新制度の運用状況
型式認証や操縦ライセンスの法案が2022年12月に施行されて1年が経過したということで国土交通省はその新制度等の運用状況について発表している。
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型式認証の第一種(レベル4相当)が1件、第二種(レベル3相当)が1件ということで、第一種はACSLのPF2で、第二種がSONYのAirpeak S1というのは両社がニュースリリースを出しているので周知の事実であるが、それに連動する形の一等ライセンスが923件、二等ライセンス6,860件というのは非常にバランスが悪い形になった。(しかもSONYのAirpeak S1の型式認証は目視外を含まないものとなっている)
そのためかどうかは不明だけれど、国土交通省はレベル3.5という新たな基準を昨年末に発表した。(元々、レベル3<無人地帯の目視外飛行>の許可のメインは、立入管理措置を講じない中でのドローン活用であったので、第二種機体型式認証取得にむけた機体メーカーとしてのモチベーションは下がるだろう)
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型式認証に関しては、現状、安全側に極度に振られた形になっており、また、ドローンでの検査も初めてということもあり、機体メーカーが検査基準も自ら作っていくような形になっており、時間がかかるだけでなく、その取得コストも過剰になっている。
(ACSLのインタビューによると第一種取得には11億円かかったらしいし、また、第二種取得も1億円近いコストがかかりそうだということもあり、来年度以降もどんどん型式認証取得機が出てくるという状況ではない。また、第一種の型式認証も人口集中地区の完全目視外飛行でなく、現状では、人口集中地区の人口密度が低い地域の目視外飛行のみ)
そんな状況下の中、操縦資格を取得した人や登録講習機関から、早くも操縦資格とドローン関連の仕事に関しての相談や問い合わせが増えている。
ドローンの操縦技能証明とドローン関連の仕事
今回の操縦技能証明が必要な流れは以下となっている。
- カテゴリーⅠ
特定飛行に該当しない飛行。航空法上の飛行許可・承認手続きは不要。 - カテゴリーⅡ
特定飛行のうち、無人航空機の飛行経路下において立入管理措置を講じたうえで行う飛行。(=第三者の上空を飛行しない) - カテゴリーⅢ
特定飛行のうち、無人航空機の飛行経路下において立入管理措置を講じないで行う飛行。(=第三者の上空で特定飛行を行う)
以下が第1種、第2種操縦者技能証明を有した資格者が可能になることだ。
- 第1種操縦者技能証明を有した資格者(第一種機体認証の機体と連動)は、立ち入り管理措置を講じない形で、特定飛行(目視外)のカテゴリーⅢ(第三者の上空)の飛行が可能になる。
- 第2種操縦者技能証明を有した資格者(第二種機体認証の機体と連動)は、立ち入り管理措置を講じない形で、特定飛行(目視外)のカテゴリーⅡ(第三者の上空を飛行しない)の飛行が可能になる。
(レベル3.5は、第2種操縦者技能証明を有した資格者であれば、保険への加入と機上カメラによる歩行者等の有無の確認があれば、カテゴリーⅡの区域で目視外飛行の立ち入り管理措置を講じない形での運用が可能となっている)
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いずれにせよ、今回の操縦者技能証明を有した資格者が可能になることは上記に記載した目視外飛行に絡んだ要件となっており、直接的には、それ以上でもそれ以下でもない。
目視外が絡む案件以外においては、現実的には資格を必要としていないのも、これまでと変わりがない。
試験が合格する過程において、「無人航空機の飛行の安全に関する教則」を学び、筆記試験をクリアし、また、操縦技能や安全運用などの実技試験をクリアしたという実績はあるし、その証明の裏付けにはある程度なっている。しかし、ドローンの現地運用という観点一つにとってもそれは十分条件にはなっていないのも、これまでと変わりがない。
