ここ数年で大きな成長を見せている市場の一つにロボティクスがあり、市場調査プロバイダーのREPORT OCEANが発行したレポートによると、2022年から30年にかけて年平均で11.8%以上は成長すると予測しています。また、10月に新しいビジネス戦略を発表したソフトバンクロボティクスは、世界のサービスロボットの市場が2021年で2兆7,410億円の規模になり、2030年には5兆7,628億円と2倍以上成長すると発表しています。
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ロボットによる自動化はあらゆる分野に広がり、それにあわせて高性能で多機能なロボットがいろいろ開発されていますが、特にドローンは目視外飛行が可能になるレベル4の解禁が間近というのもあり、今まで以上にさまざまな性能を持つ機体の研究開発が進められています。
そうした中で注目されているのが、空と陸の両方を移動できるドローンの開発です。このコラムのVol.36では線路上走るドローンを紹介しましたが、今回紹介するドローンは地上を自在に移動できる足を持っているのが特徴です。
10月23日から27日に開催された、ロボット技術の国際学会「IROS 2022」でお披露目されたロボット・ドローンは、THKが中心となって進めている「AGEHA」プロジェクトで開発中のプロトタイプで、クワッドローターのドローンに4つの足があり、モノを掴むロボットアームも備えています。
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以前に「JapanDrone 2022」でイームズロボティクスの展示ブースで紹介されていた機体とは少し異なり、足の部分が短くなった分だけしっかり歩けるようになり、全体的にバランスが良くなっています。動きも軽快で小回りが利くようになっており、アームとのバランスも考えて全体がデザインされています。
会場では展示されているものとは少し違った別の機体で、飛行中の「AGEHA」の様子も動画で紹介されていました。アームでモノを掴む動作や離着陸もスムーズで、飛行中は足を閉じてバランスを保つようにしています。
関係者の話によると、何かモノを届ける場合にドローンで長距離を飛んで運ぶ方法があるけれど、もう少し近くで簡単に届けたい場合に障害物や川などがあって直線距離で移動が難しい時に少しだけ空を飛んで移動する、といった用途を想定しているとのこと。AGEHA単体で目的を達成するというよりは、他のドローンやロボットと組み合わせるサブメカとして使う方向で考えており、機体も独自に一から開発するのではなく、既存の技術を組み合わせて可能性を探っているところだそうです。
以前に二足歩行ロボットの安定性を高めるためにドローンと組み合わせるという機体が開発されていましたが、それよりはかなり実用性が追求されている印象です。来場者の注目もかなり高く、時間帯によっては実機が見られないほど人だかりができていました。
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ちなみにIROS 2022には四足歩行ロボットのSpotを開発したBoston Dynamicsの現在は会長を務めるMarc Raibert氏が登壇し、これからますます用途が拡がるロボットの将来について話をしてくれました。その中でRaibert氏はSpotが倉庫や工場、あるいは職場の中といった場所で人と一緒に働くようになる機会が増え、そのために安全で違和感のない動きをするような方向に開発が向かっていると話します。
Spotはさまざまな企業ともコラボしていて新たな機能も拡張されていますが、その一つにドローンと組み合わせがあります。イスラエルのPerceptoが開発しているAutonomous Inspection & Monitoring(AIM)という石油開発や発電所を監視するシステムにSpotを組み合わせるというもので、現場でトラブルがあった場合にドローンが空から場所を特定し、そこへSpotが駆け付けるという仕様になっています。
(提供:Percepto社)
今はまだバラバラで動いていますが、将来的にパワーのあるドローンが開発されれば、Spotとドッキングさせて現地まで運んでくれるというタイプが登場するかもしれない、と思っている方もきっと多いのではないでしょうか。IROSでは「Flying Robots」というテーマで最新のドローン技術も紹介されていましたので、今後もロボットとドローンのハイブリッド機体の開発がどう進んでいくのか注目していきたいところです。
IROS 2022では「Flying Robots」が大きなテーマの一つに取り上げられ、著名なスイスのチューリッヒ工科大学の教授らによる講演もありました。