世界的に人気急上昇のドローンレース。FPVゴーグルを装着してドローンに取り付けたカメラからの映像を頼りにスピードを競う。見るものも操縦するものも興奮させるのがドローンレースだ。しかしドローンレースは、FPV飛行でスピードを競うだけではない。これまでどのようなレースが日本で行われてきたかを振り返りながら、ドローンの各種ルールがどのようなものなのかを見ていきたい。
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日本で開催されたドローンレース
Parrot AR Drone2.0
この数ヶ月で急速に知名度が上がってきたドローンレースだが、世界的には2014年ごろから冒頭のFPVゴーグルを利用したドローンレースが草レースとして開催されてきた。日本では同じく2014年ごろから、目視飛行(FPVゴーグルを点けず直接ドローンを目視し操縦する)での障害物レースなどが行われてきた。2015年からは複数人が同時飛行してスピードを競う「ドローンレース」が開催され、AR Drone2.0やPhantomシリーズなどの既成品ドローンを用いたレースが各地で開催され、徐々に「自作ドローン」がレースに登場していった。
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開催時期 | レース名 | 主催 | 場所 |
---|---|---|---|
2014/6/28 | 第1回全日本クアッドコプター選手権 | Engadget Japanese | 秋葉原 |
2014/11/24 | 第2回全日本クアッドコプター選手権 | Engadget Japanese | 秋葉原 |
2015/1/25 | 第一回Japan Drone Championship | JDRA | 秋葉原 |
2015/4/5 | 第二回Japan Drone Championship | JDRA | 秋葉原 |
2015/5/30 | 第3回全日本クアッドコプター選手権 | Engadget Japanese | 秋葉原 |
2015/8/1 | DJI EXPOドローンレース | DJI Japan/JDRA | 新潟 |
2015/9/6 | Catalyst ドローンレース 2015 Tokyo | Catalyst | 秋葉原 |
2015/11/7 | Drone Impact Challenge 2015 | Drone Impact Challenge | 千葉 |
2015/12/5,6 | DRONE AIR RACE | JDRA | 千葉 |
2016/2/14 | World Prix in Dubai 日本選考会 | Aerial Grand Prix Japan | 慶応義塾大学SFC |
2016/3/26 | Drone Impact Challenge 2016 | Drone Impact Challenge | 幕張メッセ |
2016/5/23-27 | D1 ASIA CUP 日本予選 | JDRA | 千葉 |
2016/6/11,12 | JAPAN DRONE NATIONALS | JDRA | 仙台 |
2016/7/2,3 | DRONE Racing in KOBE | カイトコーポレーション | 兵庫 |
これまで日本国内で開催されたドローンレース
目視飛行が中心であった大きな理由は、日本国内でのFPV飛行の参入障壁の高さにあった。FPV飛行は、ドローンに取り付けた映像送信機(5.8GHz帯を利用)の映像をゴーグルなどでリアルタイムに受信して、その映像を頼りに飛行操作を行うが、日本でこの無線電波の送信を行うには無線局開局手続きが必要になる。これらの手続きが有志により調整・情報共有がなされたおかげで、誰でも開局手続きが可能な道筋がつくられた。そうして初めて日本で「FPVレース」として開催されたのが、2015年11月7日の「Drone Impact Challenge2015」だ。その後各地で「FPVレース」を中心にドローンレースが開催されてきた。
また、これまでは上位入賞者に賞品が出ることが多かったが、2016年7月に行われた「DRONE Racing in KOBE」では賞金付きのドローンレースが開催され、ますますスポーツとしての色を強めている。
今後のドローンレースの傾向は?
2016年10月にハワイで行われるドローンレースの世界大会
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上述したように、日本国内では「FPV飛行」をするためには無線局開局手続きが必要だ。加えて2015年12月に施行された改正航空法の規定により、ゴーグルなどを装着したドローンの操縦は「目視外飛行」に該当するため、屋外では原則申請などの許可無く飛行させることができない。しかし、同規制には「例外」があり「200g未満のドローン」「屋内施設での飛行」は対象外となっている。そうした背景もあり、先日、大々的に執り行われた「JAPAN DRONE NATIONALS(仙台)」のドローンレースは、屋外施設を利用して行われた。2016年7月末に開催予定のドローンレースでは、「U199(Under 199g)クラス」といった規制対象外のドローンを用いたレースの開催も決まっている。
世界的にも、現在「ドローン」として広く認知されている「小型のクアッドコプター」だけではなく、翼をもった固定翼機や、大型のマルチコプターをレギュレーションとしたレースも開催される予定だ。また、競技内容もスピードレースだけではなくフリースタイルといった「魅せる演技」が競技内容として追加されており、ドローン同士が戦う「ドローンバトル」も検討されている。
一風変わったドローン競技も
ドローンレースという括りではないが、JDRAの創設者でもある株式会社Drone Gamesの黒田さんが株式会社ドワンゴと共催した「ドローン運動会」も非常に面白い。私もパイロットとして参加したが、「ドローン綱引き」や「ドローン長縄飛び」「ドローン騎馬戦」など、ドローンでスピードを競うだけではない、新しいエンターテイメントとしての可能性を感じたイベントだった。
ドローンレースは誰でも開催でできる?
2015年に開催された実際のドローンレース
世界的に開催されているドローンレースは何も毎回大規模である必要はない。Multi GPのように、草レースであれば「誰でも、今すぐに」初められるのがドローンレースだ。また、上述のように必ずしも「FPVレース」である必然性もない。しかし、上空を飛行させる以上「安全」と各地域での「法律」に十分に注意をして行う必要がある。ドローンに触れる機会が少ない人は「ドローンが当たると危ないもの」という認識が少ないのは当然であり、そういった方々への配慮が開催側には強く求められる。実際に、最近仙台で行われた屋内ドローンレースでも、観客席は必ずネットの裏に限定するなど、安全面への配慮が十分になされており、パイロットとしても安心してドローンを飛ばすことができた。
このように、開催する場所・環境に関して、安全に対する十分な配慮航空法の該当規制に対する許可申請もしくは、屋内施設での開催ができるならば、ドローンレースへの開催準備が可能だ。良い場所には多くの人や関心が集まる。その後は実際のレースの「コースづくり」や「機体のレギュレーション設定」、「競技ルール」を決めて、ドローンレース開催を目指そう。ドローンにこれまで関わりが無かった企業や団体でも現在ドローンレースを開催したい!という声が増えている中、全国でレースに出たくてうずうずしているドローンレーサーもたくさんいます。草野球の大会が週末各地で行われているように、全国各地でドローンレースが開催される日も遠くないかもしれませんね。