Dronecodeに何が起こったのか?
それは、2016年8月28日にDronecodeのSilver Memberに対して、Dronecode Silver DirectorsであるPhilip Rowse氏とTom Pittenger氏からの“Dear Silver members,”で始まるメールによって明らかにされた。
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Dronecodeのメインフライトコードを「ArduPilot」から「PX4」に変更するという内容で、その後8月31日には、同社のChairmanであるChris Anderson氏から、Dronecodeメンバーに対して正式にその内容を告げるLetterが出された。
Dronecodeサイドは変更理由に関して、現状のArduPilotによるCodeのバージョン管理が不明確であり、Dronecodeを活用している企業にとって負担が大きくなっていること、およびArduPilotの使用許諾条件であるGPLv3が、機能拡張しているドローンテクノロジーの中でそぐわなくなってきているという理由を示した。
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PROJECT MEMBERS
この変更にあたり、Silver Memberは意見を求められることはなく、Platinumメンバーである3DR、Qualcomm、Intelの間で話し合いがもたれ、決定がなされたと伝わってきている。特にQualcommの意考が強かったようだがそこにはやはり、Qualcommの知財戦略とGPLv3との考え方の相違というものが横たわっているように思う。ここではGPLv3の使用許諾の内容に深く入ることは避けるが、例えば、以下のような項目は知財権者にとっては、その方針と合わない部分があったであろう。
GPLv2では、プログラムを配布した者が下流の受領者に対して特許権を行使できるか否かについて明確な規定がなかった(下流の受領者が知らずに特許侵害を行ってしまうリスクがあった)。しかしGPLv3では、下流の受領者に対する必須特許の無償ライセンスが明記された(参考:GPLv3の要点解説 ─v3からv2を考える─)。
これはDronecodeの中心にあったArduPilotにおいて、GPLv3であることは当初から変わってはいない。それがなぜこの時点でArduPilotからPX4に変更という動きが出てきてしまったのだろうか。それまでも、GPLv3の問題(フライトコードArduPilotの内部機能として、知財のあるソフトウェアを組み込む際には、ソフトウェアのソースコードを開示しなければならないということ)は、知財を持った企業にとっては問題であった。
しかし今までは、よりインテリジェンスな機能、例えば画像解析による衝突回避といった機能をドローンに組み込む際は、フライトコントローラーに亀の子状に載せたCompanion Computer(DroneKit)上で処理を行っていた。このDroneKitはBSDライセンスで使用許諾されているものが多く、組み込みに対してソースの開示が必要ではなかった。現状の3DR SoloのOrbitと呼んでいる被写体を追尾する機能などは、Companion Computer上で処理されている。
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Companion Computerという手法も昨年あたりから急速に拡がってきたが、Qualcommを始めとした企業が新たにフライトコントローラーを開発している中で、Companion Computerで実行されている機能のフライトコントローラーへの内部化の方向性が出てきており(これはArduPilotのプロジェクトディスカッションのテーマにもなっていた)、知財を持つ会社にとっては非常にやりにくい状態になってきた。そんな状況下で、今回の決断がなされたと推察される。
新しいDronecodeの構造
新しいDronecodeは上記のようになっている。OSが搭載された各種コントローラーにFlight CodeとしてPX4が記載されている。そして、Communication LayerであるMAVLinkを通じてDroneKitやROSといったAPIをサポートしており、Companion ComputerやWebアプリケーションといった開発が可能となっている。
PX4
Dronecodeの機体での自律航行制御プログラムを担っているのはPX4で、以下のような構造になっている。
このループを回すことで、自律航行を可能にしている
ArduPilotの行方
Dronecodeより離脱したArduPilotだが、Ardupilot.orgとして今まで中心をなしていたDeveloperがそのまま中心となって活動が継続されている。
そして、新しいパートナーが支援体制を作り始めており、その中で日々新たなプロジェクトが進んでいる。
今回の分裂の影響
今回、分裂の遠因になっている3D Roboticsの業績不振に関して10月5日にForbes上で詳細な記事が掲載された。
昨年のクリスマス商戦に仕込んだSoloが、販売不振により大規模なリストラを行っているという。技術者や開発者を含むリストラにより現状は新たなドローンの機体開発は厳しいものと思われる。その中で、米国ではドローンサービス企業であるDJIとの連携が目立ってきている。
DJIの産業向けのドローン活用に対し、QualcommやIntelといったフライトコントローラーやCompanion Computerを担う超大手はどのような戦略に打ってでるのか。“よってたかって”開発を行ってきたDronecodeの分裂は、DJIのそのリソースの豊富さの中で、加速化する開発スピードについていけるか。今後ともドローンに関連する企業は注視していくことが重要だ。