元日本代表の都並敏史さんによると「PKで細かく狙うのは、実はプロでも難しい」という。特に、つま先を使って上の方を狙うのは難しいという。大学生が平均時速80km程度といわれる中、PIXIは時速85kmの強烈なシュートも放てる。
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都並さんは「力が強ければいいわけではなく、上半身のパワーを下半身に流すことが大事」と話す。
サッカーロボット開発を手掛けたのはトヨタ技術会のメンバー。1947年から続く同会は、高い志とチャレンジ精神を持つメンバー28,000人が、技術力向上を目指して集まった有志団体だ。
ソーラーカーなど、クルマに関する研究が中心だったが、トヨタ技術会の発足70周年の節目だった2017年、当時の会長が「今までとは違うものをつくろう」と呼びかけ、AIバスケットボールロボットをつくることになった。その後は「海のゴミを回収する魚ロボット」「縄跳びロボット」「鳥型のモビリティ」をつくってきた。
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これらに続き、人種や年齢を超えて楽しんでもらえるサッカーに着目し、サッカーロボ開発に決めた。
PIXIの開発メンバーは全員、ロボット開発の経験が一切なかったものの、初号機は早い段階で完成し、時速30~40kmのスピードが出たという。
18個のモーターを一斉に全力で動かせば、強いシュートを打てるわけでない。"うまいキック"を模索するため、開発メンバーは、人間はどう蹴っているかデータを集めることにした。
18個のモーターの動かし方は、シミュレーションでは数千通りあった。"上手なキック"を追究すべく、実際にサッカーボールを何度も蹴りデータを取り続けた。また、ロボットに使用するパーツはSDGsの観点から、マントの生地はエアバッグの端材、ネックレスにはベアリングの端材を活用した。
PKの的を認識するためには、自動運転車で使われるものと同じ仕組みのセンサーを搭載。デザイン面では、水素タンクと発電機を搭載するため、胸板が異常に分厚くなるという課題があった。しかし、必要な電力量を見極めることで、水素タンクや発電機の小型化に成功した。初のお披露目となるデビュー戦に向け、人間らしいボディに仕上げられた。