同技術は、屋内などの限られたスペースで人と多種・複数のロボットが共存する環境における自律走行ロボットの活用シーンを広げる技術として期待されるという。
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背景
近年、労働人口の減少に伴う労働力不足を背景に、自律走行ロボットの開発・実証が進められている。パナソニックグループでも、実際のオフィスビルで複数ロボットの群管理制御の実証実験に取り組むなど、ロボットフレンドリーな環境の構築を目指した取り組みを行っている。
特にオフィスビルのような狭い屋内環境では、人や別のシステムの制御下にある複数のロボットと衝突することなく、かつ効率的に走行できることが求められる。しかし、ロボットが衝突を避ける際に減速や停止を繰り返すと、そのたびに目的地までの到達時間に遅延が発生する。このような環境で効率的な走行を実現するためには、上記の遅延時間を考慮した難易度の高い走行経路計画技術が要求される。
この課題に対し、パナソニックHDは、ロボットの通過時間に関する確率分布のパラメータをベイズ推論※で遅延が観測されるたびに更新することで、効率的に走行経路を計画可能な技術を開発した。
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※ベイズの定理を用いて、観測データをもとに事象の背後にある確率分布を推定する方法
同技術は問題設定と先進性が国際的に認められ、マルチエージェント技術のトップカンファレンスであるAAMAS 2023(The 22nd International Conference on Autonomous Agents and Multiagent Systems)に採択され。2023年6月1日、ロンドンで開催される本会議のポスターセッションで発表する。
技術の内容
自律走行ロボットが労働力不足に貢献できると見込まれるユースケースのうち、ビル内の通路など、自律走行ロボット同士がすれ違えないほどの狭い通路が含まれる例は少なくないという。さらに、多くの場合、通路には通行人や別のシステムの制御下にある多種・複数のロボットが存在する。
このような環境下で、自律走行ロボットが移動障害物を回避する際に減速や一時停止を繰り返すと、ロボットが通路を通過するのにかかる時間に、確率的に変動する遅延が発生する。この遅延の確率分布が事前に分かっていることは少なく、実際は不明、あるいは限られた事前情報しか得られない場合が多いため、ロボットの走行中に観測された遅延をもとに次の計画を作成することになる。
これまで、MAPF(Multi-agent Path Finding)という、グリッド状のグラフ上で複数ロボットが衝突しない経路を作成する問題設定が研究・応用されてきたが、従来の手法では遅延の確率分布を正確にモデル化できていることが前提となっており、通路にいる人やロボットの数が変動する、実際のくらしやしごとの現場に適用することは困難だったという。
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そこで、パナソニックHDは、ロボットが特定の経路を走行する際の遅延をパラメータが未知なガンマ分布に従うものと定義し、走行中に得られる遅延の観測値を用いて確率分布のパラメータをベイズ推論で遅延が観測されるたびに更新することで、推定したパラメータに基づき最適な走行経路計画を作成する手法を開発した。
同手法は、シミュレーション実験の結果、従来法よりもロボット同士の鉢合わせを約半分に減らし、目的地までの移動時間が短い走行経路を計画できることを実証した。
今後の展望
今回開発した自律走行ロボットの経路探索技術は、これまで適用が難しかった人と複数の多様なロボットが共存する環境における自律走行ロボットの活用シーンを広げる技術だと言える。パナソニックHDは、今後もAIの社会実装を加速し、顧客のくらしや仕事の現場に貢献するAI技術の研究・開発を推進していくとしている。