ケイアイスター不動産株式会社のグループ会社Casa robotics株式会社(以下:カーザロボティクス)は、2022年2月に株式会社ウチらめっちゃ細かいんで(以下:めちゃコマ)と開始したアバターロボットを用いたモデルハウス案内業務に関し、アバターロボットの操作を担当する「ひきこもり※」の経歴を持つ在宅ワーカーによる接客をレベルアップさせ、従来の来場者に対するエンターテインメントに加えて、具体的な住宅仕様の説明を開始した。
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これにより、ひきこもりおよびその経験者が住宅産業において新たな労働力となり得ることを実証するとともに、アバターロボットによる接客技術の向上を図るとしている。
※ひきこもり:様々な要因の結果として社会的参加(就学、就労、家庭外で交遊など)を回避し、原則的には6カ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態を指す現象概念(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)
4名体制へ、「エンタメ×住宅知識」で接客レベルの向上を図る
カーザロボティクスは、全国に110万人以上いると推計されるひきこもり者を住宅産業の新たな労働市場と捉えている。そこで、2022年2月以降、主力商品である規格型平屋注文住宅「IKI(イキ)」において、2名のめちゃコマの在宅ワーカーを、茨城、栃木、群馬、埼玉の合計4カ所のモデルハウスに導入した住宅案内用アバターロボット「ミレルン」および「ミニミレルン」のオペレータに据え、来場者に向けたロボット接客を行ってきた。
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2022年2月~6月の稼働時間は約290時間におよび(待機時間を含む)、多くの来場者をミレルン/ミニミレルンになりきった在宅ワーカーが接客した。
カーザロボティクスはこの期間をロボット接客のフェーズ1と位置づけ、出迎えのあいさつや子どもの相手など、エンターテインメント性を重視したロボット接客を行ってきたという。これにより、特に住宅営業の経験・知識がない在宅ワーカーでも自然に接客業務に入り込みながら収入を得ることを可能とした。また、エンターテインメント性を重視した結果、来場者に対しては、「ロボットが出迎えてくれるモデルハウス」としての特別な体験を味わってもらえたとしている。
今回2022年7月からのフェーズ2では、(1)ロボット接客の高稼働維持のため、めちゃコマの在宅ワーカーを従来の2名から4名体制へと拡大し、さらに、(2)フェーズ1から活動している在宅ワーカーに関しては、具体的な間取りプランや基本的なオプション、モデルハウスのリビングやダイニング周りの説明などの住宅知識を身に着けてもらい、接客レベルの向上を図るという。
住宅知識を身に着けた在宅ワーカーが接客を行い成約に至った場合は、別途奨励金を支給することとしている。これにより、在宅ワーカーはロボット接客を通じた対人コミュニケーションのスキルを磨きながら、より高収入を目指すことが可能となる。こうした取り組みを通じ、カーザロボティクスは、ひきこもり者がより働きやすいと感じる働き方の普及に寄与しながら接客へのモチベーションを高める環境づくりを行い、IKIの成約率アップを狙うとしている。
フェーズ1でのロボット接客へのお客様の反応を分析
業界を問わず、収益性のあるビジネスシーンの中でのロボット接客事例が少なく、これに対してお客様がどのように反応するかについての知見は希少であると考え、カーザロボティクスは同社のアナリティクスチームと共同で、フェーズ1(2022年2月~2022年6月)におけるめちゃコマの在宅ワーカーによるロボット接客の記録を基に、来場したお客様のミレルン/ミニミレルンに対する反応のパターンを分析した。
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- 調査対象:2022年2月~2022年6月の期間中、IKIのモデルハウスに来場し、ロボット接客を体験されたお客様
- 調査方法:ロボット接客実施後にミレルン/ミニミレルンのオペレータが5段階評価※を行った上で、お客様の反応を自由記述する
※大きい数値ほどポジティブな反応として5段階で評価。評価基準は次の通り。1:敵対的・攻撃的な反応、2:泣くなどのネガティブ反応、3:総じて中立・無視・無反応、4:喜ぶなどポジティブ反応、5:言葉のキャッチボールや一緒に遊ぶなどのインタラクション - サンプル数:欠損が少なく分析に適したロボット接客記録として124件※
※複数人で1グループとして来場した場合、その中のそれぞれの反応を記録した場合も独立したサンプルとしてカウント
調査結果
評価4(ややポジティブ反応)および評価5(ポジティブ反応)の反応を示すお客様が全体の49%を占めた。上図に示す通り、これらのお客様は積極的にミレルン/ミニミレルンとコミュニケーションを取ったり、「可愛い」などポジティブな感情表現を行う。こうしたことから、ミレルン/ミニミレルンによるロボット接客がIKIのモデルハウスという空間にエンターテインメント性を付加している様子がうかがえるとしている。
一方で、評価3(中立・無視・無反応)が全体の48%におよび、ロボット接客が有効に作用していないケースもまだ多いことがわかった。来場の予約時や案内時に、ミレルン/ミニミレルンの存在を予期していないために、2~5のどの評価においても、「驚き」の反応から始まるケースが含まれる。そうしたケースについて、評価4および5では「驚き」の後にポジティブ反応が見られ、それ以外(評価2および3)では、ネガティブまたは中立反応への移行を確認できる。
どのような場合にポジティブ反応が引き出されるかの条件を明らかにすることが、ロボット接客の効果をさらに高める上での課題と考えられるとしている。
今後について
2022年7月~9月の3カ月間にわたり、ロボット接客の高稼働の維持、ロボットによる雇用機会拡大と多様性の向上を目的に、めちゃコマの在宅ワーカーをオペレータとし、フェーズ2でのミレルン/ミニミレルンの運用を行うという。その後、効果の検証を行い、次のフェーズの運用を検討するとしている。
また今後、研究機関との共同研究を検討し、ロボット接客に対するお客様のポジティブ反応の決定条件を探るとともに、ロボット接客がサービスや販売の品質にもたらす効果を明らかにしていくとしている。
こうした取り組みを通じて、ひきこもり者による労働市場の発展に貢献するとともに、アバターロボットが収益性のあるビジネスシーンにもたらす効果についての知見を学術界と産業界にもたらしつつ、住宅不動産業界の発展に寄与することを狙うという。