水中音響測位装置により海中に潜行する2名のダイバーと1台の水中ドローンを含む計10台の対象(超音波発信器)の位置を1台の受信器で毎秒測定し、それぞれの位置を可視化して観測することに成功したという。
- Advertisement -
なお、今回の実証実験では、対象物から発する超音波の位相差や到達時間から対象物の位置を求めることが可能な技術「SSBL(Super Short Base Line)音響測位技術」を用いた。
これにより、ダイバーや水中ドローンの位置と動き(位置の時間推移)が陸上でも把握できる。それぞれの位置情報や動きをダイバーへフィードバックすることで、水中活動の安全性、効率を向上させることが期待される。両社は、水産資源の監視や水中インフラ点検、さらにはレジャーダイビングなど、海洋を含む水域での活動に対するDXを推進していくとしている。
背景
KDDIグループは、中期経営戦略の事業戦略を「サテライトグロース戦略」の一環として、海洋など水域でのDXにも取り組んでおり、青色LED光無線通信の実用化に向けた実証実験や、水空合体ドローンの開発などの研究開発や技術検証を進めてきた。
- Advertisement -
特に水中での音響通信、音響測位に関しては、1990年代から研究を開始し、海底ケーブルの探査やガンジスカワイルカの観測の実績があるという。
近年、国内の港湾事業や漁業での海中点検の必要性が増加している一方で、こうした水中活動には事故のリスクが伴うという。両社は水中活動の不安を払拭し、事故が起きた際の捜索や救助のため、また、複数の水中作業者や水中ドローンがより効率的に作業するため、水中活動時の位置把握、安全確保が重要な課題と認識し、その対策を検討してきた。
今回の成果
両社は、1台の受信器で1秒間に複数の対象(超音波発信器)の位置を観測可能な水中音響測位装置を開発した。実証実験では10台の超音波発信器を水深2~30メートルの各位置に沈め、超音波発信器の発信タイミングを0.1秒ずつずらし、受信器側も同じタイミングで受信することで、10台の位置を毎秒計算し観測が可能だ。
- Advertisement -
また、10台のうち3台の超音波発信器を2名のダイバーと1台の水中ドローンに装着し、潜行するダイバーと水中ドローンの位置を毎秒可視化することに成功した。
さらに、音波を使った測定は一般に海面などの反射が大きく影響するが、これまで培った水中音響測位技術の知識や技術の蓄積により、今回の実装方式ではこの問題を大幅に軽減し、実海域で動作することを確認した。
今後の展望
今後は、位置測定性能の向上、測定対象数の拡大、測定範囲の延伸などの開発を行い、水産資源の監視や水中インフラ点検をより安全に、効率的に行えるようにDX化を支援する。港湾事業や漁業に加え、スキューバダイビングなどのレジャーへの活用も検討し、さまざまなシーンでの社会課題の解決を目指すとしている。
実証実験の概要
実施期間 | 2023年8月19日から2023年8月20日 |
場所 | 静岡県沼津市沿岸 最大水深34メートルの海上に錨で固定された台船上 |
使用機器台数 | 超音波受信器1台、超音波発信器10台 |
測定範囲 | 面積 約400平方メートル、深度 34メートル |
実証内容 | 水深2~30メートルに沈めた超音波発信器10台からの超音波を、水深1メートルの位置に固定した超音波受信機1台で受信。各超音波発信器の発信のタイミングを0.1秒ずつずらし、超音波受信機に接続したPCで超音波発信器の各位置を1秒ごとに更新して同時に表示できるか確認。 超音波発信器10台のうち、3台を2名のダイバーと1台の水中ドローンに装着し、海底までの位置を測定できるか確認。 |