また、安全運航管理のための管制室のデモ、ドローン配送にあたって遠隔での買い物をサポートするVRモール体験、トイドローン操縦体験など、ICTを駆使したデジタル田園都市を目指す多久のビジョンを住民や関係者に共有した。
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実証実験の目的
佐賀県多久市の一般社団法人たく21が主催する「ドローンを核にした交流によるまちづくり事業」では、2022年末のレベル4飛行解禁を前に、有人地帯におけるドローンを用いた地域の課題解決について実証実験をくり返している。同実験では多久市内に張り巡らせた12本のドローンの空路「空の道」をさらに7本拡大し、住民に対してサービスを体験してもらおうと説明会を実施した。
目視人を配置した飛行体制を計画した上で、地域経済のメリットと安全性の担保について、住民向けの事前説明会を実施し、飛行ルート全域にトルビズオンが提供する「ソラシェア」の保険を適用することで、万一の事故にも備えた。ドローンが社会実装をしていく上で最も重要である地域住民の理解を得ながら、ドローン配送の事業を継続可能にするためのビジネスモデルを検討していくとしている。
ドローン配送の事業性を確認するための取り組みとして、建築事業者、飲食店、小売店、スイーツ店、薬局、物産館、農家および西日本高速道路株式会社九州支社(NEXCO西日本)などと協働し、地域住民のニーズを元にBtoB、BtoCを問わず、さまざまなパターンの配送ルートとオペレーションフローを実験。実験後は住民へのアンケート調査等も実施し、今後の事業開発に役立てる計画だという。
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飛行ルート及び搭載物
多久町ルート(午前中):管制拠点は朋来庵(おひたき広場)
- 9:40~ 朋来庵・こうき(うどん屋)→駄道(消費者)2.2㎞:配送物は天ぷら
- 10:00~ 駄道(農家)→朋来庵(物産館)2.2㎞:配送物はゆず、柚子胡椒
- 10:20~ 朋来庵(薬局)→西の原公民館(消費者)1.2㎞:配送物はVRモール注文品
西多久町ルート(午後):管制拠点は幡船の里(宝満山公園)
- 14:30~ 平古場(農家)→幡船の里(物産館)2.8㎞:配送物は里芋
- 15:00~ 幡船の里(物産館)→多久西PA(飲食店)3.56㎞:配送物はみかん、乾燥椎茸、銀杏、切干し大根
- 15:30~ 多久西PA(飲食店)→吉の尾公民館(公共ポート)2.7㎞:配送物は唐揚げ弁当、煎餅
- 16:00~ 吉の尾公民館(公共ポート)→幡船の里(物産館)3.3㎞:配送物はスイーツ
同実験での試み
全国初のVRモールとドローン配送の融合
現在全国で実施されているドローン配送は、電話やCATVのカタログなどで注文を取るケースが多いが、実際に行き慣れた店舗を歩いてみないと、買い忘れなども起こり、事業者側もそれによるビジネス機会を失う恐れもある。そこで同実験では新たに配送元の店舗をVRモール化し、注文者がタブレットからVRモールで購入・決済、ドローンで商品が手元に届くまでを実験した。
管制拠点に設置した管制室デモ
ドローンの第三者上空飛行を実現しドローン配送を社会実装するには、安全な運航管理体制が求められる。今回の実験では、国が求める要件を満たすための安全管理の管制室機能のプロトタイプを考案し実験したという。具体的にはドローンからの空撮映像やテレメトリーデータによる「空の道の安全確認」と配送先の「空の駅の安全確認」を同時に遠隔監視するシステム及びネットワークを構築し、そのデモンストレーションを各町の管制拠点(朋来庵・幡船の里)から実況中継で地域住民と見守った。
NEXCO西日本との連携
2022年2月にも実施した多久西PA(下り線)でのフードデリバリー実証実験に続き、同実験では上り線においても同社が展開するモテナスの唐揚げ弁当を地域住民向けにドローンで配送し、高速道路沿線地域への商品の販路拡大及び欠品した商品をドローンで供給するフローについて実験した。また、同社濵野氏は各住民説明会において、「空の道開拓」という地域における新たなインフラ整備の可能性についても講演した。
来賓および主催者からのコメント
古川康衆議院議員(国土交通省政務官):新しい視点でビジネスへの応用が進むドローンは動画撮影以外にも、災害救助や生態確認、輸送物流、インフラ点検など、少子高齢化に伴う人手不足が社会的な課題の中、その活用が大いに期待されています。
ドローンを使った配送実証などドローン活用の機運をさらに盛り上げていただくことをご期待申し上げ、併せて多久市がドローン先進地として、より一層発展していくことを祈念いたします。
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西日本高速道路株式会社九州支社 地域共創担当部長・濵野昌志氏:高速道路は移動インフラとして、人や物の流れを広域に生み出すことを中心に地域の発展を支えてきました。それはこれからも変わりません。一方で、物流業界や地域に目を向けてみると、人口減少やライフスタイルの多様化などに伴い、物流業界のラストワンマイルや観光客の衰退などといった課題が増えているのも事実です。
こうした社会課題を少しでも解決に導くためには、既存サービスの充実でけではなく、新しいサービスを掛け合わせるなど、機能の拡張が必要だと考えています。ドローンの活用もその一つ。
まずはSA・PAがドローンポートとなり、SA・PAから個人宅まで物を運んだり、新たな観光スポットまで人を送り届けるなどは想像できるようになってきました。そうした意味でも、今回、多久市で行われた実証実験の一つ「地元産品をPAへ、PAから地域へのお弁当配送」は意義あるものと思います。
一般社団法人たく21代表理事・真崎俊夫氏:一般社団法人たく21は、多久市の中心市街地活性化を推進するために様々な事業を行っています。その中で、今回のドローン事業は、過疎化が進んでいく多久市の農村部等において物流の不便さを解消していく大きな取り組みとなっております。
また、今回のドローン物流に加えて、バーチャルモールを取り入れた事業を実施し、自宅に居ても、実店舗を訪れ、欲しいものを注文し、ドローンで運ぶ事業も実施しました。これらの実証事業によって、多久市全体から不便を解消する社会を実現することを目指しています。
これからも地域の方々にご理解と同意をいただきながら、「空の道」を増やし、その道を活用して新たな多久市の未来を創っていきたいと思います。