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編:インプレス総合研究所
著:春原久徳、株式会社CLUEインプレス総合研究所「ドローンビジネス調査報告書2017」
インプレス総合研究所から、3月に「ドローンビジネス調査報告書2017」が出版され、この本を主執筆した。
これでこの調査報告書の執筆は2年目となるが、今回も30社程度のドローン関連会社を取材し、1年間の進捗も含めて様々なことが明らかになってきた。
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国内のドローン市場規模
出典:インプレス総合研究所「ドローンビジネス調査報告書2017」
2016年度の日本国内のドローンビジネスの市場規模は353億円と推測され、2015年度の175億円から178億円増加している(前年比102%増)。2017年度には前年比51%増の533億円に拡大し、2022年度には2,116億円(2016年度の約6倍)に達すると見込まれている。
全体の数字に関して、昨年の報告書を発表した時点では、2016年度は199億円とみていたので、その数字を150億円程度、上振れとなった。また、それに合わせ、2020年度も1,138億円としていたが、今回は1,423億円としているので、これも上方修正をかけている。
分野別に見ると、2016年度はサービス市場が154億円と43.6%を占めており、機体市場が134億円(38.0%)、周辺サービス市場が65億円(18.4%)である。各市場とも今後も拡大が見込まれており、2022年度においては、サービス市場が1,406億円(2016年度の約9倍)、機体市場が441億円(2016年度の約3倍)、周辺サービス市場が269億円(2016年度の約4倍)に達する見込みだ。算出のポイントとして、項目は、機体、サービス、周辺サービスに分けている。この内容を細かく見ていく。
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機体市場
機体市場は、業務用(固定翼および回転翼)の完成品機体の国内での販売金額。軍事用は含まない。ここで業務用の完成品機体にどの製品が含まれているのかというのは、各調査会社において、キーポイントの一つになる。完成品機体の売上という観点で捉えた場合、日本においては、DJI製品を含むのか含まないのかという判断が数字を形成する意味において、非常に大きな要素になる。
DJIは、明確に数字を出していないが、様々な情報を掛け合わせると、月間3,000~4,000台の完成品機体を現在販売していると推察され、このDJI製品を含むのか含まないのかは、数字を大きく左右するものとなっている。
産業用途という観点から、DJIへのインタビューや国交省への申請許可状況、ドローンサービス事業者の状況を勘案し、今回、DJI製品に関して、Phantomシリーズ、Inspireシリーズの完成品機体は売上に含み、新しく発表されたMavic Pro含まないという判断をしている。
2016年度の特長といえば、農林水産省が農薬散布用ドローンに関するルール作りをしたということもあり、農薬散布用のドローンの台数が拡大した。これは2017年度以降も期待される分野だ。
サービス
サービス市場は、ドローンを活用した業務の提供企業の売上額。ただし、ソリューションの一部分でのみドローンが活用される場合は、その部分のみの売上を推計。公共団体や自社保有のドローンを活用する場合は、外部企業に委託した場合を想定し推計している。
同サービス市場の算出は、13の大分類に分け(農林水産業、土木・建設、空撮、搬送物流、防犯監視、点検、倉庫工場、鉱業、計測・観測、保険、エンタテインメント、通信、公共)、その中での活用環境(市場可能性や浸透スピード、技術状況)といったものを勘案して行っている。
例えば、農薬散布を例に挙げると、のべ面積で108万haの水田を中心とする圃場で、産業用無人ヘリでの農薬散布が行われている。ここでの農薬散布の作業費というものを、サービス費用として売上算出をしている。同様に各業種での活用環境(自治体数、道路工事件数、橋梁・トンネル数、メガソーラー件数、水田耕作地面積、工場・倉庫数など)を鑑みて、数字を積み上げて作成した。
