地上35cmを滑空する全く新しいレース用ドローンが登場
9月の「全日本模型ホビーショー」で発表された京商「DRONE RACER」がついに発売になりました。一般紙も含めた数多くのメディアにも取り上げられ、初回ロットの販売はすでに予約でほぼ完売状態とか。今までドローンに触れたことのない方も含めたユーザーの方々の注目の高さが伺えます。今回はそんなDRONE RACERの機体についてじっくりお伝えします。なお開発チームの詳しいインタビューは、こちらで公開中(BoostMagazine)。
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少し機体の特徴をおさらいすると、
- 地上スレスレ35cmを高度を維持しながら滑空する
- 2chホイラープロポでR/Cカーのように操縦できる
- 未来のクルマをイメージしたボディデザイン
…というレースを楽しむことを想定したホビードローン。どうしてもハードルが高くなってしまっている(操縦技術的、手続き的にも)現在のレース用ドローンに参入できなかった方や、これからドローンのレースを楽しみたい方にピッタリの機体です。
ボディタイプは「G-ZERO(白)」「ZEPHYR(黒)」の2種類
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レース用ドローンにボディ!?と、今までドローンレースをしてきた方にはびっくりするような無意味なアイテムなのですが、このDRONE RACERは未来のクルマをコンセプトにした機体なのでレーシングカーのようなボディは必須なのです。
ボディのラインナップは、白い滑らかな流線型のG-ZERO(ジーゼロ)と、黒い直線的なデザインのZEPHYR(ゼファー)の2種類です。また、よく見るとF-1のようなリアウィングがあるのにお気づきでしょうか?ウィングとは、空気を上に押し上げることで車体にダウンフォース(下向きに押し付ける力)を発生させるレーシングカーには必須のパーツです。しかし、プロペラで揚力(機体を上に浮かせる力)を得ようとするドローンにとっては、まさに正反対の力を発生させてしまうパーツになります。なぜ、そんな無意味なパーツが付いているのか?もう一度言います。DRONE RACERは未来のクルマをコンセプトにしているからなのです。
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2chプロポの操縦はまさにクルマのラジコンのよう
R/Cカーを楽しんでいる方には馴染み深いホイラープロポですが、通常のドローンのスティックプロポしか知らない方は戸惑うかも知れませんので、簡単に操作方法をご紹介します。
正面のホイルは、クルマのハンドルの役割をします。DRONE RACERでは、このホイルをほんの少し切るとエルロン(水平に横移動)、大きく切るとラダー(機体が回転)になります。機体の前進・後進は、銃のトリガー(引き金)のようなところを使います。トリガーを引けば前進、押し上げればブレーキです。長く押し上げたり、静止している状態で押し上げれば、バックとなります。
また、DRONE RACERの特長でもある35cmで一定のホバリングは、トリガー横、プロポ根元にあるスイッチを上に一段階押し上げるだけです。2段階のスイッチになっていますので、もうひとつ押し上げれば、60cmでホバリングします。
このホバリングは、機体の前方下部に搭載されている2つの超音波センサーで地面との距離を測ってコントロールされています。面白いのは、本当に忠実に地面との距離を測ってホバリング高度をコントロールしているところ。一般的なドローンは、多少の障害物の上を通過してもさほど飛行高度が変化することはありませんが、DRONE RACERはその障害物の上を乗り越えるかのように、障害物の形に沿って高度を変えて飛行します。操縦していると「飛行」しているのか「走行」しているのかわからない、とても不思議な感覚に陥ります。
路面を選ばない走破性(飛行性能)でどこでもレースが楽しめる!
