国家資格開始からそろそろ1年
国家資格の仕組みが開始してそろそろ1年が経とうとしています。私自身も講師、修了審査員、そして受講生として大体経験してきましたので、現状と、これから講習と試験を受けようとするみなさんに向けてアドバイスをできればと思います。
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実技試験について
まず、直接実技試験を受けようとしている方は、まず国土交通省が出している「無人航空機操縦士実地試験実施細則」これを隅から隅まで読んでください。特に、口述試験の点検部分など、例と書かれた部分、ここも例だと思わず確実に実行してください。例と書いてあるのに、この部分をやらないと減点をくらいます。例なのに。
「これは知らないと無理だよ」という部分がかなりあります。1等、2等問わず直接試験を受けて落ちた方は、ほとんど飛行試験ではなく、口述試験の細かい部分で減点され、合格できなかったのではないかと予想しています。
各ドローンスクールでの2等の講習と試験はそこまで難しくないと思います。確実に合格したい方は、屋内で試験を行うところをお勧めいたします。2等に限り屋内が認められているのですが、2等の飛行試験はGPSなどの水平位置を保持する機能をONで行うものが2種目、OFFのものが1種目あります。ONの種目は屋外であろうと、屋内であろうとそこまで難易度は変わらないと思うのですが、OFFの種目は風速にかなり左右されてくると思います。
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もう一つが使用機種です。ご自身が使用されている機種と近い機種を使用しているスクールが良いと思います。ほとんどのスクールがDJI製のドローンを使用していると思いますが、GPSなどをOFFにできる機種となると選択肢が狭いのです。ほとんどはPhantom 4だと思います。
今までもドローンを飛ばしていた人は全く問題ないのですが、最近始めたり、これからドローンを買おうと思っている人にとっては、Phantomシリーズのコントローラーは大きく重く、操作も繊細です。Mavicシリーズのようなゲームコントローラーのような形状のコントローラーと比べてしまうと操作感がだいぶ違うと思います。
また、Mavic 3以降の機体で8の字の練習をしていると、機体の回転に対してロールを入れてくれる釣り合い旋回があるので、もっと感覚が違うと思います。
私はMavic 2で講習を行なっているので、8の字の練習中に受講生の方に「機体が流れるのですが何故ですか?」と問われ、最初なんのことだかわかりませんでした。どうやらその方はMavic 3シリーズを普段飛ばしているようで、Mavic 2は釣り合い旋回が無いために、8の字飛行の際、外側に遠心力で流されていくためにそう思ったようです。
そういった違いはあれど、2等の飛行試験はそこまで難易度は高くありません。問題は1等です。
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1等の飛行試験は屋外しか認められていません。そのため風の影響を受けます。風速5m/sを越えれば中止ですが、逆に言うと4m/sであれば行うということです。大体の項目で飛行エリアから1.5m離れたら減点、2.5m離れたら1発で失格です。4m/sの風が吹いたらば0.6秒ほどですぐに不合格エリアまで流されます。
私が受けた感覚では、風がなければなんとかなる難易度ですが、風速によっては難易度がすごく上がる感じがしました。その日の天候状況もさることながら、多分複数人受験すると思うのですが、受験する順番にも左右されます。結構この部分は公平ではないなと感じました。
あとは1等の操縦技能証明が必要なのはカテゴリー3の飛行だからだと思うのですが、立入管理措置をせず行う特定飛行はどちらかというと安全管理や、飛行計画を立てるのが重要であって、GPSなどの水平安定機能を切って8の字やピルエットホバリングができるようになることが目的ではないと思うのですよね。そんな飛行技術が必要になるのは、安全対策が全てうまく行かず、人力でなんとか着陸させようとしている状態です。そうならないように対策するのが重要だと思います。
とはいっても、まだ始まったばかりの制度なので、まずは足切りの意味も込めてこのような試験内容なのでしょう。重要なのは、今後の実態に合わせて変えていくことだと思います。
机上試験
実技審査の中に机上試験というものがあります。これは飛行計画を立てるに当たって必要な知識を問うテストです。1等は10分で5問、2等は5分で4問解かなくてはいけません。1問間違えるごとに5点の減点ですので、なかなか大きな割合を占めています。
内容は2等の基本であれば立ち入り管理措置をした上で特定飛行をした際の飛行計画、各限定変更は夜間、目視外とそれぞれの飛行計画に基づいた問題が出ます。1等は立ち入り管理措置をしない場合の問題になります。これはとてもいい問題で、実際の飛行に即した事例になっています。ぜひ問題を書きたいところですが、流石に流出するわけにはいきませんので、詳しくは書けません。
でも、この問題こそ今後のドローンを運行管理する際に必要な部分だと思います。実技飛行よりもっと比重を置いてもいいのではないでしょうか。ただ、この問題、筆記試験に入れてくれればよかったのにとも思います。終了審査を運営するに当たり、机上試験を組み込むのは、会場の問題もあり、ちょいと面倒なのです。
筆記試験
筆記試験はプロメトリックという、全国各地にある提携会場のパソコンにて受けます。私はパソコンスクールの一部が会場になったところで受けました。他にも受験している方がたくさんいましたが、無人航空機だけではなく、介護であったり、自動車整備であったり、多種多様なテストが受けられます。計算問題もありますが、必要なところでは電卓が使えます。また、A4用紙一枚とシャープペンを渡されるので、メモや筆算も可能です。私は開始早々、計算問題の公式を忘れないように書いておきました。この用紙は終了後回収されます。
私が受けたのは1等の筆記試験ですが、問題自体はいくつか考えさせられるものはありましたが、そこまで難しいとは感じませんでした。ただ、プロポのトリムに関する問題や、回転翼航空機なのにラダーやエルロン、エレベーターという固定翼機の補助翼名で答えさせる問題など、ちょっと問題としてどうなのか考えさせられるものがありました。
国土交通省のサイトに例題としてあるような、固定翼機の傾斜角による旋回半径を計算させられるのも疑問です。必要とは思えない知識ですよね。まあ、私はほぼ満点取れたと思いますが。
これから受ける方はぼちぼちAmazonなどでも参考書や問題集が発売されていますので、ぜひそういったものをしっかりやってから挑んでください。
今後の国家資格
現状では2等の試験は妥当な内容だと思います。1等に関しては、ちょっと内容にそぐわないと思います。これから受験する方は1等、2等、それぞれ自分に必要なのかよく考えてから受けてくださいね。なんとなく1等取っておこうと軽い気持ちで1等を狙わないほうがいいです。現状、物流か非常に難易度が高い点検などでしか必要ない資格です。
2等に関しても、機体認証が進んでいないので、まだ持っていても本来の効力がないのが現状です。1等の機体認証が厳しいのは、性質上しょうがないのですが、2等が厳しいのは本来、国交省の申請を受ける手間を省力化することが目的なはずなのに、これでは目的を達成できないです。せめて、機体の重量によって機体認証を簡略化してもいいと思います。まずは制度を作るというのは肝心です。
でも、現状に合わせて柔軟に変えていくことも重要だと思います。そして、そのような変更に関しては批判だけでなく、寛容な心で対応していきますよ、私は。