両社は、ロボットのみで設置が可能な基地局の支柱やアンテナを新たに試作した。本実証では、あらかじめ設置していた支柱に探査車(GITAI社ローバー)がアンテナを運搬し、GITAI社アーム型ロボットがアンテナを支柱頭頂部に設置を行いケーブルに接続の上、通電に成功したという。
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世界的に月面探査の取り組みが加速し、月面で船外活動を実施する宇宙飛行士や月面を走行する有人ローバーからの高画質リアルタイム映像伝送など、高速大容量な通信環境の構築が求められている。
一方で、月面では有人での基地局設置が難しく、ロボットによる無人での基地局設置が必要だ。両社は、月面探査活動を支援するため、本実証を通じて得た知見を基に月面モバイルネットワーク構築を目指していくとしている。
背景・課題
NASAやJAXAをはじめとした世界各国の宇宙機関は、2020年代後半の有人月面着陸および、継続した月面探査活動を通じた科学的発見・産業振興・次世代の育成を目指す「アルテミス計画」を進めている。継続した月面探査活動には月面上での高速大容量な通信環境が必要とされており、月面でのモバイルネットワーク構築が期待されているという。
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月面は放射線量が地球上の200倍、気温がマイナス170℃から110℃まで変化するなど過酷な環境であり、モバイルネットワーク構築には無人での基地局設置が必要だ。一方で、地上で利用している基地局の機器は有人設置前提で設計されているため、ロボットのみで基地局設置が可能な支柱やアンテナなどを開発する必要がある。
このような課題解決に向け、国際宇宙ステーション(ISS)でロボットの自律作業を成功させた実績のあるGITAIと、地上でのモバイルネットワーク構築の知見があるKDDIが、基地局を無人設置するための手法の検討および無人設置可能な機器の開発を目指し、本実証を実施した。
本実証について
概要
- 1.月面模擬環境にあらかじめ設置していた5メートルの支柱まで、探査車(GITAI社ローバー)がアンテナを運搬
- 2.2台のGITAI社アーム型ロボットが、アンテナを支柱頭頂部まで持ち上げ、支柱に接続
- 3.GITAI社ローバーに接続されている別のGITAI社アーム型ロボットが、アンテナのケーブルを接続し、通電
- 4.GITAI社アーム型ロボットにて、ケーブル、および支柱頭頂部のアンテナを取り外し
使用機器
機器 | 概要 |
---|---|
支柱 | GITAI社が試作した、ロボットアームで建設可能な支柱 |
アンテナ | 地上で利用しているアンテナ |
探査車 | GITAI社ローバー(R1.5A) |
アーム型ロボット | GITAI社ロボットアーム(IN2) |
各社の役割
- GITAI:探査車・アーム型ロボットの提供、事前屋内検証、屋外検証、モックアップ製作
- KDDI:地上基地局設備の仕様、設置に係る知見の提供
KDDIは、月面モバイルネットワークの構築を通して人類の新たな活動領域を開拓する宇宙機関や民間企業の支援に向けて取り組んでいる。KDDIは、2022年からJAXAとの月面の測位・通信に関する技術検討を実施しており、本実証の成果と、地上でのモバイルネットワークインフラの構築に関する知見を最大限活用し、クライアントへ高品質な通信サービスを提供することで、アルテミス計画に貢献していくという。
なお、本実証を共同で実施したGITAIには、「KDDI Open Innovation Fund 3号」を通じて出資しており、オープンイノベーションへの取り組みも引き続き強化するとともに、共創パートナーと共に新たな体験価値を創造していくとしている。