インプレス総合研究所から、3月に「ドローンビジネス調査報告書2016 (新産業調査レポートシリーズ)
」が出版され、この本を主執筆させていただきました。
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インプレス総合研究所「ドローンビジネス調査報告書2016 (新産業調査レポートシリーズ)」
この調査書は、市場動向、ビジネス動向、海外動向、国行政の動き、法律や規制、技術動向、課題と展望などドローンビジネスに関する情報を網羅していますが、こういった調査書において、市場規模およびロードマップをどう捉えているのかという部分に注目が置かれており、今回も様々な議論を重ねる中で、入念にその数字の算定を行いました。
国内のドローン市場規模
2015年度の日本国内のドローンビジネスの市場規模は104億円。
2016年度には前年比191%の199億円に拡大し、2020年度には1,138億円(2015年度の約11倍)に達する見込み。
2015年度はサービス市場が61億円と58.6%を占めており、機体市場が33億円(31.7%)、周辺サービス市場が10億円(9.6%)。
2020年度においては、サービス市場が678億円(2015年度比約11倍)、機体市場が240億円(2015年度比約7倍)、周辺サービス市場が220億円(2015年度比22倍)に達する見込み
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算出のポイントとして、まず、項目ですが、機体、サービス、周辺サービスに分けています。この内容を細かくみていきましょう。
機体市場
機体市場は、業務用(固定翼および回転翼)の完成品機体の国内での販売金額。軍事用は含まない。ここで業務用の完成品機体にどの製品が含まれているのかというのは、各調査会社において、キーポイントの一つになります。完成品機体の売上という観点で捉えた場合、日本においては、DJI製品およびParrot製品を含むのか含まないのかという判断が数字を形成する意味において、非常に大きな要素になります。
DJIは明確に数字を出していませんが、様々な情報を掛け合わせると、月間2,000~3,000台の完成品機体を現在販売していると推察されますが、国産の産業用ドローンを製造販売している会社では、非常に販売数が多い先でも、年間1,000台程度となっており、通常は年間で100~200台程度の販売台数となっており、このDJI製品を含むのか含まないのかは大きく数字を左右するものとなっています。
産業用途という観点から、DJIおよびParrotへのインタビューや国交省への申請許可状況、ドローンサービス事業者の状況を勘案し、今回、DJI製品は完成品機体の売上に含み、Parrot製品は含まないという判断をしています。この調査書にも記載をしていますが、ワールドワイドでの市場が、ホビーを中心とした民生に対しては規制強化されていく流れに対し、産業での用途が拡大している中で、DJIはその戦略を、民生機から産業用への強化を図ってきており、おそらく、このDJIは産業用途においても、そのポジショニングは大きくなっていくことが予想されます。
今回、Parrotはその数字に含めていませんが、Parrotも子会社であるsenseFlyをより活用する中で、今年以降は日本においても、より産業用に狙いを定めてくる可能性もあります。また、3DRやYuneecといった海外大手も2016年は日本で展開していくことが見込まれており、国内の機体メーカーは、どういった戦略を描いていきながら、その波に対抗していくのかが注目ポイントになってきます。
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サービス
サービス市場は、ドローンを活用した業務の提供企業の売上額。ただし、ソリューションの一部分でのみドローンが活用される場合は、その部分のみの売上を推計。公共団体や自社保有のドローンを活用する場合は、外部企業に委託した場合を想定し推計しています。このサービス市場の算出は、15の大分類に分け(空撮、土木・建設、検査、農林水産業、防犯監視、計測観測、防災救助、倉庫、工場、物流、医療、警察消防、保険、インフラ、エンタテインメント)、その中での活用環境(全体の市場可能性やその浸透スピードや技術状況)といったものを勘案して行っています。
現在、既に行われている農薬散布を例に挙げれば、のべ面積で108万haの水田を中心とする圃場で、産業用無人ヘリでの農薬散布が行われています。ここでの農薬散布の作業費というものをサービス費用として売上算出をしています。同様に各業種での活用環境(道路公共工事件数、橋梁・トンネル数、メガソーラー件数、水田耕作地面積など)を鑑みて、数字を積み上げて作成しています。
サービス市場は、現在、先に挙げた農薬散布や空撮など一部の市場が確立していますが、今後、測位技術(屋内含む)や群制御技術などドローン関連技術の開発・研究・実用化が支えとなり、橋梁等の検査や測量、精密農業、物流、その他(防犯監視など)の様々な分野でドローンが活用されていくことを推察し、数字を積み上げている形になっています。
周辺サービス
周辺サービス市場は、バッテリー等の消耗品の販売額、定期メンテナンス費用、人材育成や任意保険の市場規模を示しています。こういった周辺サービスは、ドローン活用の市場とともに、対ドローン対策なども広がっていきながら、今後、現状の予測以上にその伸び率が上がっていくものと思われます。
ドローンビジネスのロードマップ
2016年度までを「黎明期」、2017~2019年度を「普及期」、2020年度から「発展期」と分類しています。それを業務利用、機体・周辺、技術、国・行政の要素に分けて、市場予測を行っています。2016年度は、業務利用でいけば、現状の農薬散布や通常空撮に合わせ、観光地のマーケティングを目的とした風景空撮、「i-Construction」に伴う公共道路工事での三次元測量、橋梁やトンネルでの目視検査での利用、メガソーラーでのパネル点検といった市場が立ち上がってくることが予想されます。その後、個々の分野においてのルール作りや技術向上が伴っていきながら、その市場が拡大していくだけでなく、新しい技術の登場により、新たな分野での市場が立ち上がっていくことが想定されます。
こういった形で、ドローンの業務活用において、技術動向や国・行政の動き、それに伴う人材育成やコストといった観点を踏まえて、ビジネスプランを立てていくことが重要になります。また、実際の業務を行っていく中で、ドローン単体だけでなく、インターネットを経由したクラウド活用が多くのもので必須になってきており、こういった形でのシステムインテグレートを行いながら、適正化していくことも重要になってきます。今回算出したドローンビジネスの市場規模が2020年度に1,138億円に達するという予測は、そういったプロセスを踏んでいくことで、より現実的なものになっていくと同時に、その市場規模は上方修正が必要なものになっていくのではないかと思っています。