マサチューセッツ工科大学(MIT)コンピュータ科学・人工知能研究所(以下:CSAIL)の研究者らは、地上を走り、空を飛べるロボットの開発を目指している。CSAILのチームは最新の報告で駐車場や飛行禁止区域、着陸場など、市街のような実験用ルートを飛行・走行が可能な8体のクワッドコプター・ドローンのシステムを発表した。報告書を作成した博士課程学生Brandon Araki氏は次のようにコメントしている。
- Advertisement -
Araki氏:飛行も走行も可能であれば、地上の障害物を避けて飛び、頭上の障害物を避けて走れるため、障害物の多い環境で役立つ。普通のドローンは地上では全く動けないが車輪つきのドローンであれば機動力が高く、飛行時間をわずかながら削減できる。
Araki氏とCASILの監督教師Daniela Rus氏は、MITの学部学生John Strang氏やSarah Pohorecky氏、Celine Qiu氏、そしてチューリッヒ工科大学(ETHZ)高度インタラクティブテクノロジー研究所(AITラボ)のTobias Naegeli氏とともに、このシステムを開発した。開発チームは、シンガポールで開催された米国電気電子学会(IEEE)主催のロボット分野の主要国際会議「International Conference on Robotics and Automation(ICRA)」で発表した。
同プロジェクトは以前Araki氏が開発した、地を這い、物を掴み、飛ぶことのできる「空飛ぶモンキーロボット(flying monkey robot)」を基に進められた。モンキーロボットは障害物を飛び越え、這い回ることが可能だが、自動運転にはまだ到達していなかった。
- Advertisement -
自動運転の問題に取り組むため、開発チームはドローンが衝突しないように様々な「経路計画」演算法を生み出した。走行運転させるため、各ドローンの底に車輪と2つの小型モーターを取り付けた。試験では、バッテリーがなくなるまでに90メートル飛行し252メートル走行した。
ドローンに走行機能を加えると、わずかにバッテリーの寿命が縮む。つまり最大飛行距離が14%、約300フィート(約91.4メートル)減るということだ。それでも走行は飛行よりも効果的なため、重量付加によるわずかな飛行距離減少というデメリットよりも、走行可能というメリットが上回る。今回の調査には関わっていないが、ラトガース大学のコンピュータ科学教授Jingjin Yu氏は次のようにコメントしている。
Jingjin氏:この事業により、大規模かつ混合モードによる移動の演算法を生み出すことができ、実社会における問題に応用できるということが示せた。
開発チームは、道路に布を、建物に段ボール箱を、というように日用品を使用して試験を行った。スタート地点からゴール地点まで衝突しないように操縦された8体のロボットをテストして全て成功した。
Daniela氏:このようなシステムにより、安全で効果的な空飛ぶ車は、単純に「羽つきの車」ではなく、ドローンに走行機能を加えるには何年もの調査・実験が必要ということが示された。計画を始め、空飛ぶ車の演算法を生み出していくうちに、小規模でも飛行機能を備えたロボットを作れるという可能性に力が湧いてきた。
- Advertisement -
人を実際に載せるほどの車へ大型化するには当然まだ多くの課題が残っているが、空飛ぶ車により、高速で自動車のない交通が現実になるかもしれないという将来の可能性に心が躍る。