ドローンといえば、4Kカメラが搭載されたボディから四方(あるいはそれ以上)に伸びるアームの先に付いたプロペラで空を飛びまわるマシンを思い浮かべることが多くなりましたが、ドローンの定義はご存知のように結構幅広く、世界ではいろんなデザインの研究開発が進められています。大きさや形、空を飛ぶ機構もまだまだイノベーションの余地があり、先日、香港城市大学の研究チームから今までにないデザインをしたドローンが発表されました。
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ジャーナル誌Science Roboticsに掲載された「A bioinspired revolving-wing drone with passive attitude stability and efficient hovering flight(受動的な姿勢の安定性と効率的なホバリング飛行を備えたバイオインスパイアード回転翼ドローン)」というタイトルの論文で紹介されたのは、2枚の薄い羽をくるくると回転させて舞うように飛ぶマイクロ・ドローンで、全体でたった50gしかないという軽さながら、電子機器、バッテリー、ペイロードをきちんと搭載し、24分以上安定したホバリング飛行を可能にしています。設計にあたり開発チームが参考にしたのはMaple Seedsということで、飛んでいる姿を見れば、松林の中を歩いているとたまに頭上から、竹とんぼのようにくるくると旋回しながら落ちてくる種子をすぐに思い出すことでしょう。
@South China Morning Postから引用
といってもこのドローンは種子ほどサイズは小さくなくて、羽の幅は60cmほどあります。ペイロードに対して羽の比率をかなり大きくしていることがまさしく設計のポイントですが、高いところから落下させて発生した揚力を利用するのではなく、バッテリーを使って羽を回転させることで空を飛びます。全体を支えている素材はカーボンファイバーで二枚の羽はポリアミドフィルムでできているため本体だけの重さは35gしかなく、24分以上という最大飛行時間を実現するには、650mAの小型バッテリーを使用する必要がありますが、それでも消費電力は一般的なクワッドロータータイプのドローンと比較して半分ほどに抑えられているそうです。
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@Songnan Bai and Pakpong Chirarattananon
できるだけ飛行時間を伸ばすには揚力が発生しやすくなるよう、羽を効率的に回転させる必要があり、そこは空気力学を応用した3D制御によってコントロールされています。姿勢制御はもちろん、羽の回転数をコントロールすることでホバリングする時の位置制御もきちんとできるようになっていて、そのあたりの詳しい技術は論文の中で解説されています。
論文を全て見るにはメンバー登録が必要ですが、本ドローンについて紹介しているニュースサイトの記事によると、ペイロードにはカメラも搭載することができ、撮影の実験結果も掲載されているとのこと。カメラペイロードは22gの重さのものを搭載でき、実験では4つのカメラを使って4方向を同時に、本体が回転するスピード(スピードレート)に同期させながら撮影することに成功しているようです。
研究者によると、ドローンの設計に関してはまだ改善する必要があるものの、上手くいけば3年から5年ぐらいで市場で発売される可能性があるということです。小型軽量にすることでドローンの大きな課題であるローターの騒音がかなり抑えられていそうなので、静かな場所での撮影にその姿も含めてぴったりとして、人気を集めることになるかもしれませんね。