スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)がコーディネーターを務める、その名もずばり「ROBOFOOD」
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そもそもEPFLは、"食用アクチュエータ"と呼ばれるうっかり食べても安全な素材でできたロボット部品の開発を行っていて、すでに食べられるゼラチンでできたグミっぽいロボットのグリップ部分のパーツを開発することを成功させています。空気を使って動作するロボットアームは150g以上の重さのモノを掴んで持ち上げることができ、将来的には体内で動くロボットの部品にすることを目指しています。
(提供:EPFL)
そうした研究の延長線上として発表された「食べられるドローン」は、ドローンに食料を運ばせるのではなく、ドローンそのものを食べられるようにして振る舞うという発想からスタートしました。最初に発表された研究論文「Towards edible drones for rescue missions:design and flight of nutritional wings(レスキューミッション向けに栄養のある翼を持つ食用ドローンの設計と飛行)」は、前回のコラムでも紹介した京都で開催されたロボット関連の国際学会「IROS 2022」で発表され、資料は誰でもダウンロードできる形で公開されています。
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それによると、遭難者や被災者へ食品を届けるためにドローンを利用するという方法は広がりつつありますが、商用ドローンの多くはペイロードが機体の質量に対して10%から30%の荷物しか運べないため、1回の飛行で届けられる量が制限されるとあります。そこでプロジェクトでは解決策の一つとして、翼をはじめとするドローンの機体を食べられる材料にすることで、輸送量を機体の50%にまで増加することができました。
さらに目的を終えた後も残りのパーツがゴミにならないよう、全体を生分解性が高い素材にすることも検討しており、ROBOFOODのサイトにはフード3Dプリンターの研究をはじめ、食べられる電子部品(Edible electronics)や細胞培養から作られるバイオ電子部品(Bioelectronics)に関する研究もあわせて公開されています。
プロトタイプの見た目はドローンというよりグライダーで、長距離を片道で飛ばせるような設計になっていて、耐久性の面ではちゃんと目的地へ飛ばすことに成功しています。固定翼は素材が市販のライスクッキーとゼラチンを加工したものでできていて、300キロカロリー分の栄養と80gの水を同時に運ぶことができます。論文と一緒に公開された動画では、さながら料理番組のような手作業で翼を作っている様子が紹介されています。
(CC BY-NC-ND)
ライスクッキーを選んだ理由は加工のしやすさや栄養価の高さのようですが、市販品なのでそれなりに味は保証されていると言えます。プロジェクトではロボットの食べやすさや美味しさもテーマになっているので、それこそ用途にあわせたいろいろな食べられる素材を付け替えられるようデザインされた、おいしいドローンが登場するかもしれませんね。