ドローンとLinuxの深い関係
Linuxベースで開発されたドローンが定番となりつつある。初期のドローンは、独自のOSか、あるいはアルディーノに基づいたArduPilotのようなコントローラーに依存していた。この2つのアプローチは成功してはいたが、前者はクローズドなシステムであり、後者は限られた処理能力であるために、大きなイノベーションを起こすには課題が残っていたのだ。そんな中、最近のLinuxを搭載したドローンの誕生が、より柔軟でオープンなプラットフォームを創造することで、ドローン市場を賑わせている。今回は、Linuxベールで開発されたものが、どのようなドローンに搭載されているのかを紹介していく。
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Erle-brain | Erle Robotics
最初にLinuxを搭載したドローンコントロールシステムは、2014年の初頭にローンチされたErle-brainであると言われている。Linuxを搭載したビーグルボーンブラック、低コストのシングルボードコンピューター(特にDebian Wheezy7.5)と、そのドーターボードであるAPM4.0(PixHawk Fire Cape flight controller)を基板としており、かつ29ものセンサーを有するEarle-brainのパッケージは、カスタムアプリケーションを実行することができる。ハードウェアもソフトウェアも、オープンソースとなっている。
BeBop | Parrot
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昨年の5月、ParrotがBeBopドローンをローンチした。このUAVは、クアッドコアGPUと8GBのフラッシュメモリーを積んだParrot P7 dual-core CPU Cortex9にLinux(Kernel 3.4.11 #3 SMP PREEMPMT)を搭載したものである。現在フリーオープンソフトウェア開発キットが利用可能である。BeBopは、スマホやタブレットに、リアルタイムで操縦席からの景色を提供する洗練された無人航空機で、3軸地磁気センサー、3軸ジャイロスコープ、3軸加速度計、オプティカルフローセンサー、バーティカルスタビライゼーションカメラ、高度8メートル以下の目的地に対するウルトラサウンドセンサー、高高度用の圧力センサーやGPSを搭載している。さらには約22分飛行が可能となっている
Solo | 3D Robotics
近頃急激な成長を遂げているスタートアップの一つである3D Roboticsが、Linuxを搭載したドローンSoloをリリースしている。搭載されているコンピューターと、地上のコントロールユニットの両方が、1GHz Cortex A9プロセッサーを使用し、Linuxを搭載している。地上と機体上のそれぞれに搭載されたシステムはドローンのPixhawk 2フライトコントローラーとつながっている。感心すべきことに、ソロは最長0.5マイル先から、レイテンシ0.18秒でリアルタイムビデオを配信することができる。3D Robotticsはプラットフォームをオープンにするために尽力している。また次に紹介するドローンキットもラインナップしている。
Drone Kit |3D Robotics
このキットさえあれば、自分で自分のドローンを作ることができる。ドローンキットは、3D Roboticsによってリリースされ、コースプランニング、自動飛行、遠隔測定法やiOS、パイソンなどの、ドローンアプリケーションを作るための無料のソフトウェア開発キットである。ドローンキットはヘリコプター型(Copters)、飛行機型(Planes)、 車両型(Rovers)、気球型(Blimps)など、どんなタイプのドローンも対象としている。ドローンクラウドを含むプラットフォームを使えば、誰しもが世界中のドローンとのコミュニケーションを可能にするウェブサービスを作ることができる。さらなる刺激を求めているなら、ドローンキットを使用しているフライトログシェアサービスのドローンシェアをチェックするべきだ。
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Beagle Drone |Andice Labs
ビーグルドローンブラックは、人気のあるシングルボードコンピューターとオープンソースUASが合わさって形になったもので、Andice Labsによって作られた。まだ製作途中であるものの、ビーグルドローンはLinuxを搭載しており、そのシステムは3軸地磁気センサー、3軸加速度計、3軸ジャイロ、ビーグルボーンの世界で”cape”と呼ばれるドーターボードを通じたバロメーターを含んでいる。
Paparazzi Project
