クラウドファンディングに成功した「地雷除去ドローン」
2016年のことになるが、以前この連載で、「地雷除去ドローン」というアイデアがあることを紹介した。文字通り地雷除去をドローンに任せようというもので、空からの地形のマッピング、地雷の発見、そして爆破まで達成することをゴールとしていた。
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考案者はアフガニスタン出身の研究者、マスード・ハッサニ。アフガニスタンも過去の戦火により、大量の地雷が残されている国であり、ハッサニはこの事態に対処しようと様々なアイデアを検討してきた。そしてたどり着いたのが地雷除去ドローンであり、彼はこれに「マイン・カフォン・ドローン(MKD)」という名前を付け(ペルシャ語で「地雷爆発装置」を意味する)、クラウドファンディングで資金を募集した。
ここまでが、2016年の記事でお伝えしたところだ。結果として、このクラウドファンディングでは目標額10万英ポンドを上回る約12万英ポンド(約2200万円)が集まり、ハッサニは製品化に着手することができた。
こちらは2020年に公開された映像で、実際のMKDが飛行する姿と、その支援システムの様子を確認することができる。コンセプトは変わっておらず、ドローンによる地形マッピング・地雷発見・除去を行うことを目指している。
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また公式サイトの解説によれば、最新のバージョンではマッピング用に1種類、地雷発見・除去用にもう1種類と、計2種類のドローンが使用されている。そして既存の地雷除去作業と比べ、「少なくとも10倍速く、40倍安価な検出プロセス」を実現しているそうだ。
2020年の発表によれば、MKDの開発に対してEU(欧州連合)から多額の資金提供が行われており、実験から製品化への準備段階へと進んでいるとのこと。また国連が支援するアフガニスタンの地雷対策調整局(DMAC)と協力し、アフガニスタンで試験運用を行うことを目指している。
残念ながら2020年以降のアップデートや告知は、公式サイトでも公式Xアカウントでも行われていないが、ウクライナ空軍に対してこのMKDの提供が行われたとの告知がある。喜ばしいことではないが、ロシアのウクライナ侵攻以降、同国には多数の地雷の敷設が進んでいると報じられている。ウクライナはアフガニスタンに続いて、「地雷除去ドローン」というコンセプトが通用するかどうか、実地でテストするための環境となるだろう。
ウクライナでの研究
実はウクライナではMKD以外にも、地雷除去にドローンを役立てる取り組みが進んでいる。それはコロンビア大学で地球環境科学を専攻している博士課程の学生、ジャスパー・バウルによるもので、こちらはドローンによる上空からの地雷検知に特化している。
バウルは火山活動の監視をきっかけにドローンとリモートセンシングの技術に触れ、2019年から21年にかけて、AVERT(Anticipating Volcanic Eruptions in Real Time、リアルタイム火山噴火予測)というプロジェクトを手掛けている。そしてこれらの技術に機械学習を融合させ、より効率的な地雷・不発弾探知方法の開発に注力する非営利団体「Demining Research Community」を立ち上げ、米オクラホマ州で実証実験を続けてきた。
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彼が主導して開発した技術では、ドローンとそれに搭載されたカメラを用いて検知を行う。カメラで撮影された映像をAIが解析することにより、人間が目検で行うよりも細かい精度で、さまざまな種類の地雷および不発弾を発見できるようになっている。その精度は現在、92%に達したと報告されている。またドローンは地表上空10メートルの高度を飛行し、300平方メートルを3分半で調査できるそうだ。
カメラを使用している関係上、現時点でAIが検知できるのは、地表の爆発物に留まっている。深く埋められている場合や、植物に覆われている場合は検知が難しい。そこでバウルのDemining Research Communityは、赤外線画像や地中レーダーを使って検知する方法をテストしている。また地雷探知結果に対するAIの信頼度を、対象地域の植生に基づいて評価するモデルも開発している。
米誌の報道によれば、バウルは開発チームと共に、ロシアによる侵攻が行われて以降のウクライナに何度も足を運び、この技術をテストしてきたそうだ。戦争は武器に関するテクノロジーを進化させるというのが悲しい現実だが、一方で武器から命を守るテクノロジーも進化させることも期待できる。こうした取り組みが結実し、ウクライナやアフガニスタン以外の地域でも、大勢の人々の命を守ることになるようことになるよう祈りたい。