まずは準備
朝7時過ぎ、宮野木ジャンクションの渋滞はたいしたことがなく、貝塚インター周辺も少し速度は落ちたものの、順調に木更津へ向けて高速を進んでいる。目標時間の8時には講習会場には到着できそうだ。講習開始は9時30分。機材、書類の準備、事務所での積み込み、会場準備、受付、これらを1時間ほどで終わらせる。
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今回は二等無人航空機操縦士の国家資格だ。講習自体は講師2人で実施するため、事務所で合流し、簡単に打ち合わせを済まし、積み込みをする。講師はドローン関係者なので、比較的積載能力のある車で来てくれるので助かる。2シーターコンバーチブルだと困ってしまう。セダンでさえ厳しい。
会場で設営を開始するのだが、これがまた一苦労だ。我々は会場を借りているため、実技審査や講習に必要なコースを常設できない。印をつけたまま返すわけにもいかない。また、実技審査でコースの正確さは合否にも関わるため、いい加減な設置はできない。
今までは民間資格の講習を行なっていたが、ヘリパットを4つ並べるだけでコース完成だった。国家資格となると、約20個のコーンを並べ、各コーンの間隔を測るなど、とても手間がかかるのだ。最初はコースを作るのに1時間ほどかかっていたが、最近では30分ほどで終われるようになってきた。
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最近の大型倉庫やロボット掃除機野用のロボットの上にコーンを乗っけて、自動的に配置したいものだ。ただ、そのロボットの管理が厄介だが。
講習開始
その頃になると、受講生の皆さんがそろいだすので、名前の確認、身分証の確認を行う。替え玉の可能性もあるからだ。受講生は3人。講師は2人だからほぼマンツーマンに近い。講師1人で5人対応していた民間資格とは大きく違う。ただ、全員以前に民間資格を受けてくれた人たちだ。
今回は経験者の講習なので、何かしら民間資格を待っているか、国交相に特定飛行の申請をした事ある方が対象だ。国交相の規定では、2等の経験者は2時間の講習になる。この2時間というのは、飛ばしている時間はもちろんのこと、説明を受けたり、機材を扱っている時間も含む。
他の人が飛ばしている間に見ている時間は含まれない。それでも3人であれば、終了審査を含めても1日で終わるスケジュールになる。
簡単に1日の流れを説明し、講習開始だ。見覚えのある方もいるが、民間資格の講習を始めてから6,7年経っているし、200回を超えている。どのくらいの経験者なのかわからないため、簡単な自己紹介から始める。3人の自己紹介をまとめるとこんな感じだ。
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Aさん:30代前半 男性
測量会社に勤め、ドローンを普段の業務に使用しており、経験豊富。ただ、普段は自動がほとんどで、8の字飛行などはしたことないため、事前に少し練習をしてきた。
Bさん:50代後半 男性
フリーランスのカメラマン。月に1,2度、空撮の仕事を請け負い、実務で飛ばしている。2年前ぐらいに民間資格を取得し、その後も定期的に飛行はしているものの、今回の受講に向けて練習をすることなく当日来た。
Cさん:60代後半 男性
現在職業は引退し、4年前に今後の趣味として民間資格を取得したものの、飛ばす場所を確保できず、それ以来ドローンに触れていない。国家資格の話を聞いたので、再びチャレンジしようと受講した。
飛行訓練
二等無人航空機操縦士での終了審査は机上試験、口述試験、飛行試験の3つがあり、飛行試験は、スクエア飛行、8の字飛行、異常事態における飛行の3種類がある。まずは腕前の確認を兼ねて簡単なスクエア飛行を実施する。
機体を前に向けたままで四角形に移動するだけだ。飛行モードはスティックを中立にすればその場にとどまっていてくれるPモード。Aさん、Bさんは難なく飛行していた。Cさんは以前使っていた機種がDJI製のPhantom系だっため、今回の講習で使っているDJI製のMavicとはコントローラーの大きさや持ち方が変わるため、少し苦労していた。
次に機首を進行方向に向けながらのスクエア飛行。ドローンは地上に立って、機体を直接見ながら操縦するため、機首が自分が見ている方向と変わってくると、スティックを倒す方向と機体が動く方向にズレが生じるために、飛行の難易度が変わってくる。これがドローンを飛ばす上でひとつの難易度のハードルになる。
3人共、たまに舵の打ち間違えはあるものの、形にはなっている。ただし、奥行きの感覚はズレがちで、実際の飛行ラインから大きく外れることもあった。
次に8の字飛行。これが一番厄介な種目になる。私もドローンを扱って10年ほどになるが、実際の飛行で8の字飛行を行ったことが1度もないのだ。こんな飛行で空撮することはまずない。場合によってはこんな8の字飛行の映像を見せられたら酔ってしまうかもしれない。
ただ、2本のスティックをバランスよく扱わないと正しい飛行にはならないので、練習の項目としてはとても良くできたものである。練習してきたAさんはなんとか形になる。BさんCさんは円を描くこともままならない。危なく壁に当たりそうになることもしばしば。2人は一気に不安そうな表情になったのは言うまでもない。
最後に異常事態における飛行だが、これは水平方向の位置維持機能を切った、通称Aモード(ATTIモード)で飛行を行う。ただ、機首方向は常に正面を向いているので、操作はそこまで難しくない。ただ、移動した際の慣性を自分の操作で止めなくてはいけないため、それなりの操縦技術は必要だ。
現在では意図的にAモードにできる機種も減っている。実際にドローンを飛ばしていて、Aモードになってしまうことも殆どなくなったので、Aモードでの飛行をするのは、私も講習の時ぐらいなものだ。
この項目もまだ改善の余地があるものの、3人共なんとかこなしていた。
終了審査に向けて
ここまでで、あっという間の午前の講習終了だ。昼休みを挟んで午後は終了審査に近い状況での練習をした後、実際の終了審査になる。受講生の3人は相変わらず表情が暗めだ。特にCさんに至っては若干諦めモードでもある。このまま全員合格となるのか。後半へ続く
※このコラムの内容は、事実を元にしたフィクションです