大きな盛り上がりを見せたUAE Drones for Good Award
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ドバイ・インターネット・シティの会場にて
前回お届けしたドローンタクシー発表のニュースがあったドバイでのWorld Government Summit(世界政府サミット)が開催された週末には、同じくドバイにあるインターネットシティにてドローンテクノロジーを活用した社会課題解決のソリューション開発・研究を対象にしたアワード「UAE Drones for Good Award(2月17日・18日)」が開催された。
今年で3回目を迎えるこのイベント、世界中からの応募の中から最終選考に選ばれ出場したのは国際部門と、UAE(アラブ首長国連邦)国内部門各10チームの計20チーム。いずれもユニークなアイデアの中から、国際部門では通信インフラの世界企業NOKIAによるNokia Saving Livesチームが優勝、賞金100万USドル(約1億1000万円)を獲得。UAE国内部門ではドローンの教育機関Sanad Academyが選ばれ、こちらは100万ディルハム(約3000万円)を獲得した。ドバイ皇太子の参列や賞金額の魅力もあり、イベントは大きな盛り上がりを見せた。
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世界中から1000以上のプロジェクトがエントリー
参加チームによるデモンストレーション
ドバイ政府主催により2015年に始まったこのイベントも、今回で3回目を迎える。2日間にわたり行われたイベントの初日は、併催されているAIとロボティックスを対象としたAI&Robotics Awardが、2日目はこのDrones for Good Awardが開催された。世界中から1000以上のプロジェクトがエントリーされた中から、最終選考に選ばれた国際部門とUAE国内部門の全20チームが、8人の審査員と観客の前でプレゼンテーションとデモを行う形式で、審査の内訳は、事前審査50%、会場プレゼンテーションが15%、そして会場でのデモンストレーションが35%となっている。テクノロジーによる社会課題解決をテーマに掲げており、最終選考に選ばれた各チームからは自然災害対策や地雷除去、難民救助など、現在世界的な課題となっているテーマに対するソリューションとテクノロジーの提案が見られた。
優勝賞金は1億1000万円!
優勝したNokia Saving Livesチーム
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その中でも、我々日本人も他人事とは言えない自然災害対策に向けたソリューションも多く見られたが、国際部門で優勝したNokia Saving Livesチームはその実現性が評価された模様だ。自然災害などの際に一番に懸念されるのがインフラ網の破壊であり、現代において通信網は大きなライフラインの一つ。Nokia Saving Livesチームは、バックパックにも入る小型のLTEネットワーク「ウルトラ・コンパクト・ネットワーク」をドローンに搭載して臨時の通信網を構築、それを経由してドローンによるカメラ映像や赤外線映像をコントロールセンターに送り、独自に開発したアプリケーションを通じてそれらのデータを分析、素早い救助判断を下し実行に移すというソリューション。
将来的にはヒューマンオペレーションの部分もソリューションの一部に組み込んで開発、提供していくとしている。会場でのデモの的確さは世界有数の企業であることを印象付け、ドローンの航空管制システムの開発などドローンを活用したテクノロジーや、ソリューションに力を入れている姿勢を感じさせる。また、UAEとはドローンを活用したインフラ点検の分野で提携していることもあって、そう言った面も評価に影響を与えたのかもしれない。
UAE国内部門で優勝したのはドローンの教育機関
UAE国内部門で優勝したSanad Academy
一方、国内部門で優勝したのが水難救助に新しいソリューションをもたらすSanad Academyチーム。Sanad Academyはドバイにおいてドローンのオペレーターを育成する機関であるが、今回エントリーしたのは、浮き輪型水陸両用のドローン「Smart Ring」を活用したソリューション。
独自に開発したこの浮き輪型のドローンが迅速に救助に向かい、加えて複数のドローンが相互に連携してそれぞれの位置関係などから救助に対する役割分担などを分析、複数のロケーションでも時間ロスを最小限に抑えた素早い救助を実行する。こちらも国際部門とまではいかないが、3000万円という破格の賞金を獲得した。
ドローンで様々な分野のソリューションを
2日間のタイムスケジュール
そのほか興味深いエントリーが目白押しであったが、筆者が個人的に気になったのはNASAのエンジニアも参加し、ドローンで土地のマッピングやデータ解析、そして実際に植樹を行い森林破壊へのソリューションを提案するBioCarbon Engineeringチームと、ドローンにより地雷の探知と除去を試みるオランダのMine Kafonチームは、アフガニスタンからの移民の二人を中心としたチーム。
そしてUAE国内部門では、17歳の高校生が提案するFireFlyが印象的だった。こちらのソリューションは、AIとコンピューター制御のカメラプラットフォームをドローンに搭載、火災現場で救助を必要とする人を先回りして探し出し、消防士と連携して消防活動を効率的に行えるソリューション。このプラットフォームを量販型のドローンにも搭載可能にすることを目指している。
来年は日本からもエントリーと受賞者を期待
ここ数年、世界中で拡大するドローンを活用したソリューションであるが、世界中からの情報とアイデアの共有により今後も加速するであろうテクノロジーの進化がますます楽しみである。ここドバイでは、ドローンレースの世界大会World Drone Prixの開催やドローンタクシーの実用化など世界に先駆けてドローンテクノロジーの発展を後押ししているが、来年は日本からのエントリー、そして受賞者を期待したい。