小型点検ドローン「Skydio J2」
「Skydio J2」の正式名称は、Skydio R2 for Japanese Inspection。ドローンを利用したインフラ点検ソリューションを提供する株式会社ジャパン・インフラ・ウェイマーク(以下:JIW)と、米国の自動飛行ドローン開発のスタートアップSkydio,Inc.(以下:Skydio)が共同開発した特別仕様の小型点検ドローンだ。
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JIWでは、2020年1月22日から3月31日まで、Skydio J2を点検領域で活用する有償トライアルを実施。今回の飛行は、JIWが7月21日にドローン活用を促進する君津市とまちづくりに関するパートナーシップを締結したことに基づき、実構造物での飛行指導および性能確認のために実施された(場所などの詳細は非公表)。本稿ではこの飛行現場に同行取材し、Skydio J2の性能についてレポートする。
当日飛行したSkydio J2
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JIWと君津市、パートナーシップ協定締結式の様子
Skydio J2の最大の特徴は、機体の上下に3つずつ装備された魚眼レンズだ。1つのレンズが視野角200°あり全てのレンズで360°をカバー。プロペラは、この魚眼レンズを邪魔しないよう、上下に装備されている。
Skydio J2を上方から見た様子
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VISUAL SLAMにより障害物を検知・回避するため、橋の下などの非GPS環境下でも問題なく自律飛行できる。驚いたのは、木の枝などの細い対象物も、きっちり検知したことだ。操縦者の指示に従って上方から下降してきた機体は、「木にぶつかる」と思った瞬間に静止し、その場で自律的に経路を再計算して回避ルートをとった。
Skydio J2をスマホでタッチ操作する様子
Skydio J2は、昨年10月に発表されたSkydio R2を点検用にカスタムした機体で、大きな違いは2つあるという。1つは、障害物回避における対象物との距離。R2では対象物との距離は90cmだったが、Skydio J2では45cmと半分。かなり近接した映像撮影が可能となるため、目視相当の点検として活用できそうだ。また、幅が約1mあれば隙間に入り込んで自律航行できるため、操縦テクニックを問わない。ズームではなくこの距離感を実現している。マニュアル操縦でこれほど近寄るのは勇気がいるかもしれない。
近接撮影した映像の一部(映像提供:君津市)
アプリの「OBJECT AVOIDANCE」で回避距離を選択できる
もう1つのR2との大きな違いは、機首に付いているカメラのジンバルだ。R2では下方90°のみだったが、Skydio J2では上向きに90°、上下ともに180°チルトできる。全方位障害物回避機能で橋梁などの狭隘部に機体ごと入り込み、ジンバルが直上に向けられることで、床版裏や橋梁内部のボルト・ヒビ割れ・塗装等の確認や撮影が可能となる。
アプリの「OBSTACLE AVOIDANCE」で近接表示を選択できる
こちらは、従来のドローンでは難しかった桁間での撮影が可能になったことを示す、映像の一部だ。
桁下から上方を撮影した時の映像の一部(映像提供:君津市)
そこから床版に向かって桁間に入った時の映像の一部(映像提供:君津市)
カメラを水平に戻して桁間を撮影した時の映像の一部(映像提供:君津市)
ちなみに、カメラを上方に向けたまま、機体が構造物下から出てきたときの映像を見ると、きれいな青空が広がっていた。
カメラを上方に向けたまま機体移動させた時の映像の一部(映像提供:君津市)
カメラを上方に向けたまま構造物下から機体が出てきた時の映像の一部(映像提供:君津市)
磁気センサーが搭載されていないため、コンパスキャリブレーションが不要で、撮影現場での磁気干渉も気にしなくてよい。Skydio J2のバッテリーはマグネット装着式だ。また、掌への着陸は非常にスムーズで、静かに下降してくる機体を容易にハンドキャッチできる様子は見ていて安心感があった。
掌へと機体が静かに着陸する様子
一方で、弱点もある。1つは雨だ。カメラに水滴がついてしまうと、障害物回避および経路計算が正確にできなくなるため、その場で着陸してしまう。また、真っ暗なところでは飛行不可能となるため、トンネルなど暗所での点検には不向き。点検現場では、適材適所を判断し、活用することが求められるだろう。
当日は、「これまでのドローン点検は、“ドローンを飛ばしている”感覚で緊張感があったが、Skydio J2は、“カメラを見ている”感じだった」という操縦者からのコメントもあった。非GPS環境下における高精度な自律飛行と、上方カメラチルト機能を備えたSkydio J2の登場により、ドローン運用の概念が大きく変わりそうだ。