CES 2020ではBell Nexusが2年連続でプロトタイプを出展
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人を乗せて空を移動する「エアモビリティ」を開発する動きが世界で加速しはじめています。日本では「空飛ぶクルマ」と称して、2018年8月から経済産業省と国土交通省が合同が「空の移動革命に向けた官民協議会」を開催しています。すでにロードマップも発表されていて、2019年には試験飛行および実証実験開始を目標としているとあり、「空飛ぶクルマ」の開発・製造・販売を行うスタートアップ「SkyDrive」が2019年12月に日本初の有人飛行試験を開始したと発表しています。
先日ラスベガスで開催された「CES 2020」でもエアモビリティの話題は想像以上に多く、昨年に引き続き「Bell Nexus」がプロトタイプを展示。さらに韓国の自動車メーカーHyundai MotorがUber Airと提携してエアモビリティ市場に参入することを発表し、会場では開発モデル「S-A1」を含むエアモビリティサービス「Uber Elevate」の概要やVR体験コーナーを展示して、来場者の注目を集めまくっていました。
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自動車メーカーのヒュンダイはUber Airと組んでエアモビリティ市場への参入を発表
機体にはUberのロゴが大きく入っている
さらにさらに「Toyota Woven City」を発表して大きな話題になったトヨタはCES終了後になって、空のモビリティの実現に向けて電動垂直離着陸機(eVTOL)の開発・生産をJoby Aviationと協業することを発表しています。前述のロードマップで2023年を目標に事業をスタートするというエアモビリティ市場が、いよいよ実現味を帯びてきたと言えます。
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トヨタが協業を発表したJoby AviationのeVTOL機
移動より空を飛ぶ楽しさを求める
事業化に向けて盛り上がりを見せているエアモビリティですが、今のところ実用性優先のためかなのかセスナのような小型機やヘリコプターをベースにしたような、わざわざ乗ってみたくなるようなのデザインが見当たらないのは残念なところ。
CESの会場ではフランスのスタートアップ「eenuee」が19人乗りのハイブリッドモビリティを展示していましたが、デザインに関してはまだアイデアレベルというところ。起業の目的も、バッテリーと水素燃料電池のハイブリッドエンジンで環境を守りつつ、ポイントツーポイントの中距離(1800kmを想定)を移動するモビリティの開発なので、実用化が進むにつれて従来の飛行機と同じような形に落ち着くのではないかと想像してしまいます。
eenueeの斬新なデザインは実用化というより話題作りのためという印象
そうした中で、デザインも技術も最も目を引いていたのがエアロネクストの空飛ぶゴンドラ「Next MOBILITY」です。CESのメディア向けイベントのUnvailedとエウレカパークエリア内にある、経済産業省のスタートアップ企業育成支援プログラム「J-Startup」のコーナーに展示されていた1/3スケールのモデルは、遊園地のゴンドラ部分とVTOLを組み合わせてそのまま空を飛ぶというデザインで、あまりの斬新さゆえに夢のアイデアにしか見えないほどです。
エアロネクストは空飛ぶゴンドラ「Next MOBILITY」をCES 2020に出展した
「Next MOBILITY」のイメージイラスト
もちろん、空を飛ぶという技術では徹底的に合理的な考えが採用されていて、多くのエアモビリティスタートアップが移動に着目しているのに対し、移動の安全性と快適性というモビリティの原点とも言える機能に対し、独自の技術でイノベーションをもたらそうとしています。
一つは、重心制御技術「4D GRAVITY」で、離陸から飛行、着陸まで常にゴンドラ部分が大きく揺れることなく安定させることができます。もう一つはVTOL向けの重心制御技術「ティルトボディ」で、VTOLの課題とされている離陸から水平飛行への切り替えによる失速という課題解決につながる技術にもなっています。その上で空からの景色を安全で快適に楽しめるデザインが追求されていて、その点についてはさらにこれから斬新なアイデアが出てくるかもしれないという期待感があります。
エアモビリティによる遊覧飛行サービスは、飛行エリアが限定されるため許可も得やすくエンターテイメント性も高いところから、移動手段よりも先に実用化が進むのではないかという声もあります。ディズニーがXウィングモデルのエアモビリティの開発を進めているというニュースが昨年末に出たこともあり、今までにないユニークなデザインのエアモビリティに乗るという、夢のようなアトラクションが近いうちに実現するかもしれません。何よりも空を飛んでいるのを見るのが楽しくなるような、そんなデザインがもっと登場してほしいものです。