そういった点でのドローンの操縦技能証明と仕事の関係からいうと、2017年に書いたコラムと大きく変わるところは少ない。
その当時からの変化といえば、より実用で使用しているケースが多いので、ドローンを飛行させる個々の現場ごとの運用に対して実践的になっており、そのシーンにおいては、教習で使うPhantomやMavicといった機体は少なく、DJIでいえばMatriceシリーズやDJI以外の海外機や国産機といったものも増えているし、また、よりドローンが目的化している。
(逆にPhantom4やMavicを使う現場においては、既に特別な形での操縦士を必要としておらず、現場での「道具化」している。例えば、土木現場での日常的な工事進捗など)
また、飛行の安全性や安定性の向上ということもあり、機体整備やメンテナンス、自動航行の安全性の高い航路設定、機体ログの解析、フェールセーフの細かい設定など、運用内容は深くなっている。
ドローン関連の仕事とスキルセット
ドローン関連の仕事はどういったものがあるのか。
ドローンがユーザーにまで渡る流れは以下になっている。
この各々のレイヤーで仕事の内容とスキルセットが異なってくる。
上から見ていこう。
部品メーカー
ドローンの部品メーカーに関しては、ドローンの本体の動力や機体制御、機体管理に関連するものとペイロードと呼ばれる各種目的のためにドローンに搭載されるものの二つに大別される。
- 1.ドローン本体関連
バッテリー、モーター、送受信機、フライトコントローラーなどがある。
このレイヤーは機体制御と関わる形での構造や設計、また、最近では制御や管理と連動する形でのソフトウェア連携も重要になってくる。また、その試験飛行を行うためのフライヤーも必要だ。
スキルセット:- ・構造開発や設計:機体制御知識、デバイスドライバーの開発
- ・試験フライヤー:操縦技能、機体の設定やチューニング、機体挙動のアドバイス
- 2.ペイロード関連
カメラ・センサ(データ取得機器)、散布装置、運搬用装置などがある。
このレイヤーは機体制御と連動する形での装置制御が必要で、最近では装置制御に関して、AIアプリケーションとの連動する形でのソフトウェア開発も付加価値も付加価値を上げるために重要になってくる。また、その試験飛行を行うためのフライヤーも必要だ。
スキルセット:- ・装置制御:機体制御知識、デバイスドライバーの開発、機体制御連動
- ・試験フライヤー:操縦技能、機体の設定やチューニング、機体制御連動のアドバイス
機体メーカー
機体メーカーに関しては、その業務によって、いくつかの内容に分かれる。開発・設計、製造・組み立て、サポートである。その内容をすべて自社で行っている場合もあるが、専門会社と連携する場合もある。特に、実証実験フェーズの場合には、すべて自社で行うケースも多かったが、マスプロダクションに移行する中で、連携するケースが増えている。
また、機体メーカーの多くが機体提供だけでなく、PoC支援やオペレーター派遣などのサービスを提供しているケースも多い。
スキルセット:
- ・開発・設計:機体制御知識(基本機体制御、高度な機体制御)、デバイス知識
- ・製造・組み立て:機体構造知識、部品・デバイス知識、機体試験知識・アプリ開発
- ・サポート:機体ログ解析、機体メンテナンス(機体管理・デバイス管理)
- ・試験フライヤー:操縦技能、機体の設定やチューニング、機体挙動のアドバイス
- ・セールス:機体スペック、顧客ごとのソリューションの知識
- ・PoC支援:現場運用知識、操縦・運用技能、顧客ごとのソリューションの知識
ドローンサービサー
ドローンサービサーには「オペレーション(運航)」「画像・データ解析」「ソリューション提供」といったサービスの形態がある。
サービスとして最も多い形態は、利用者が求めるソリューションを構築し、必要に応じてそのソリューションの運用を支援する、コンサルティングも含めたサービスの提供だ。この形態はさまざまな産業分野のドローン点検や、地方の課題解決としてのドローン物流の地域実装といったケースに多い。
- 1.オペレーション
