗な中で人がカメラで劣化箇所を撮影していたが、カメラの撮影能力の低さに加えて、人が行うことで、劣化箇所の撮影漏れが発生する可能性があった。一方、IBISは動画で面的に撮影するため、点検漏れが少なくなる。さらに、これまで物理的に見られていなかった部分が、IBISによって可視化できることや、構造物を面的に動画で撮影することによる撮影範囲の拡大は、点検品質を大きく向上させた。
IBIS取得の動画データをオフィスで診断、効率的なクレーン点検と技術伝承を実現
動画という形でデータ化するというIBISの点検スタイルは、データの共有ができるという大きなメリットを生みます。現場から送られてきた動画を点検者がオフィスで見て診断できるので、点検者自身が現場に行くことなく、複数のクレーンを効率よく点検することが可能だ。
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また、次の世代の作業者に点検の技術を伝える場合にも、暗くて狭い構造物内部に入ることなく、動画を見ながら技術の伝承ができる。さらに、点検結果を見て補修などの施工を決める際に、動画があれば施工が必要な場所が事前に把握できるため、調査期間が短縮可能だ。
三井E&S 物流システム事業部 テクノサービスセンター吉田健治氏は次のようにコメントした。
今後は詳細定期診断の中で、IBISを使った構造物内部の点検を提供していくことを検討しています。これまでにも定期診断に加えて、お客様からはスポットで内部を見たいというお話をいただいたことがありました。そういった際に、今後はドローンを使って点検を行うという前向きな提案ができます。
また、三井E&Sでは撮影画像と点検結果を管理するクラウドサービス「次世代クレーンモニタリングシステム(CARMS)」を提供しており、今後IBISで撮影した動画から画像を切り出して、CARMSに連携する可能性もあります。