11月16日、幕張メッセ(千葉県)で開催中の放送機材展示「Inter BEE 2016」においてDJIが待望の業務用空撮ドローン「Inspire 2」及び「Phantom4 Pro」を発表した。「Inspire」シリーズは2年ぶりのリニューアルとなる。にDJIは、Inter BEEに3回目の出展となる。「Inspire 2」がいよいよシネマ空撮ドローンとして発表された事は、今年はまさに歴史に残る最適なタイミングだったと言えるだろう。
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人気のPhantom4が形をそのままに更に進化した「Phantom4 Pro」
外見はこれまで機体とかわらないものの、劇的な進化を遂げている
DJI JAPAN呉社長のプレゼンテーションから始まった新製品発表会は、事前のウワサがあまり無かった「Phantom4 Pro」から始まった。日本の開発センターも開発に携わったという1インチセンサーを搭載した新型カメラを備え、4K60fps@100Mbspまで画質もアップ。映像の周辺解像度も向上し、細部を拡大しても今まで以上に詳細な画像を見ることができるようになった。
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操作安全性については、好評だった障害物回避センサーを後方にも設置、さらに両サイドには赤外線距離センサーを設置することで全方位の障害物検知が可能だ。
正面から見ると旧機種とあまり変わらないがカメラが一回り大きくなっている
サイドには赤外線距離センサーが設置(中央の黒い窓)
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そして、ソフトウェア面の進化も見逃せない。ドローンの人物空撮でよく見る、後ろに下がりながら上昇していく動きがインテリジェント・フライトモードに追加された。さらに、タブレット画面上で線を描くように設定したルートを飛行する「DRAW(ドロー)」も追加され、これまで以上に手軽に撮影ができそう。
さらにFHDの5.5インチモニターを備えた専用プロポも用意。画面の明るさを表す輝度が1000cd/m2(※一般スマホは400~700cd/m2)あるというモニターは非常に明るく、屋外の映像確認にも重宝しそうだ。専用プロポはHDMI出力が標準装備となっているほか、MicroSDカードスロットを備えているので、撮影した映像を現場ですぐに確認することもできる。
5.5インチのFHDモニタは非常に明るい。Android OS動く
Phantom4 Proは、現場のニーズを見事なまでに汲み上げたPhantom4の正統進化版という印象の機体だ。ちなみに、バッテリー容量が変更となり飛行時間が3分延びているのだが、今までのPhantom4用のバッテリーも使えるとのことなので、Phantom4ユーザーも安心して追加購入できるだろう。
もはや大型機は必要ない!?劇的な進化を遂げたInspire 2
屋内でも抜群の安定感。また、カメラがパンして機体の向きを変えずに被写体をトラッキングできるため、正面の障害物センサーが常に活きる。320°しか回らないカメラで360°撮影するために機体そのものを高速スピンさせる荒業も。しかし、映像が一切乱れないのはサスガだ
2機目のプレゼンテーションは、もちろんInspire2。Phantom4や高性能なコンシューマ機MAVIC PROが発売される中で、バージョンアップが最も望まれた機体だ。一見、旧型のブラックエディションにも似た機体に見えるが、まったくの別物となっている。
ボディカウルは樹脂製からマグネシウム+アルミニウム合金に変更され軽量化と高剛性を実現
外見上、まず目につく特徴的な前面の触覚のようなものはPhantom4シリーズにも搭載されている障害物回避用のステレオセンサー。さらに赤外線距離センサーが機体上部後方に設置されており、屋内などで上昇したときに天井に衝突する危険性を回避することができる。
そしてそのセンサーの中央にあるのはFPV用の2軸ジンバル付きカメラだ。操縦とカメラ操作を2人で分担することが多いInspire 1では、カメラをパンしてしまうとドローンの正面の映像を捉えられないため、操縦者はやりにくいところがあった。しかし、Inspire 2の前面FPVカメラがあれば、操縦者は常にドローンの前方映像を確認しながら操縦できる。操縦者にとっては非常に便利な機能だ。
中央にあるカメラがFPV用カメラ
搭載するメインカメラももちろんバージョンアップ。「X4S」とその上位機種「X5S」の2種類が発表され、ともに5.2K 30fpsの高解像度動画に対応、特にX5SについてはCinemaDNG型式のほか、映像業界の実質的標準フォーマットProRes型式にも対応した。Inspire 1 ProでもCinemaDNG型式に対応していたが、RAWデータのため1日撮影した際には6TBほどのデータ量になってしまい不便さもあったという。ProRes型式であればデータも大きくなく、プロフェッショナルな現場の納品データとしてもそのまま利用できるためワークフローがシンプル化されるはず。データの保存・管理も、SSDスロットを機体に標準装備しているため非常に便利だ。ただ、今までのX5およびX5R等のカメラはInspire 2と互換性がないとのことなので、旧来のユーザーは注意が必要だ。
X4S(写真上)とX5S(写真下)
そのほかにも、バッテリーが2つ搭載できるようになり飛行時間が延びたほか(X5Sカメラ搭載時で25分、X5Rカメラを搭載したInspire1 Proの約2倍)、時速108kmまで出る「スポーツモード」、電波をロストした際に全センサーをフル活用して最大200m先の障害物を把握しながら離陸地点まで安全に戻ってくる「スマートGO HOME」機能など、劇的な進化を遂げている。
機体後部にバッテリーを2つ搭載。ボディ上にある大きな丸いボタンを押すとバッテリーをリリースできる(後方にあるDJIロゴ上の小さな2つの丸い窓は赤外線距離センサー)
以前、DJI JAPANの方に「会社の強みをどこと捉えるか」とうかがったところ、「ドローンに関するユーザーのあらゆる声がDJIに集まってくる」と言っていた。確かに、世界シェア70%と言われるDJIには、ユーザーからの希望も、トラブルの情報も相当数集まってくるのだろう。今回の新型ドローン2機種は、その声を見事に反映させたバージョンアップを遂げていると言えよう。しばらく、DJIの独走は続くのはいうまでもない。