先日、突如として発表されたPhantom 4 Pro(Ver.2.0)の再生産。しばらくコンシューマー向けのDJI空撮機はMavic 2がフラッグシップ機としてラインナップされていたものの、Phantomシリーズが好き…という方も多かったのではないでしょうか。実にPhanto4が発表されたのが2016年。
発売から3年(ドローン業界で3年という年月は、古代と現代ぐらいの格差が)を経て、今尚愛されるPhantom 4 Proの秘密は何でしょうか?
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また、最近ドローンを始めた方の中には、なんで今さらPhantom 4 Proが出てくるの?…と疑問を持たれる方もいるかも知れません。一言で言えば、かつての名機が再販されるこの事実自体がPhantom 4 Proの完成度が高いという事実を裏付けています。そこで今回は、改めてドコがいいのか?をおさらいしたいと思います。
レッグの付いた流線型フォルム
まず一番の特徴は大きなレッグがついた流線型デザインとホワイトのカラーリングです。厚みが薄いMavic 2に対して表面積が大きくかさばるPhantomシリーズは、実はフライト時に非常に機体を見やすくなっています。Mavic 2はよくも悪くも薄いフォルムかつグレーのカラーリングなので、撮影現場でフライトしていると背景が岩場や森林の飛行環境ではすぐに見失ってしまうことが多々あります。Phantomであれば、レッグも含めると立方体に近い表面積を持っており、カラーリングもホワイトなので上記のような飛行環境でも見失うことはそれほどありません。
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また、スペック表のエビデンスがないので感覚的なお話になってしまうのですが、立方体的なデザインによる重心位置のせいなのかシステム側の設定の味付けの違いなのか、機体を傾けたフライト(コーナーリング)もスムーズ(Mavic 2は水平に戻るチカラが強い)に感じます。加えて、Pモードにおける加速もPhantom 4 ProのほうがMavic 2 Proよりも速いようです。筆者はクルマやバスなどを撮影することがあるのですが、スピードの速い被写体はPhantom 4 Proでないと追いつかないことがあります(Sモードのスペック上の最高速度は同じ)。
Phantomシリーズは根強いファンも多い。歴代Phantom4シリーズ(左)と初代Phantom(右)
ATTIモード搭載のPhantom 4 Pro
何よりの動作での違いは「ATTIモード」スイッチの有無となります。ATTIモードとは、GNSS(GPSなどの衛星を活用した測位システム)やポジショニングセンサーからの測位情報をカットする飛行モードです。測位情報がないため風や慣性によって機体が流されてしまうのですが、ドローンスクールや自主練習などでは操縦技術向上のための訓練やスムーズな飛行のために敢えてATTIモードでフライトするということがあります。
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また、GNSS感度が低いエリアでは通常のPモードでは飛行高度に制限がかかるのですが、ATTIモードに変更するとそのようなことがありません(もちろん測位情報は失われるので常時機体を目指しながら慎重に操縦する必要があります)。GNSS感度が低い滝壺や渓谷などでは、ATTIモードで離陸して高度を上げることでGNSSの電波を取得させることもできます。
ATTIモードスイッチがないMavic 2は、GNSS感度が低いエリアでは強制的に飛行高度制限がかかってしまうことがあるほか、GNSS感度が中途半端にあるエリアではPモードとATTIモードが勝手に切り替わってしまうというちょっと操縦しづらい状況に陥ることがまれにあります。そういった点では、意図的にPモードとATTIモードを切り替えることができるPhantom 4 Proは便利な側面があると言えるでしょう。
ただ、Mavic 2 EnterpriseのファームウェアアップデートでATTIモードに切り替えることが意図的にできるようになったので、もしかしたらMavic 2 Proでも意図的にATTIモードに切り替える機能がファームウェアで提供される日が来るかもしれませんね。
同じ1インチセンサー搭載カメラでもMavic2より高スペック
カタログを見ると、Phantom 4 ProもMavic 2も1インチセンサーの高画質カメラを搭載しています。しかし、スペックは微妙に違うのをご存知でしょうか?カメラの性能差も非常に大きなポイントとなります。
カメラスペック比較
Phantom 4 Pro | Mavic 2 Pro | |
センサー | 1インチ CMOS(20MP) | 1インチ CMOS(20MP) |
レンズ | 24mm(35mm判換算) 視野角:84° |
28mm(35mm判換算) 視野角:77° |
