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コラム小林啓倫

[小林啓倫のドローン最前線]Vol.07 「飛び方」で人間とコミュニケーションするドローン

2016年3月31日

ドローンの状態を知る難しさ

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Contents
ドローンの状態を知る難しさ人間からのメッセージも身振り・手振りで


「飛び方」を変えることで、自らの状態を示すドローンが登場するかもしれない

クルマやバイクなどの愛車に乗り続けているうちに、車体のちょっとした挙動や音の違いで、普段とは何かが違うと気づいた……そんな経験のある方、意外と多いのではないだろうか。人間が乗り込んで操縦する乗り物の場合、車体・機体や挙動を間近で見たり体験したりするため、そういった変化を認識しやすい。しかしドローンの場合、離れた場所で操縦するか、あるいは自律飛行するのを眺めることになり、機体の変化や異常に気づくのはより難しくなる。

もちろん様々な計器類やコンピュータのディスプレイを通じて、数字や文字でドローンの状態を把握することはできる。だがそうした情報は、直感的に理解することが難しい。またバランスを保とうと必死になって操縦しているときなど、ディスプレイに目を向けるのを忘れてしまう場合もある。そこでスタンフォード大学の研究者であるジェシカ・コーチャードらが提唱しているのが、「飛び方」で人間とコミュニケーションするドローンである。

コーチャードはスタンフォード大学において、HCI(Human-Computer Interaction、人間とコンピュータの間でのインタラクション)の研究グループに所属している。HCIは、人間と機械の間のやり取りがどのように行われているのか、あるいはどのように行われるべきかを考える取り組みだ。彼女が発表した論文も、まさに人間とドローンのやり取りについて、ひとつのあるべき姿を検討している。

 

仮にいま、飛行中のドローンのバッテリー残量が少なくなっているとしよう。しかしパイロットが初心者で、機体の方だけに気を取られてしまっている。そこでドローンは、少しスピードを緩めたり、ときどき立ち止まるような動きをしたりすることで「疲れている」、すなわちバッテリーが減ってきていることを示すという具合だ。こうした飛び方のパターンを、コーチャードらは「感情」と表現し、「眠い」「幸せ」「怖い」など複数のパターンを用意して人間との間でコミュニケーションする実験を行っている。

意思の疎通に関してよく引用される理論に「メラビアンの法則」がある。これは米国の心理学者アルバート・メラビアンが行った実験に基づく理論で、人間同士のコミュニケーションにおける様々な要素の重要性は、話の内容などの言語情報が7%、口調などの聴覚情報が38%、見た目などの視覚情報が55%の割合になるというものだ。具体的な割合はどうであれ、人間がいかに文字や数字などの情報だけでなく、ゼスチャーなどの「見て」理解する情報に依存しているかを示すものだろう。

であるならば、「飛び方を変える」というアプローチもそれほど突飛な発想ではない。もちろん電線やパイプラインなど重要施設の点検を行っているときに、突然ドローンが蛇行を始めてしまっては冗談では済まないので、どこでも使える方法というわけではないだろう。しかし適切な状況で用いれば、ディスプレイなど既存のコミュニケーション手段を補足するものとして有効なはずだ。実際にコーチャードらが行った実験では、条件次第で被験者の90パーセントがドローンの状態を正しく把握できたそうである。

人間からのメッセージも身振り・手振りで

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これからのドローンはゼスチャーで操作する?

 コーチャードは他にも、ドローンと人間の間のコミュニケーションについて、面白いアイデアを提唱している。人間からドローンへ情報を伝えるという流れにおいても、「見た目」を活用するというのだ。つまり人間同士のコミュニケーションと同様、身振り・手振りを使うのである。

たとえばドローンに向かって手招きすると、それに気づいたドローンが近づいてくる。近づきすぎたら手のひらを前に突き出すことで、その場で滞空する。また地面を指させば、指された場所に着陸するといった具合だ。

ゼスチャーによるドローンの制御については、他の専門家たちも研究に取り組んでおり、実証実験に成功した例もある。たとえばゼスチャー制御用のデバイスを開発しているNod社は、指輪型のウェアラブル端末を使い、手を動かすだけでドローン(DJIのInspire 1)を操縦するという技術を開発している(参考記事:DJIドローンをバーチャルリモート制御。ハンドジェスチャーとVRヘッドトラッカーFPVで未来の空撮360度ストリーミング|DRONE.jp)。また台湾の研究者らが、アップルウォッチを使い、同じく手の動きだけでドローン(パロットのBebop)を操縦する映像が公開されている(参考記事:Using The Force? No, it’s an Apple Watch flying this drone|Reuters)。また東京大学の研究者らが開発した「Pheox」は、ゼスチャーだけでなく音声も理解して指示した飛行をしてくれるドローンだ。

コーチャードが行った実験によれば、ゼスチャーや音声などを組み合わせてドローンを操作する体験をした被験者の44パーセントが、この仕組みを「直感的に理解できるもの」と評価したそうである。もちろん人間からドローンへというコミュニケーションについても、極めて精密な飛行が求められる状況下では、身振りや手振りなどという曖昧な方法を使うことにはリスクがあるだろう。しかしホビーのための空撮といった場面であれば、直感的にドローンを制御できるゼスチャーの活用は、より衝突などのリスクを軽減する可能性があるはずだ。

態度で自らの状態を伝え、人間のゼスチャーに反応して行動する…近未来のドローンは、航空機やロボットというよりも、ペットに近い存在になるのかもしれない。

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Editor 2016年3月31日
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