今までのレース用ドローンは、ホバリングさせるのも難しいものでした。その難しい機体をコントロールする楽しさもあるのですが、やはり「レースで競うこと」を楽しみたい。その楽しさを追求した機体がDRONE RACERと言って間違いないでしょう。いろいろな方に体験していただきましたが、だいたいバッテリー2パック程度(1パックで10分程度)練習すれば、それなりにコントロールできるようになりました。
そして、安心なのはその安全性です。体験してもらうときは何度もクラッシュ(机に当たるくらいですが…)したのですが、プロペラがすぐに緊急停止します。それ以前に、機体の重量が約130gで、なおかつポリカーボネイト製の柔らかいボディが付いているのでぶつかってもダメージが、機体もぶつかった対象もほとんどありませんでした。
また、インドアで楽しむのもいいのですが、やはりおもしろいのは屋外でのフライトです。天然の障害物がたくさんあり、それらを使うと簡単にレースが楽しめます。もちろん、地面が土でも砂利でも、水面であっても問題ありません。下の映像は、筆者がフライト5〜6回目くらいの遊び始めのころの映像です。とある公園で遊んでいたのですが、芝生でも水が流れる上でも問題なく通過し、30cmくらいの石のブロック(ベンチ?)も難なく飛び越えます。
石のブロックのような大きめの障害物を乗り越えるにはちょっとコツがあり、直前で少しブレーキをかけるとうまくいくようです。ブレーキをかけると機体の前方が少し浮くので、前方下部にある超音波センサーを障害物に当てることができます。それにより、機体が浮上(35cmをキープしようとする)して障害物を乗り越えられます。
次に、もっと本格的に水の上をテストしてみよう…ということで、海の上でも試してみました。もちろん、こちらも問題ありません。
ただ、ちょっと注意点は、細かい砂があるようなところは避けたほうが良さそうです。モーターとプロペラの間にギヤがあるのですが、そこがむき出しなので細かい砂がギヤに噛んでしまうことがあります。フライトは問題ないのですが、離着陸時やクラッシュしたときはちょっと危険ですね。砂が噛んだままギヤを回してしまうと回転音もうるさく、ギヤも砂で傷んでしまいます。そうなってしまったら、一度フライトを中断し、針や爪楊枝などで噛んでしまった砂を取り除いてください。
飛行モードは練習に最適な「EASYモード」とハイスピードな「ACTIVEモード」
自分の練習やいろいろな方に体験していただく中でとても役に立った機能は、飛行モードの選択です。スピードを抑えて練習に最適な「EASYモード」と、スピードを楽しむ「ACTIVEモード」を選択することができます。選択方法は、プロポの電源を切った状態で機体にバッテリーを接続し、機体中央上部にあるAボタンを押すだけです。後ろのプロペラアームのLEDが黄色く点滅しているのですが、その点滅がピカッと1回光るときはEASYモード、ピカピカっと2回光るときはACTIVEモードです。モードの違いでどれくらい速度差が出るか、同じ飛行ルートをフライトしてテストしてみました。
スピード差はご覧の通り!ACTIVEモードは飛行姿勢も少し前傾姿勢になってさらにカッコイイですね。まずはEASYモードで練習をして、慣れてきたらACTIVEモードにチェンジすると上達が早くなると思います。
また、屋外でフライトする際はACTIVEモードがいいかもしれません。機体が130gしかないので、風に少し流される傾向があるようです。その際、ACTIVEモードだといくらかカバーできます。ただ、筆者が試した感覚だと、3m/sくらいの風速の中だとちょっと流されて操縦しにくい印象がありました。これは致し方ないところでしょうか。
そして、さらにスピードを上げたい上級者には、プロペラの角度を変更する機能も搭載されています。H型となっているプロペラアームの前後を、それぞれアタッチメントを変更することで標準の0度から10度/20度と変更することができますので、ACTIVEモードのスピードに慣れてしまった方は、10度、または20度の角度にしてスピードを楽しむのもおもしろいかもしれません(標準時最高速度30km/h→20度時最高速度34.5km/h)。
R/Cレースの京商ならではのレースを楽しむ仕掛け
フライトテストは正式発売前だったので、複数台同時飛行はあまりできなかったのですが、正式発売後はDRONE RACERを使ったレースの場面もいろいろな場所であると思います。長年、レース用R/Cカーの販売とレース運営をしてきた京商ならではの仕掛けがDRONE RACERにはありますので参考までにご紹介すると…
まずは、機体上面に赤外線LEDが搭載されており、これをセンサーで受けるとラップタイムを1/100までカウントすることができます。京商のR/Cカーレースでは、ソフトウェアを使ってベストラップの集計やレース運営もできるようになっていますので、この赤外線LEDを受け止めるカウンターの発売が待ち遠しいところです(新製品発表会ではゲート型のカウンターが設置されていました)。
また、フロントのプロペラアームにLEDが装備されており、その色が本体中央上部にあるCボタンを押すことで6色(青、白、水、桃、緑、黄)の中から選択できます。これが意外と便利で、同じカラーリングのボディを搭載していたとしても、LEDの色で機体を判別することができます。どれが誰の機体か、すぐにわかるので、操縦している方も見ている方も非常にわかりやすくなっています。
さらに飛行性能を上げるには…
記事執筆時にはまだ公開されていないのですが、実はDRONE RACERにはPC(Windowsのみ)やAndroid端末に接続、無料「セッティングマネージャ」アプリを介してセッティングを変更することができます。機体の傾きの限度の設定やフライト高度の変更もできるとのことなので、小回りが効く特性にしてインから相手を追い抜いたり、高度を標準の35cm/60cmからずらして相手の上や下から追い抜いたりすることもできるようになります。
また、これまでのホビーラジコンと同じように豊富なオプションパーツも発売予定。標準の直径が8.5mmのモーターに対して10mmにサイズアップしたハイパワーモーターやハイスピードなギヤ比のオプションギヤ、軽量なチタンビスや自分で塗装可能な未塗装ボディなど、男子のココロをくすぐるアイテムが続々と発売予定だそう。
おもちゃも含めて中国製のドローンが多かった日本のドローン市場ですが、DRONE RACERは国内の老舗R/Cメーカーが本気で作ったことが伝わってくる本格的なホビードローンでした。オプションの展開やイベント開催など、今後が楽しみな1台です。