世界では空だけでなく海でもドローンを活用しようという動きが加速しています。海で使用するドローンは、船から有線で操作して水中を探索したり、潜水艦のように自律航行するAUV(Autonomous Underwater Vehicle)するタイプなどがありますが、これからは海上を長時間航行できる自律型無人探査機のUSV(Unmanned Surface Vehicle)こと海洋ドローンの活躍が増えるかもしれません。
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そんな海洋ドローンの分野でいま最も注目を集めているのが、カリフォルニア州アラメダに本社がある海洋ドローン製造開発メーカーのSaildrone社です。2014年に起業され、太陽光発電と風力を動力に長時間無人で航行しながらさまざまなデータをリアルタイム収集できる、最先端の技術を搭載した”Saildrone”シリーズを製造開発しています。
Saildroneは現在、大型の「Surveyor」、中型の「Voyager」、小型の「Explorer」、という3つのドローンタイプがあり、目的にあわせて使い分けることができます。共通しているのは斬新すぎるともいえる機体設計で、ボートの上に刺さった飛行機の片翼に飛行機のテイル部分が横向きに突き抜けているような独特なデザインをしていて、そのシルエットはまるでハンマーを持った巨人のようにも見えます。
ハンマーを持った巨人という表現はあながち間違いではなく、Saildrone社のUSVは海上を航行する船の安全を守ることを目的に設計されていて、機体に取り付けられたさまざまな機器を使って、沿岸や国境を巡回してセキュリティを強化したり、違法漁業や海賊船といった不審船の監視や警告をしたり、航行の妨げになる漂流物を発見したり、海中ソナーも使って海底にある見えない障害物なども探索することができます。オレンジのカラーも遠くから目立つために、わざわざこの色が選ばれています。
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Saildrone社の評価を高めている理由は、創業から約10年もの歳月をかけて独自に開発してきた航行システムにあります。地球上で最も過酷な海洋条件とされる北極から南極まで約100万海里を約25,000日間航行して蓄積されたデータを元に、180日から365日連続して航行することができ、もちろん特許も取得しています。その性能はNOAA(米国海洋大気庁)とカテゴリー4のハリケーンを追いかけて動画が撮影できるほどすさまじいものがあります。
Saildrone社の創業目的は、海洋安全保障をはじめ、マッピング、天気予報、地球規模の漁業、気候変動などの活動に対し、データインテリジェンスを提供することで、地球環境の研究にも使用されています。さらに、洋上風力発電所に近づくクジラを発見するなど、その用途が広がっています。
ブルーエコノミーと呼ばれる海や沿岸環境で繰り広げられる経済活動は世界中で成長途上にあり、ある試算によるとその市場規模は2030年で約500兆円になるとされています。そこで重要な課題の一つとされているのが広大な海での安全対策で、Saildrone社は自社で開発したプラットフォームを使用して海上データにもほぼリアルタイムでアクセスできるようにすることで、問題の解決に取り組んでいます。
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3つあるラインナップのうち、2022年後半からサンフランシスコ湾とカリフォルニア沖で海上試験を実施し、この春に運用が開始された最新機の「Voyager」は、全長10mで水深300mまで海底マッピングができるマルチビームソナーをはじめ、スマートカメラアレイ、デジタルレーダー、パッシブソナーなど多彩なペイロードがオプションで搭載できるようになっています。
全長7mと小型で主に沿岸を探索するExplorerは24時間365日運用が可能で、これまでに100台が製造されています。全長20mで水深500mまで海底マッピングができるSurveyorは180日間無給で運用でき、環境の厳しいエリアでも耐久性を発揮します。
Voyagerにいたっては週1台のペースで量産体制に入っており、法執行機関からも受注しているとのことで、これからまさしく海の守り神としての活躍が期待されそうです。