2021年に11月にデビューしたMavic 3ですが、毎月ファームウェアアップデートを重ねて機能の充実を図ってきました。
そして2022年1月23日にフルスペック実装となる大型アップデートがありました。フルスペックとなったMavic 3新機能や、撮影現場実戦投入時のインプレッションをレビューしたいと思います。
- Advertisement -
Mavic 3/Mavic 3 Cineの主なアップデート
主なアップデート内容は下記のとおりです。「マスターショット」「ハイパーラプス」「フォーカストラック」「クイックショット」といったインテリジェント撮影モードが追加されたり、便利な機能強化がされたりと、Mavic 3の活用の幅がさらに広がりました。
12/10アップデート内容
- マスターショット、ハイパーラプス、フォーカストラックをDJI Mavic 3で利用できるようになりました。
- RAW形式での撮影に対応(DJI Mavic 3のみ)
- EXP設定の調整に対応
- 特定の不具合の修正とアプリ全体の品質を最適化
1/23アップデート内容
- ドローニー、ロケット、サークル、ヘリックス、ブーメラン、アステロイドを含むクイックショットを追加。
- 高解像度で撮影可能なパノラマモードを追加。
- バースト撮影機能を追加。
- ノーマルビデオモードにデジタルズームを追加
- D-Logにカラーディスプレイアシストを追加。
- MasterShotsに4K/60fpsとマニュアルEI調整を追加。
- QuickTransferを追加。
- FocusTrackに動画撮影時のズームとD-Logを追加。
- Advanced RTHのRTH高度の設定に対応。
- Mavic 3 CineのデータコピーにUSBモードを追加。
- 色補正の精度を最適化。
- 高倍率撮影時のTeleカメラの画像鮮明度を向上。
- タイムラプス撮影の画像領域を最適化。
- DJI RC ProにクリーンなHDMI映像を出力するためのサポートを追加。
- DJI RC Proでビデオをキャッシュし、外部SDカードにオリジナルビデオをダウンロードする機能を追加。
- DJI RC ProをDJI Air 2Sで使用するためのサポートを追加。
- いくつかのマイナーなバグを修正。
Mavic 3に実装された多彩な新機能
わかりやすい新機能実装として「マスターショット」「ハイパーラプス」「フォーカストラック」「クイックショット」といった自動撮影機能が充実しました。
高画質なMavic 3 で撮影する簡易自動撮影はSNSへの掲載だけでなく、状況によってはシンプルな撮影現場などでも活躍しそうです。
マスターショット
機体の動きからカメラアングル、ズームなど自動撮影技術を駆使して音楽付きショートムービーを作成します。
- Advertisement -
12/10アップデート時のMasterShots。2:26の撮影データを14秒に凝縮!
1/23アップデート後のMasterShots。60pでの撮影も可能になり、ちょっとしたイラスト系エフェクトも。3:17秒の撮影データを28秒に凝縮!
ハイパーラプス
4/3インチセンサーを活用したハイパーラプスは表現の幅がこれまでのものとは段違い。夕日や朝日、色や形の変化などきめ細かい描写で表現します。また、バッテリー1本で実質40分以上飛行できることによってより長い時間ハイパーラプス撮影が可能になりました。
撮影の周期、仕上がり映像の時間、機体の動きなどを設定できる。自動航行中も操縦することで微調整もできる
フォーカストラック
動く被写体に対して、追いかける「アクティブトラック」、機体位置を固定して向きとカメラアングルだけで被写体を捉える「スポットライト」、中心点と半径等を設定して円を描くように飛行する「POI(Point Of Interest)」の3種類はこれまでと変わりませんが、なんとD-Log撮影とズームに対応しました!
