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コラム小林啓倫

ドローンによるバスの運行管理[小林啓倫のドローン最前線]Vol.84

都市部の問題を解決する技術として、注目されるドローンだが、ニューヨークではドローンを活用して、バスの運行管理を改善するという計画がスタートしている

2024年12月12日
KK
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Contents
MTAの計画なぜドローンを活用するのか

MTAの計画

米ニューヨーク州のMTA(ニューヨーク市交通局)が、ドローンを活用して、バスの運行管理を改善するという計画をスタートしている。これは先月末に同局のバス部門から発表されたRFI(情報提供依頼書)によって明らかになったもので、その中でMTAは、12月18日までに関連情報を提供することを関係企業・組織に呼びかけている。

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RFIで解説されている計画は、大きく分けて2つの仕組みから構成されている。まずは「バス位置情報の把握」だ。これはMTAの管轄内でドローンを定期的に飛行させ、バスの位置情報を収集するというもの。収集されたデータはリアルタイムで集中管理システムに送られ、バスの位置を正確に把握したマップが作成される。これにより、手動での車両確認作業を減らし、より正確で迅速な位置追跡を実現するという。またバス利用者の利便性を改善するために、彼らに利用しようとしているバスの位置情報を提供することも計画されている。

もうひとつは「バス路線の交通パターンの把握」だ。こちらはバス路線の上空を定期的に飛行させ、交通パターンや混雑状況を監視するというもの。また特定の区間や時間帯における混雑度、あるいは障害物(事故、工事など)の状況も把握するという。このデータもリアルタイムで集中管理システムに送られ、そこで交通状況を分析。渋滞状況に基づき、バス運行ルートや運行間隔を調整したり、混雑が予測されるエリアへの迂回ルート提案や運行計画の変更を支援するという。

またこれらと同時に、関連インフラに関する情報提供も呼びかけられており、具体的にはドローンの離着陸プラットフォーム、充電設備、データ送信のためのネットワークインフラ、管理者が情報を管理するためのシステム類などが挙げられている。

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現在MTAでは、ニューヨーク市全域で約6000台のバスを運行しているそうだ。これらのバスは28箇所の車両基地(デポ)で管理され、日々約6万回の運行に使用されて、年間1億2千万マイル以上走行するという。そのためにMTAは、デポ内外の車両位置を正確に追跡する課題があり、その効率化のためにドローンを活用するというアイデアが生まれたわけだ。

RFIは文字通り情報提供の依頼であり、具体的な提案の募集ではなく、ドローンを用いたソリューションの可能性や業界の最新情報を収集するためのものだ。しかし得られた情報に基づいて実現のめどが立てば、実現に向けた開発がスタートすることになる。

なぜドローンを活用するのか

現時点で、MTAがバスの位置情報をまったく確認していないということではない。既に12年前から、MTA Bus Timeというシステムが稼働している。

これは上の映像でも解説されているように、バスの位置をGPSで把握し、その情報を中央管理システムに送信するというもの。その情報はバス利用者の携帯端末に送信されると共に、分析の上で、さまざまな運行管理や緊急対応に役立てられる。

しかしMTA Bus Timeには一定の制限がある。たとえばこのシステムでは、バスの位置を約30秒ごとに更新するため、バスの実際の位置と報告された位置の間にわずかな遅延が生じる可能性がある。さらに、ニューヨーク市の交通状況は非常に複雑で、バスの到着を予測することが困難なため、このシステムでは正確な到着時刻ではなく、主に位置情報に基づいた情報を提供している。MTA はドローン技術を統合することで、デポ内の車両・運行中の車両の両方に関する正確で最新の追跡を提供し、これらの課題に対処することを目指している。

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しかしこの計画に対しては、批判も出ていることが報道されている。それによると、交通機関で働く人々が組織している労働組合からは、ドローンの導入が現場で働く監督者やディスパッチャー(運行管理者)の業務の代替につながり、最終的には人員削減が生じるのではないかと懸念している。またドローンが低コストな監視ツールとしての役割を果たす一方で、これまで培われてきたバスの状況監視や運行調整のスキルといった「現場での対応能力」が失われ、逆に運行トラブルが生じる可能性も指摘されている。

また労働組合は、MTAが過去に導入した技術プロジェクトがうまく機能しなかった事例を挙げ、新たな技術導入がまたもや失敗するのではないかと懸念している。

実はデポ内の車両の位置情報把握については、既に「Yard Tracker」というシステムが導入されているそうだ。しかしこのシステムは、バスの位置を正確に追跡できておらず、期待された成果を上げていないという。労働組合は、こうしたプロジェクトが不透明な契約のもとで進められている可能性を指摘し、MTAの予算管理に問題があるとも主張している。

ニューヨーク市については先日、NYPD(ニューヨーク市警察)が24時間体制で自律型ドローンを運用するという計画を開始している(関連記事)。都市部の問題解決のカギを握る技術として、ますます注目を集めるドローンだが、期待通りの効果をあげられるかどうか、今後の動向が注目されるところだ。

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TAGGED: ドローン, 小林啓倫のドローン最前線
watanabe 2024年12月12日
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