もしドローンのプラットフォームを製作中で、 ハードウェアと飛行制御ソフトウェアの代わりを探しているなら、Linuxを搭載するハードとソフトの両方を包含するパパラッチプロジェクトを検討するべきだ。これには、カルマンフィルターのような素晴らしいソースコードだけでなく、必要とされるであろうハードウェアに関する全ての情報が含まれている。モデム、アンテナ、ユーザーフレンドリーな地上の管理ステーションなど、すべて揃った地上のハードウェアとソフトウェアまでもが、とどめの一撃として用意されている。またこのパパラッチをPartto社のBebopで使用することも可能である。本プロジェクトのサイトは、広範囲に渡り詳細に説明がされており、チェックする価値が十分にあるだろう。
Ground control
ドローンのグラウンドステーションのソフトウェアは、飛行計画からデータ収集にまで及ぶすべての側面において非常に重要である。操縦士は、プラットフォームのOS(Linux、Windows、Macなど)、オープンソースであると同時に洗練されたユーザーインターフェースを持つなどの特徴から、QGroundcontrolのようなシステムを好む。このシステムでは、飛行中の航空路調整、機上パラメーター、実時間遠隔計測データ処理やデジタルビデオディスプレイなどがサポートされている。
Qualcomm® Snapdragon Flight™
Qualcomm社は現地時間の9月10日、子会社のQualcomm Technologies,Inc.が消費者ドローン及びロボティクス向けの58×40 mmの高性能ボードQualcomm® Snapdragon Flight™を発表。Qualcomm Snapdragon FlightはQualcomm® Snapdragon™ 801プロセッサをベースに、ロバストなネットワーク接続と最新のドローンソフトウェア及び開発ツールを新たに提供し、次なる消費者ドローンを産み出す最先端のモバイル技術となっている。なお、Snapdragon Flightは現在指定されたOEMメーカーのみに提供されており、2016年中には一般向けに発売されるドローンに搭載される予定となっている。
Panopticopter
これはLinuxを搭載し、軍用ドローンである。自分たちを「DIYドローンラボ」と呼ぶMITの生徒三人が、極めて正確な空襲を可能にするドローンの新しいプラットフォームを作ると主張して、キックスターターにてプロジェクトを始めた(結果$9,311目標額である$10,000には届かず、不成立)。このプロジェクトでは、Linuxを搭載したビーグルボーンブラックとアルディーノを基礎とした操縦コントローラーが使われる予定である。米軍が相当額の資金をドローンにつぎ込んでいることを考えると、似たようなプロジェクトは今後も出てくるのは自明だが…。
Airware
上述したプロジェクトは、みなビジネスとして大きなポテンシャルを秘めているが、企業環境の内部でドローンを扱うことは、単純に操縦制御システムを実行するよりも、かなり複雑である。この問題に対処するために、Airwareは、飛行計画とデータ収集を統合するソフトウェアを作成。ゴールは「企業が安全にドローンを運用することができるように共通のオペレーティングシステム作ることであり、空中のデータをデザイン、エンジニアリング、資産管理、意思決定のプロセスなどと統合することである。彼らは、インフラの損傷評価、環境調査、探索と救助、土地の管理、公共の安全、地形調査や地図作成までのすべてのことに関して、企業がドローンを使用することを心に描いている。彼らのプラットフォームの選択はもちろんLinux。Airwareの製品はまだ開発途中だが、彼らの一挙一動は要チェックに値する。
Dronecode Project
ドローン界隈で急成長して注目を集めている他のトピックが、ドローンコードプロジェクトである。これは、Linuxファウンデーションによって非営利的に運営される、現在と未来のオープンソースドローンプロジェクトを一つにまとめるプロジェクトである。3D Robotticsはyuneec、Baidu、Intel Qualcomm、Boxなどど同じくこのプロジェクトの創立メンバーのひとつである。
本プロジェクトによれば、ドローンコードは、APM UAV ソフトウェアプラットフォームとそれに関連したコードを含み、開発が行われる。Dronecodeのプロジェクトメンバーは、現在42社。日本でも有志のグループが立ち上がり活動が行われている。Dronecode Project については編集部もさらに研究していきたい。
まとめ
素晴らしい無人航空機の未来を作り出すこの旅において、Linuxとドローンは素晴らしい組み合わせである。クローズド化するという選択肢の誘惑があるにもかかわらず、ドローン市場における真のイノベーションが起こるのは、革新的な商品が生み出されるであろうオープンソースプロジェクトからなのは確かなようだ。この記事では、私達は最先端を行くLinuxとドローンを紹介したが、このような活気に満ちた市場は素早く進化を遂げ、すぐに新しい製品やプラットフォームが誕生するだろう。