香港初日の出
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香港でのDJIの状況
あけましておめでとうございます。
2021年最初は香港の初日の出からスタートしたいと思います。この日の香港は晴れ、無風というドローンには絶好の条件。7時3分が日の出ということでほんの少し早起きをするだけで撮影できました。
新年、第一回ということでどんな話でこのコラムを始めようか考えましたが、まずは嬉しいニュースを紹介します。なんと2020年の年末になって香港DJI旗艦店でドローン販売が再開されました。こう書くと、それがどうして嬉しいニュースなの?と日本の皆さんには伝わらないと思います。これを理解していただくには約2年前からの香港の状況を理解していただく必要があります。
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2020年は世界中がコロナウイルスで苦しんだ一年でもちろん香港も同様だったのですが、香港はそれに加え2019年からの民主化闘争が続くといったより混乱した一年でした。日本に住んでいる方もYouTube等でこういった香港の映像をご覧になったことはないでしょうか。
2019年のデモが始まった頃はこの動画にあるようにデモや集会を撮影したドローン映像を多く目にしましたが、これに業を煮やしたのか、香港政府は中国からのドローンの輸入を禁止しました。このためわたしは初代Mavic Mini、Mavic Air 2、DJI Mini 2の3台すべてを海外からの並行輸入品で調達することになりました。
ドローン愛好家が非常に多いここ香港でそんな状況が一年以上も続いたのですが、ようやく2020年の年末になって香港DJIスタッフから「DJI旗艦店でドローンを買えるようになったよ!」との嬉しいメッセージをもらいました。
実は香港政府の方針が変わったわけではないのですが、それでも企業努力により販売可能になったようです(ちなみにDJI香港オンラインサイトでの販売はまだ行われていません)。と、ここまでは明るい話題だったのですが、実は2020年12月18日にドローンファン、DJIファンにとって非常に気になるニュースが飛び込んできました。
記事を読むと、新疆ウイグル自治区のウイグル族を監視するためにDJIドローンが使用され、これを人権侵害に関与していると判断した米商務省のEntity List(禁輸措置リスト)にDJIがリストされたということでした。米商務省が出しているこのEntity Listはわかりやすく言えばブラックリストであり、リストされた企業に米国製品を輸出する場合は商務省の許可が必要となりますが、原則的には申請しても却下されるようです。
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このEntity Listに2019年5月に登録されたファーウェイ社は主力製品であるスマートフォンにおいてGoogleが提供するアプリやアプリストアが使えなくなったことで現時点で中国を除く海外では散々な状況になっています。ファーウェイ社のSoC(System-on-a-chip)であるKirinを製造していたTSMC(Taiwan Semiconductor Manufacturing Company, Ltd)とも取引停止となったことで高性能SoCの調達ができなくなったことで更に状況は悪化しています。
こうなると、これまでファーウェイ社をお得意様としていた多くの企業もアメリカ政府の逆鱗に触れることを恐れて同社との取引停止に向かわざるをえないと思います。現時点では、制裁開始前に確保していた在庫で数機種のハイエンド端末を販売できていますが、早晩その在庫も尽きると思われますので、今後MateシリーズやPシリーズといった最上位モデルが製造できなくなる日も近いと考えます。
因みに同じ中国企業であるシャオミー社はGoogleともQualcommとも通常取引をしておりハイエンドスマートフォンを作り続けています。むしろ漁夫の利的に売上を最も増やす可能性があるとさえ思えます。このように先にEntity Listに入れられたファーウェイ社の状況を見る限りDJIにも何らかの影響があると考えるのが当然でしょう。
彼らが使っている半導体、カメラセンサー、製造装置、検査機などを提供している海外企業が今後DJIとの取引をどのように見直すことになるのかが気になります。下の動画はDJIの製造ラインですが、ロボットアームに日系企業名が表示されていますね。
ただ近々大統領が代わります。バイデン大統領はトランプ大統領ほど中国を目の敵にしないと思う反面、人権問題についてはより厳しい態度で臨むと思われます。新大統領がDJIに対してどういった判断を下すのかを注視したいと思います。因みに2021年1月4日時点でDJIアメリカオンラインサイトはこれまで通り販売しています。
私は以前からドローン市場が野中の一本杉のようにDJI一社独占になることは不健全だと言い続けてきたのですが、現在のようなDJIに逆風が吹くなか、Autel、Parrot、Skydioといったドローンメーカーがこの状況をチャンスと捉え、業界全体が沢山の木が生い茂る森のように成長すれば、結果として今回の騒動がドローン業界にとってプラスになると前向きに考えたいです。