3D Robotics(以下:3DR)はDJI Phantomの白い機体に対抗するかたちで、黒い機体のSOLOを開発し、販売展開したが、最初の商戦であった2015年のクリスマス商戦でDJIに完膚無きままにやられてしまい、その在庫処理に追われて大規模なリストラを強いられることになった。3DRは、SOLOの後継機を開発するための資金も人材も失い、ドローンのハードウェア開発から撤退を余儀なくされた。
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その後3DRは、ビジネスの中心を業務活用サービスにシフトしていくという宣言して、2016年3月にはAutodeskおよびSonyとの提携を発表した。その内容は、「3D Roboticsは、AutodeskとSonyと共にSOLOが飛行中に特定の面積や構造の空撮を行い、そのマップや3Dモデルをクラウド上にアップロードできるように進化させる」かたちで、SOLOをベースに空撮しながら、建設業やエンジニアリング向けに3Dモデルを提供していくサービスであった。
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そのサービスは、ドローンによる空撮からクラウドでの処理、3次元データ提供まで統合された「Site Scan」となった。提携から1年を経て2017年5月にはシリーズDラウンドで資本金5,300万ドル(約55億円)を調達し、発表した。これにより3DRは、Site Scanというドローンサービスを拡大展開していく企業になった。
この資金調達を受け、3DRはドローン産業というビジネスレイヤーにおいてその中心に戻ってきた。それは3DRのCEOでドローン業界を牽引する一人であるクリス・アンダーソン氏の久しぶりの長文の投稿でもある、ハーバードビジネスレビューの「Drones Go to Work」でも明らかだ。
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アンダーソン氏は、空間スキャンサービスとしてのドローンの可能性とその業務活用において、詳しく解説しているとともにその技術が「Cool」だけでなく、それがより実現に対して使いやすくなっていくことの重要性を強調している。
このSite Scanというサービスを拡げる上で重要になってくるのは、明らかにそのドローン機体の拡張戦略であった。いわばSOLOの後継機の開発を行わない方針に対して、再度後継機開発を行い、ハードウェア製造を行うのか、それとも別の機体での動作を拡げていくかを決めなければならなかった。
現在、別の機体という点で一番合理的なのは、世界での市場シェア70%以上を握るDJI機体への対応であった。その選択肢の中で極めて合理的な判断をしたのだ。3DRは2017年8月1日、業務向けプラットフォームを、DJIのドローンに統合していくことを発表した。
これは各国のメディアでも大きく取り扱われた。またそれはアンダーソン氏が趣味のユーザー向けに、コミュニティ「DIY Drones」を開いてから10年が経過し、DJIの圧倒的勝利となったコンスーマーの時代を経由し、第三の波としての業務活用の時代が本格化されたことを意味づけるものだ。
けれどもDJI機への対応というものは、DJIがSDK(Software Development Kit:開発者用キット)を2015年に展開し始めてから動いてきている流れであり、2016年も土木・建設向けサービスのSkycatchや、農業向けサービスのPrecisionHawkなどが、自社機体向けのアプリケーションソフトをDJIに移植してきた。
ここから、3DRがこのドローンサービスの中で一定のポジションを掴んでいけるのかどうかは、これからの製品戦略やカスタマーニーズをどう受け入れていくかにかかっていくだろう。けれど3DRが戦略の大幅な転換により、再出発を遂げたことは間違いない。
蛇足になるが、SOLOの今後についても新たな動きがあったので記しておきたい。DJI機体と「SiteScan」の統合が発表された次の日の8月2日、3DRからSOLOのソフトウェアのソースコードが開示されるという発表があった。
そして、元々Dronecodeプロジェクト配下で共に進んできたArduPilotプロジェクトは、新たなイニシアチブ「Open Solo」の創設を発表した。これにより既存のSOLOユーザーにとっては、現在多くの革新的な技術をArduPilotプロジェクトは進めているが、その技術を含む確立されたコードベースをSOLOに対して維持し、改善できる。
また開発者は、コントローラを含むSOLOのほぼすべての部分を把握し、改善できるようになる。現在のオープンソースコミュニティにとっては、3DRが独自に開発をしたSmartShotsなどの技術を取り込むことが可能になるということだ。このSOLOという汎用機体も再出発となり、今後どのように変化していくのかも注目だ。