米国で日本のレベル4にあたるドローン物流の事業認可は「Part 135(正確にはPart 135 Air Carrier Certification)」があり、米国連邦航空局(FAA)が審査しています。もともと旅客事業向けに行われているものなので、その審査はかなり厳しく現時点で認可を受けている企業は5社しかありません。
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各地域では様々なドローン物流サービスが普及していますが、それらは飛行距離が短く、ルートも制限されています。州をまたぐような本格的な長距離配送を実現するにはPart 135の取得は必須であり、そうしたニーズにあわせたデリバリー・ドローンの開発も進んでいます。
例えば、Amazonは2013年にドローン物流サービス「Amazon Prime Air」構想を発表し、同時に専用のデリバリー・ドローンを発表しています。しかし、その後長らくサービスは実現せず、Part 135の承認を受けたのも2020年9月でした。そして、約10年目となる2022年11月に正式なサービスを開始する発表会を開催し、その会場では2024年から運用を予定している次世代デリバリー・ドローン「MK30」のデザインを発表しています。
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新しい機体はこれまでに開発してきた中でも最も小型軽量ですが、それでいて5ポンド(約2.2kg)の荷物を注文から1時間以内に届けられる機能を搭載しています。人家の上を飛行することを意識してか騒音も25%低減され、とにかく安全であることを強調しています。
気になるのは発表された3Dレンダリング画像と、製造中と思われる機体のデザインが異なるところ。もし、写真にあるような機体が空を飛ぶようになったとしたら、配達ではなく偵察が目的ではないかと思われそうなほどシャープなデザインになっています。
ドローン物流サービスが始まってわかってきたことの一つは、機体のデザインをいかに安心感があるようなものにするかでした。というのも、ドローンの配達サービスは利用したいけれど自分たちの頭上を飛ぶのは不安があるという声は大きく、その影響でAmazon Prime Airはサービスを開始したものの、その利用回数は数件に留まっているといわれています。
その点、米国でUPSと並んで最も早くPart 135の承認を受けた企業の一つである、Alphabet傘下のWingは、最初から都市圏を飛行することを想定した、サスティナブルで安心感のあるデリバリー・ドローンを開発しています。ハミングバードと呼ばれるシリーズは、小さなローターを並列して騒音の低い安定性のある独自の飛行システムを採用し、配達容量にあわせて機体のバリエーションを増やしています。
ワイヤーで吊り下げる方式で届けられる配達パッケージのデザインもかわいく、人の手で受け取ることを意識した形になっており、ロゴの使い方や使用できるカラーもブランドガイドラインで指定するなど徹底しています。
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また、昨年6月にPart 135の承認を受けたZiplineは、医薬品の配達が専門であることと、独特のデザインが緊急車両のようなイメージがあり、抵抗感は持たれにくいかもしれません。実際のところ、グライダーのような固定翼機は騒音が少なく、荷物はパラシュートで目的地に落下させるため地上に着陸することはなく、その点も安心感がありそうです。
一方でUPSや今年に入って新たに承認されたFlytrexは、オーソドックスなロータータイプのドローンを使用しています。FlytrexはCausey Aviation Unmannedと連携してノースカロライナ州とテキサス州で配達サービスを成功させていますが、アイスランドで完全自律型の都市向けドローン配送システムを成功させている高い技術力があり、FAAとも協力関係にあります。
FAAの承認を受けたことで長距離配達が可能になり、全国へ対象を広げるとしていますが、現在の機体デザインのままで受け入れられるかどうかは、少し難しいかもしれません。実際、UPSはドローンサービスの信頼性調査では他社に比べて評価が低く、1位のAmazon(ちなみに2位はWalmart)でさえ苦戦しているので、今後は何らかの対策が必要になりそうです。
ドローン物流に関しては大型トラックに代わる大容量搭載タイプも次々登場していて、空を見上げると目にする機会が増えるのは間違いありません。利用が増えるのにあわせて、そのビジュアルデザインにも力が入れられるようになるのか、気になるところです。