5月30日から6月2日の4日間、パンデミックから4年ぶりの対面式で開催された台湾のITテクノロジー見本市「COMPUTEX TAIPEI 2023」。パソコンやゲーミングマシン、コンピュータサーバー、ロボティクスなどハードウェアを中心としたビジネス展示会でもあるので、ドローンの展示もそれなりにあるのではないかと思っていましたが、残念ながら今年はほとんど会場でドローンを見かけることはありませんでした。
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今年のCOMPUTEXは全体的にAI推しで、NVIDIAやArm、Qualcommといったトップ企業らの基調講演では、AIに不可欠なハイパフォーマンスコンピューティングやその基盤となる次世代プロセッサが披露されていました。そこで進められるスマート化の対象にはドローンも含まれているのですが、具体的にソリューションがあるというわけではなく、むしろツールとして当たり前の存在になってきたといえるかもしれません。
また、今年のCOMPUTEXはAIが生活のあらゆる場所で使えるようになるというメッセージが発信されていました。
AI搭載で空飛ぶ点検管理ロボットに活用
少ないながらも会場で見かけたドローン関連の展示がいずれもAI搭載、5G接続による集中管理ソリューションを打ち出していたことも、今年のCOMPUTEXがいかにAI推しだったかがわかります。
鉄道や発電施設などのインフラ点検をAI搭載したドローンで自立飛行を集中管理できるソリューション展示していたACTは、ソフトウェアの開発はインドで行っており、搭載する機器や運用を管理する設備で台湾企業と連携しています。小型でコンパクトな既存の商用ドローンに後付けで簡単に追加でき、マイコンでコントロールタイプなども開発しています。
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COMPUTEXと併催されている、スタートアップを中心とした展示が集まるInnoVEXでは、韓国の航空宇宙会社Nearthlabが、AIによる高度な自律飛行能力と分析プラットフォームを組み合わせたソリューションを紹介していました。台湾ではエネルギー転換政策の一環として風力発電の数が増えており、強風で制御が難しい環境でも安定した機能を発揮でき、微細な損傷を見つけることができるのが特徴ということです。
産業拠点は台中から台南へ、新たなクラスターを形成
会場でドローンが見当たらなかったからといって、台湾のドローン産業は後退しているのといえばそうではなく、むしろ政府の支援を受けて新たな産業クラスターが形成されようとしています。ただしその舞台は台湾から新幹線で約100分の距離にある台南に集中しつつあり、2022年8月13日には山と海に囲まれた嘉義県に、「亜州無人機AI創新応用研発中心/Asia UAV AI Innovation Application R&D Center」がオープンし、除幕式には蔡英文総統も参列しています。
施設全体の面積は10ヘクタールあり、5階建ての新しい施設の中は研究施設や開発設備が整えられ、飛行試験場や風洞実験室も併設されています。1階のスタートアップ拠点となるエリアに、さまざまなタイプのドローンがずらりと展示されており、最新の技術を知ることができます。大学等と連携した人材育成も行われており、人材交流拠点としても活用を進めていこうとしているのがわかります。
もともとドローン産業が集中していた台中エリアに近く、位置づけとしてはUAVに加えて交通宇宙産業園区を設置する計画で、2025年頃から企業誘致が始まると報道されています。中小型商用ドローンの検証拠点や、大型ドローンの離着陸テスト用の滑走路も整備されるようで、空飛ぶクルマの開発も一気に進む可能性があります。
現在は中止されていますが見学の申し込みもできるということなので、来年のCOMPUTEXの取材にあわせて申し込んでみるつもりです。