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コラム小林啓倫

Vol.61 「バーチャルな弓」で操作するドローンスワーム[小林啓倫のドローン最前線]

2022年11月18日
小林啓倫のドローン最前線

進化するドローンスワーム

大量のドローンを一度に操作し、単機では難しいミッションを実現したり、効率的に行ったりする技術「ドローンスワーム(Drone Swarm)」。まさにドローンの一群を「群れ(Swarm)」として活用するものだ。この連載でも何度か取り上げてきたが、その進化が続いている。

Contents
進化するドローンスワームドローンスワームの新たなインターフェース

その代表例が、ドローンを使ったライトショーだ。ドローンに照明装置を搭載、夜中に編隊飛行させてさまざまな絵を描くというもので、いわばドローン一機一機をドット絵のピクセルに見立てているわけである。記憶に新しいところでは、昨年行われた東京オリンピックの開会式において、1824機のドローンを使用したショーが行われた。

こうしたライトショーは、既に珍しいものではなくなっている。中国では実に約5200機のドローンを使用したショーが行われ、ギネス世界記録となっている。また同じく中国において、600機のドローンを使用して26分19秒のアニメーションを実現するという試みが成功しており、こちらもギネス世界記録となっている。

また軍事面でも、ドローンスワームの可能性が模索されている。およそ6年前、本連載のVol.14において米海軍研究事務所の「LOCUST」という研究を取り上げたが、その際に操作されていたのは30機ほどのドローンだった。それだけでも高度な技術なのだが、軍事の分野でも数千機のドローンを同時操作することが目指されている。MIT Technology Review誌が確認した米海軍の公式文書によれば、大型の無人航空機に小型のドローンを多数搭載、作戦空域近くまで空輸して一機に展開し、広域の監視や一斉攻撃を仕掛けるというアイデアが検討されている。

ただしこうした大量のドローンの同時操作は、当然ながらそのオペレーターに大きな負荷がかかることになる。前述のドローンショーのような用途であれば、あらかじめ動きをパターン化してAIに操作させるといった対応ができるが、突発的な判断が要求される用途も多々ある。そのためさまざまな操作方法が検討されているが、いま新たなインターフェースのアイデアが登場している。それは「弓」を使うようにドローンを操るというものだ。

ドローンスワームの新たなインターフェース

これはロシアのスコルコボ科学技術大学(スコルテック)の研究者らが発表したもので、"DroneARchery"(ドローンアーチェリー)と名付けられている。弓を模しているのでアーチェリーというわけだが、当然ながら本物の弓を使うわけではない。アーチェリーが「AR」cheryと表記されていることからも示されているように、これはAR(拡張現実)を活用し、「バーチャル・ボウ」すなわちバーチャルな弓を射る動作をさせるという技術になっている。

オペレーターはVR(バーチャルリアリティ)でも使われるヘッドマウントディスプレイと、装着者の体の動作をシステム側に伝えるデバイス(今回は一対の手袋)を装着し、ドローンを飛ばしたい目標地点を弓矢で射るような動作をする。飛行経路や目標までの距離などは、まさに本物の矢を放つ際と同じ動作で決定される(飛行経路はバーチャル・ボウを構える向き、距離は「弦」を引き絞る右手の位置など)。すると目指した地点に向けて、ドローンが自ら飛んでいくという具合だ。

またオペレーターが装着する手袋はハプティック・デバイス(システム側からのフィードバックを触覚の形で装着者に伝える装置)となっていて、「弦」を引き絞った際の重さが再現されるようになっており、まさに弓矢を射る感覚で体を動かすことができる。また想定される飛行経路は、ヘッドマウントディスプレイ上で点線として示されるようになっており、それが現実世界の光景に上書きされる形で表示される。したがって、こちらは現実のアーチェリーとは異なり、射手が頭の中で思い描いていたのとは違う方向に「矢」すなわちドローンが飛んでいってしまうということはない。

このインターフェースでは、まさに弓矢のように一機一機ドローンを飛ばしたりするだけでなく、決められた一定数のドローンを一斉に狙った目標地点に放つこともできる(その際はAI技術を活用してドローン同士の衝突が回避されるとのこと)。そこでドローンスワームを操るインターフェースとしての研究が進められているというわけだ。

研究代表者であるスコルテックのDzmitry Tsetserukou准教授は、この技術によって「ドローンの操縦経験が無いユーザーでも、数秒でドローンスワームを展開できるようになる」とコメントしている。それはちょうど、「スティーブ・ジョブズがタッチスクリーンとジェスチャーを提唱し、デジタル世界との直感的なインタラクションの概念を根本的に変えた」ときのようなもの、だそうだ。

このバーチャル・ボウが本当にスマートフォンのような革新的イノベーションとして普及するかどうかはまだ分からないが、確かに「弓矢を射る」という動作は、多くの人々にとって直感的に行うことができるものだろう。ドローンの操縦を手軽なものにする新たな発想として、改善が進められていくに違いない。

TAGGED: ドローン, 小林啓倫, 小林啓倫のドローン最前線
Kawase 2022年11月18日
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