出典:インプレス総合研究所「ドローンビジネス調査報告書2017」
サービス市場は、2016年度は、農薬散布や空撮市場に加えて、土木測量、メガソーラー検査の市場が動き出した。2017年度のその立ち上がってきた市場が拡大していく。また、2018年度以降は、測位技術(屋内含む)やセンシングカメラ技術などドローン関連技術の開発・研究・実用化が支えとなり、インフラ点検などの検査や、防犯、精密農業、物流、公共(災害調査)などの様々な分野でドローンが活用されていくことを推察し現況や課題、今後の展望を細かく洗い出し、数字を積み上げている形になっている。
周辺サービス
周辺サービス市場は、バッテリー等の消耗品の販売額、熱赤外線やマルチスペクトラムカメラ等の各種カメラ、定期メンテナンス費用、人材育成や任意保険の市場規模を示している。こういった周辺サービスは、ドローン活用の市場とともに、対ドローン対策なども広がっていきながら、今後、現状の予測以上にその伸び率が上がっていくものと思われる。
■ドローンビジネスのロードマップ
出典:インプレス総合研究所「ドローンビジネス調査報告書2017」
2016年度までを「黎明期」、2017~2019年度を「普及期」、2020年度から「発展期」と分類している。それを業務利用、機体・周辺、技術、国・行政の要素に分けて、市場予測を行っている。2017年度は「普及期」にあたる元年となるが、そのきっかけとなるのは、現在の実証実験のフェーズから実活用へと移行の動きである。その移行の動きが進むと考えられるのは、以下の分野だ。
1:設備点検
大きな構造物の屋根や高所の点検に関しては、技術上の課題が克服されてきており、2017年には本格稼働する可能性の高い分野だ。検査のため撮影した場所を3次元構造物に合わせ込む技術も必要になってくるが、これもIT関連企業の開発により進捗があるだろう。
2:インフラ点検
橋梁やトンネルといったインフラの老朽化が日本では進んでいる。2014年に国土交通省は、2m以上の橋とトンネルを5年に1度の近接点検の義務化の省令を出した。2m以上の橋は70万に及ぶが、その点検の進捗は緩やかだ。3年前より、ドローンを含むロボットでの点検の研究・実証実験がなされてきた。ドローンは橋の下のようなGPSが届きづらい環境では測位や安定の維持が困難であったが、非GPS環境化での技術が進んできている。設備点検の中で開発されるであろう撮影ポイントの、構造物への合わせ込み技術が応用されるだろう。
3:リモートセンシング
田畑や山林といったエリアでのドローンのリモートセンシングを行い、生育状況や害獣などを把握する動きが、拡がってきている。今後、農業の産業化の流れに伴い、農作物の管理や状況をそのリモートセンシングにより得た情報を情報システムに取り入れる動きが出てくるだろう。
また、害獣対策における野生動物の生態把握に関しても、サーマルカメラでの実証実験が各所で行われてきているが、今後そのソリューションがシステム化していくことで活用が拡がっていくだろう。
4:災害調査
地震や水害が起こった後の、災害状況の把握や早期の復旧に向けて、ドローンでの空撮調査が効果的であることが分かってきた。各自治体での災害協定の締結など進んできているが、今後、自治体でのルール作りやその地域での体制作りをどうしていくかが重要である。
5:遭難救助
2016年10月に「Japan Innovation Challenge 2016」といった遭難救助を対象にしたコンテストを始め、様々な実証実験を通じ、遭難救助の課題が浮かび上がってきている。今後はその課題を自動航行や発見のシステム化が進むなかで、実際の現場での活用が進んでくるだろう。
6:緊急搬送
搬送に関しては、多くの実証実験が行われてきた。その安全性とコストに向けて、まだまだ改善点が多いが、その課題の克服も進んできており、2017年度には山間部や離島における緊急搬送を中心に、次の段階に進んでいくだろう。
また、非GPS環境下、特に室内での測位・安定に関して、研究開発が進んできており、2017年は、室内での実証実験が進み、倉庫や工場での活用のためのロードマップが描かれるであろう。