ドローン市場は空撮から点検、宅配、そして都市の移動手段として本格的な運用が進み、展示会の一カテゴリから抜け出して専門イベントが世界各地で開催されるようになっています。ビジネスとして実務的に運用するには安定した機能が必要なのか、新しいデザインやアイデアを目にする機会は残念ながら減る傾向にあり、フライトシステムや運用管理といった専門的な話が中心になっています。
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これまでドローンを目玉にしていた展示会からもブース出展は減り、先日ベルリンで取材した国際デジタル技術見本市のIFAでは、ドローンメーカーはDJIのブースがかろうじて残っているという状態でした。
他にはスタートアップが集まる「IFA NEXT」というエリアには、親指で操作できるShiftと、日本から20社が出展するJAPANパビリオンにエアロネクスト社のフライングロボットとSkyDrive社が出展していましたが、飛ばして楽しむトイドローンはほぼ見かけなくなりました。
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IFAのDJIブースは毎年ほぼ同じようなシンプルなデザインをしている
スタートアップが集まる「IFA NEXT」に出展していた親指で操作するドローン「Shift」
「IFA NEXT」のJAPANパビリオンに「エアロネクスト」と「SkyDrive」が出展していた
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そんな感じで表向きにはトーンダウンしているかに見えるドローンですが、今年のIFAでは意外なところでドローンが話題になっていました。それは、昨年からIFAで併催されているモビリティをテーマにしたカンファレンス「SHIFT Automotive」で、30人以上のスピーカーによるトークやパネルディスカッションで構成されるプログラムの中でした。
今回はMaaS(Mobility as a Service)に携わる企業や公共機関が数多く登壇していたのですが、自動車、公共交通、シェアバイクを組み合わせた都市におけるハイブリッドな移動手段の一つとして、空の移動もそう遠くないうちに含まれるだろう、というコメントがいくつも出ていました。
昨年からIFAで併催されているモビリティをテーマにしたカンファレンス「SHIFT Automotive」
実際、昨年から今年にかけてドローンタクシーの実用化が進んでいて、世界的に活躍する大手デザイン会社の間でも空のモビリティをデザインする依頼が増えているようです。たとえば、以前に紹介したドイツのVolocopter社が開発しているVolocopterのポートをデザインしているGRAFT Labは、「都市の移動は時代によって大きく変化しているが大事なのは環境にあわせた方法を取り入れること。空の移動も含めた街全体を設計デザインしている」と言います。
また、自動運転車のデザインを手掛けるイギリスのLead Automotiveも空のモビリティを今後の対象にしていきたいという話をしていて、テクノロジー・アナリストのMelba Kurman氏もモビリティのデザインはこれから本格的に始まるだろうと予測しています。
GRAFT Labが手掛ける「VOLOPORT」のデザインアイデア
ダイムラーの子会社でコンパクトシティカーを製造するSmartは今後発売する車両を全てEV化し、その上で街全体の移動をトータルに提供するSmart freeshareというサービスを開発すると発表。
イメージビジュアルの中にはドローンタクシーも含まれていて、他にもBMWグループや富士通の関係者からも同様のコメントをしていたことから、自動車メーカーの中でも空のモビリティの実用化がそう遠くないことを想定していることがわかります。
自動車メーカーのSmartが描く都市の移動風景
ドローンタクシーが普及する、あるいは自動車が自律して空を飛ぶという現実に対し、AUVSI(無人車両システム国際協会)が対応を始めているという話もありました。無人システムおよびロボット産業を促進および支援することを目的とした国際的な非営利団体は、Teslaの自動運転システムの検証なども行っていますが、エアバスのeVTOL機 A3 Vahanaが昨年1月に実機飛行テストを成功させた頃から人が乗るドローンにも対象を拡げているということでした。
具体的にはドローンの安全性を確保するために衝突防止機能はどうするか、パラシュートは必要か、事故が起きた場合の管轄はどこにするか、といった議論が行われているそうです。安全基準のレギュレーションはドローンの開発やデザインにも影響するだけに、どのタイミングでどんな発表があるかAUVSIの動きにも注目しておきたいところです。
AUVSIではドローンの安全基準を決める議論をすでに始めている
IFAでは展示内容に制約があるため、CESのようにドローンタクシーのプロトタイプを展示することはできないそうですが、もう少し実用化が進めば、デザインコンセプトやアイデア展示などが見られるようになるかもしれません。今後、ドローンのデザインがどのような場で発表されるのか、これからもウォッチし続けたいと思っています。