世界で本格的なドローンの運用が広がり、その活躍の場は水中へも広がっています。昨年末に神戸で開催された海洋科学技術や海洋産業をテーマにした国際コンベンション「Techno-Ocean 2021」では、水中ドローンと呼ばれるUAVやROV(遠隔操型無人潜水機)、AUV(自律型水中探索ロボット)に関する最先端の話題が取り上げられ、新たなビジネスチャンスになろうとしていることが紹介されました。
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Techno-Ocean は、海洋関連分野の最新技術や産業ビジネスへの理解を深めることを目的とした国際コンベンションで、1986年から2年ごとに神戸で開催。主催するテクノオーシャン・ネットワークは、海洋関連分野の専門家を中心に産学官の会員によって構成されています。2021年12月9日から3日間開催された第18回目は、環境問題をはじめエネルギー開発、海洋資源探査から養殖業まで、一般の人たちやビジネス関係者、若い世代も興味を持てるような盛り沢山のプログラムになっていました。特にテーマの一つである海中ロボットを含む水中ドローンの話題は、大きな注目を集めていました。
中でも60近い企業や組織が参加した展示会は、さまざまなタイプの水中ドローンが出展され、どれも見ごたえがありました。小型の水中ドローンの具体的な用途ですが、海底の状態を探索したり、船底を点検したり、沖に設置された生け簀や網の管理、ダムや洋上風力発電の設備の点検など多岐に渡ります。カメラでの撮影に加えてレーダーやソナーなどを使い、いろいろ精度の高いデータを収集できるようになったことで、活躍の場はさらに広がっています。
また、最近では機体が小型化されて扱いやすくなり、価格もだいぶ手頃になってきたことから、レンタルよりも購入されるケースが増えているのだとか。売り上げも順調に伸びているというあたりは、空のドローンと状況が似ているかもしれません。
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ブースを出展していた日本水中ドローン協会によると、ダイバーの代わりに海中や水中で点検や調査作業を行う水中ドローンの市場は急速に高まっていて、2022年には5,800億円規模に成長することが見込まれているとのこと。協会が全国で展開している水中ドローン安全潜行操縦士認定講習の参加者も増加傾向にあるそうです。
スペースワンが出展していたCHASINGシリーズは8基のスラスターで全方向への移動がスムーズにでき、100~150mの水深で作業ができます。4Kカメラをはじめ、レーザースケーラーやマルチビームソナーなどのオプションがあり、細かい作業ができるアームも開発中です。
オリジナルの水中TVロボットを開発するキュー・アイ社のSDQ-101は、コンパクトサイズながら独自のスラスター配置で航行姿勢が安定しているのが特長です。もう一つのDELTAシリーズは水深150~200mで作業できる強度があり、ハイビジョンカメラで撮影した高画質映像を光ケーブル経由でリアルタイムに見ることができます。機体のカスタマイズも可能で、国内メーカーならでは柔軟な対応をしているということでした。
同じく国内メーカーのfulldepth社が開発する産業用水中ドローン DiveUnit 300は、水深300mで作業が可能で、潮流がある中でもホバリングして一定の位置に調整する機能を備えています。PCや通信機器と300mの光ケーブルがセットになっていて、360°カメラや採水機などのアタッチメントもあります。
晶新社が出展していたMARTACが開発するMANTASシリーズは完全自律航行ができる水上USVで、主に港湾のセキュリティや監視、水路マッピングなどの用途で使用されます。展示されていた大型模型は、デザインの美しさもあって来場者の関心を集めていました。
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古野電気社のブースでは、大阪府立大学で開発中の水上探索ドローンのプロトタイプが展示されていました。利用するのは海に近い河ということで、推進性能を考慮したデザインでボディも軽量化し、運用しやすいよう設計しているとの話でした。
水中ドローンは今のところ、見た目のデザインや特徴に大きな違いはないような印象ですが、そこも空のドローンと同じで、市場の成長にあわせてこれから新しいアイデアが取り入れられるのかもしれません。次回のTechno-Ocean は2023年に開催されるので、そこで新しい水中ドローンが登場するのを期待したいところです。