さらに、アクティブトラックでは被写体のどちら側から追いかけるか設定できるようになったため、これまでのドローン任せの撮影ではなく、パイロットの意図に近い形の撮影ができるようになりました。
- Advertisement -
中央下部のコントロールパネルでドローンの位置を指定しながら自動で追尾撮影できる。動きはとてもスムーズで、もちろん周辺障害物を検知しながら飛行する。
クイックショット
定番の簡易自動撮影機能も実装。ドローニー、ロケット、サークル、ヘリックス、ブーメラン、アステロイドといった自動撮影を高画質に可能となっています。下記はヘリックスのサンプル映像です。
クイックショットの動きを決めたらターゲットとなる被写体をドラッグして四角く囲むだけ。中央の矢印を選択することで回転の方向も変更できる
※機体が大きく動く場合もあるので周辺に障害物がない環境で撮影することが必須
パノラマ(写真)
静止画についても新機能が実装されています。
お馴染みの「スフィア(球体・360°)」「180°」「広角」「垂直」の複数枚撮影自動合成写真を作成できますが、こちらもMavic 3 の高画質カメラのおかげで今まで以上に楽しめます。
広角
180°
垂直
ほか、14400x7200pxで球体状に360°撮影できる「スフィア」はVR画像として生成することもできます。
ユーザーの声を反映して(?)機能強化!ますまずMavic 3が便利に
アップデートには新機能の実装だけでなく、機能の改善も含まれています。発売当初はいくつか不満が残った機能面についても大幅に改善されました。
EXP設定
当初設定することができなかったスティック感度の調整ができるようになりました。飛行モードごとに設定することもできますので、スポーツモードが過敏すぎるのでもう少しマイルドな動きにしたい…などのカスタマイズが可能です。
カラーディスプレイアシスト
D-Logで撮影しているとD-Logのカラーで表示されるので色補正後のイメージが湧きにくく明るさの微妙な調整などがやりにくかったのですが、アップデートで追加された「カラーディスプレイアシスト」をONにすると簡易的に色補正後のカラーイメージでプレビューしながら撮影することができます。
高倍率撮影時のTeleカメラの画像鮮明度が向上
高倍率時の画像鮮明度が向上しました。今回のレビューでは以前のバージョンと同じ環境で比較できなかったので詳細は検証できなかったのですが、サンプル映像を。ちょっと鮮明になった気もする…?
RC Pro プロポでのHDMI出力にOSDを表示させない選択が可能に!
ライブ配信やクライアントの撮影時同時確認時などに、HDMI外部出力した映像にOSD(DJI FLYのパラメータ情報等)を表示させたくないユーザーはたくさんいるのではないでしょうか。今回(1/23)のアップデートでOSDのないクリーンな映像をHDMI出力できるようになりました。
ほかにも、CINEモデルのUSB接続時に省電力となるモードや、周囲の環境を自動判断して最適なルートを設定するAdvanced RTHに高度設定ができるようになる(自動判断が攻めすぎ(低空でRTHする)ていて怖くなることがありました…苦笑)など、さまざまな便利な機能アップデートが実現していますのでご確認ください。
Mavic 3をしばらく使ってみて感じたポテンシャルの高さ
先日、エアロネクスト社とセイノーホールディングスが山梨県小菅村で社会実装しているドローンも活用した物流実証実験「SkyHub®」プロジェクトでフライトする物流用ドローン「PF-NEXT」を撮影させていただきましたので、現場での利用例をもとにMavic 3をしばらく使ったインプレッションをまとめたいと思います。
D-Log撮影がより手軽に
撮影は5.1k50p/D-Logで行ないました。撮影時は「カラーディスプレイアシスト」を活用して仕上がりをイメージしながらカメラ設定を調整できました。編集時にはDJIより提供されているD-Log用LUTを当てて色補正後、軽く調整をしています。
映像を見るとPF-NEXTにだいぶ近寄って撮影しているように見えますが、実は編集時にクロップ(拡大)したものです。5.1kで撮影しているのでFHD出力した映像では実質的に画質劣化なく表現できました。