ドローンの操縦技能証明取得者がイメージする仕事はこの部分が多いかもしれない。今までは実証実験も多かったので、オペレーターの専門家としての仕事が多かったが、このオペレーション部分はドローン活用企業内で内製化されたり、関連子会社にシフトしていったりするケースも増えてきている。そのため、現場向けの運用トレーニングといった仕事も増加している。
スキルセット:- ・現場オペレーター:現場運用知識、操縦・運用技能、顧客ごとのソリューションの知識、トレーニング能力
- 2.画像・データ解析
ドローンで取得した画像や動画データを解析し、顧客が求めるデータとして提供するといった仕事になっている。顧客カテゴリーごとの目的との連動やドローン特有のデータ処理なども重要になっている。
スキルセット- ・開発:機体制御知識、デバイス知識、ソフトウェア開発(アプリケーション、AIなど)
- ・データ取得フライヤー:操縦技能、機体の設定やチューニング、データ取得のアドバイス
- 3.ソリューション提供
ユーザーが求めるドローン活用の目的に応じて、ペイロードの選定、機体のカスタマイズ、ドローン取得データと業務データとの連携、ユーザビリティの向上、安定運用など総合的に様々な形でドローンのトータルソリューションを提供しており、ユーザーでの本格活用が増えていく中で、重要なポジションを占めてきている。
スキルセット
- ・企画:機体制御知識(基本機体制御、高度な機体制御)、デバイス知識、データ活用知識
- ・開発:機体制御知識、デバイス知識、ソフトウェア開発(アプリケーション、AIなど)
- ・現場オペレーター:現場運用知識、操縦・運用技能、顧客ごとのソリューションの知識、トレーニング能力
ユーザー
ユーザーにおいては、上記のサービサーの内容をユーザー企業や子会社での内製化していく動きが活発化している。そういった意味では、そこの仕事やスキルセットに関しては、サービサーと同様な形になってきている。
こういったスキルセットを獲得するためには
- 1.オペレーター関連
現在の操縦スクールで、ドローン関連の法律や飛行の安全、操縦技能などは取得することは可能だろう。しかし、もっと深いところ(機体設定やチューニング、フェールセーフ、機体ログなど)を学ぶのに一番適した教材は「ミッションプランナー」などのポピュラーなGCS(Ground Control Station)を学ぶことだろう。
こういったアプリケーションを学ぶことによって、ドローンの安定運用につながる知識のベースを得ることが出来るだろう。 - 2.アプリケーション開発(機体管理、ユーザビリティの向上、デバイスの高度化、データ解析など)
アプリケーション開発にとって、機体管理アプリやUTMを開発する人にとっても、まずは、「ミッションプランナー」などのポピュラーなGCS(Ground Control Station)を学ぶことだろう。このことでどの機能が必要で、どの機能を深めるかということを理解できる。
デバイスの高度化・AI化や取得データの解析などの開発する人にとっては、機体制御の基本的な知識とドローンに搭載するコンパニオンコンピュターに関する知識とそこでの開発を学ぶことが必要だろう。 - 3.機体制御(基本機体制御、高度な機体制御)
メインの機体開発にとっては、機体制御がどういった形で動いているかという深い理解が必要だ。そのために一番適した教材は、フライトコードのソースコードを学ぶことだろう。これを学ぶことによって、どういった形でドローンの機体制御が行われているかを深く理解できる。また、そこから、高度な機体制御(SLAMなど)に進めていくには、コンパニオンコンピュターでの開発の知識も重要になっていくだろう。
こういったスキルセットを学ぶためのほぼ唯一の教育機関が「ドローンエンジニア養成塾」になっている。(「ドローンエンジニア養成塾」で検索)
ドローンエンジニア養成塾 2024春夏第17期が5月25日から開講される。
- 1. オペレーター関連は、コース1で学ぶことが可能だ。
- 2. アプリケーション開発は、コース1と2で学ぶことが可能だ。
- 3. 機体制御は、コース2と3で学ぶことが可能だ。
ぜひ仕事に役立つスキルセットを身につけて欲しい。