ISO感度 | 動画: 100~3200 (オート) 100~6400 (マニュアル) 写真: 100~3200 (オート) 100~12800 (マニュアル) |
動画: 100~6400 写真: 100~3200 (オート) 100~12800 (マニュアル) |
動画撮影モード | H.265 C4K:4096×2160 24/25/30p 4K:3840×2160 24/25/30p 2.7K:2720×1530 24/25/30p 2.7K:2720×1530 48/50/60p FHD:1920×1080 24/25/30p FHD:1920×1080 48/50/60p FHD:1920×1080 120p HD:1280×720 24/25/30p HD:1280×720 48/50/60p HD:1280×720 120p @60Mbps H.264 |
H.265 / H.264 4K:3840×2160 24/25/30p 2.7K:2688×1512 24/25/30/48/50/60p FHD:1920×1080 24/25/30/48/50/60/120p |
動画最大 ビットレート |
100Mbps | 100Mbps |
まず、Mavic 2にはない4K 60fpsで撮影が可能です。コレだけでも「ほしい〜!」という方も多いかもしれません。
注目すべきは、Phantom4 PROはMavic 2にはない歪みが少ないグローバルシャッターを実装しています。グローバルシャッターとは、イメージセンサーのすべての素子が同時にスキャンして画像として記録する方式です。一方、Mavic 2はローリングシャッターという、イメージセンサーの素子が上の辺から下の辺に向かって順番にラインでスキャンして画像として記録する方式です。イメージセンサーの上部と下部で僅かですが記録の時間差が生まれる(コピー機やスキャナーがセンサーを移動させながらスキャンするイメージ)ことによって、スピードが速い被写体などで歪みが生じます。下記の動画はスマホで電車内から風景を撮影したものですが、ローリングシャッター現象(歪み)がわかりやすく出ているので見てみてください。
さらに、Phantom 4 ProとMavic 2 Proを使っていて気づいたことなのですが、ISO感度を上げたときにMavic 2 Proには少しノイズが入る(通常ISOを上げると画面が明るくなるがノイズも多くなる)場合でも、ノイズが少ないきれいな映像を保っています(ISO1600以降に差が出てきます)。これは夜景を撮影したり、少し暗い環境で撮影をせざるを得ないときに大きなアドバンテージになります。
※ISO以外は…4K 30P・SS1/30・f/2.8・色温度5600Kで固定して撮影
ISO1600あたりだと空にノイズの差が僅かだが出始める
※画像をクリックすると拡大します
ISO3200まで上げると空のノイズに差が出る
※画像をクリックすると拡大します
ISO800〜ISO6400をPhantom 4 ProとMavic 2 Proで比較
Youtubeにアップした映像でどこまで見えるかわからないのですが、このノイズ量の差は中間色的な明るさのエリアに顕著に出ます(空の地表近くで明るくなっているところなど)。筆者が特に差を感じたのはイルミネーションの撮影用のような、夜景なのですが画面としては少し明るいシチュエーションです。
ただ、Phantom 4 ProにはなくてMavic 2 Proにはあるカメラの特徴として、Hasselbladナチュラルカラーソリューションによる自然で美しい色合いの写真・映像が撮れます。実際に使っていると同じ場所を同じ設定で撮影しても、Mavic 2 Proの色合いはとても美しいと感じます。上記の比較映像でも設定は全て同じなのですがMavic 2 Proの色合いは美しく感じますね。筆者の使い方としては、昼間の撮影はMavic 2 Pro、夜景はPhantom 4 Pro(またはInspire 2)という使い分けをすることがあります。
やはりこだわるならPhantom 4 Pro、使いやすさならMavic 2 Proで決まり!
一時期、「もう、全部Mavic 2 Proでいいんじゃないか?」説が一部のユーザーの間でありましたが、やはり突き詰めていくとPhantom 4 Proの必然性があります。
画質を求めたい、動きを求めたい…という方はPhantom 4 Proを購入するほうがよいでしょう(Phantom 4シリーズのバッテリーを大量に持っている方も含む)。
逆に、撮って出しで高画質ならいい、持ち運びなどの利便性を重視したい…という方はMavic 2 Proのほうが良いかもしれません。
ちなみに、撮影の際に移動が多い筆者はいつもまにかMavic 2 Proがメインの機体になっていますが、夜景や画質を求める現場ではPhantom 4 ProやInsipire 2などの機体を使うなど、状況に応じて使い分けています。撮影される内容に応じた機体の選択がとても重要です。どちらを買うかを悩む時間も楽しいもの。ぜひそんな時間をお楽しみください!