Mavic 3の機敏な動きは動体撮影でもいろいろな画角に対応
PF-NEXTは数kmを自動航行で往復飛行します。飛行速度は低空時は5〜7m/s、高高度時は10m/sほどです。Mavic 3は動きが機敏(特に初速が速い)のでいろいろな角度から回り込んで撮影しましたがすぐにPF-NEXTに追いつくことができ、自由に画角を変えて撮影することができました。
RC Proで標準プロポ利用時とレベル違いの操縦感覚
RC Proプロポの処理能力がとても高く、操縦感覚としてはスティックの解像度(入力のきめ細かい反映)がほかのプロポよりも数段細かいように感じます。機敏なMavic 3なのですが、自分の思い通りの動きを描くことができました。
正直なところ、RC Pro以外のプロポではもう操縦したくないレベルの操作感です。HDMI出力端子がMiniとなってプロポ下部にあるのが使いにくい…という声も聞くのですが、写真のようにL字のMiniHDMI⇒HDMIの変換をひとつかませると2つの問題がいっきに解決しますのでお試しください。
探索モード×長時間飛行で利便性大幅向上
数km先の着陸ポイントに消えたPF-NEXTを探索モード(28倍ズーム)を使って探し出すことができたので、帰ってくるPF-NEXTを常に捉えて再度撮影することができたり(探索モードで機体を発見すると、標準モードに戻して1ピクセル程度にしか映っていない機体でも大きく表示され見つけることができました)、PF-NEXTがMavic 3の撮影範囲に戻って来るまでバッテリーを無交換でホバリング待機できたりと、今までできなかったことがかんたんにできてしまうのがほんとうに驚きでした。
4k120pの活用でアクセント撮影も
別の現場では走行するバイクを撮らせていただいたのですが、4k120pで緩急をつけたスピード感を強調した映像を撮影することができました。こちらの現場でもMavic 3の機敏な動きで自由に画角を決めることができ、スポーツや乗り物などの動きの速い被写体の撮影に重宝しそうです。
注意点もちらほら…
いくつか気になっている点もあります。まずは下方ビジョンセンサーのOFFができないこと。下方ビジョンセンサーが誤作動を起こしやすくなる水面近くなど光の乱反射があるような場所や凹凸のある場所の低空飛行時などにひじょうに気を使う、または飛行を諦めなくてはならないことがあります。
これは筆者の個人的な推測ですが、前後ビジョンセンサーが魚眼となり検知範囲が広がったため、下方についても一部カバーしていることに起因しているのではないかと思っています(Mavic 2が垂直70°〜77°、Mavic 3が103°)。前後のビジョンセンサーと下方ビジョンセンサーの両方がOFFになる設定ができると、安全性が損なわれるようでむしろ一定の環境では安全が担保できるかもしれません。
また、障害物回避アクションの設定(「ブレーキ」または「迂回」)も検知範囲が広いだけに適切な設定が必要でした。気持ち的に常時「迂回」に設定して置きたいところですが、狭いところや屋内の角のようにニ面以上囲まれたところではまともに動きませんでした。
低空時も地面の凹凸に過敏に反応しすぎる(勝手に動く)場面がありましたので、基本は「ブレーキ」に設定し、周辺が開けていてまれに障害物があるようなところは状況によって「迂回」を選択しています。
ほかにも、飛行アプリDJI Go4を利用していたユーザーからすると、低電圧アラームがならないDJI FLYのちょっとした改善があるとうれしく思います。
バッテリー残量を確認しながら飛行しているとはいえ、まれに気づいたらバッテリー残量が25%を下回っていた…ということもありました。
このあたりは次回ファームアップデートで改善されることを願います!
とはいえ、ユーザーの表現の幅を限りなく広げるMavic 3。価格としてはこれまでのMavic シリーズと比較すると少し高めの設定になっているものの、筆者個人の感覚としては「お値段以上」のコストパフォーマンスが高い機体だと感じています。ぜひ一度お手にとってご自分の「やりたい撮影」をしてみてください。きっと、驚くほどかんたんにそれが実現できる機体だと思います。