本コラム第1回目としては、私が住んでいる台湾の動向を取り上げる。急速に成長する深圳を横目に従来の加工製造からの脱却を目指す台湾、ドローン産業の盛り上がりはどうだろうか。
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台湾、ドローン産業の盛り上がりは?
台湾で「ドローン」(中国語では無人機)という言葉が注目され始めたのは、日本同様事故や事件がきっかけとなっている。観光客による台北のトレードマークである101ビルへのドローン衝突事故や空港敷地内へのドローン墜落事件で一般民衆のドローンへの認知度が高まった。事件後、ドローン規制の声があがったが、現状下記の通り日本よりも緩い法規制となっている。重量15キロを超えるものについては政府機関の民航局(民用航空局)が管理し、趣味利目的にかかわらず免許が必要、かつ機体、操縦者両方の登録が必要。免許取得可能年齢は他の免許を参考に現状18歳以上とする。15キロ未満の重量については地方自治体の管理に任せる。
大きさに関わらず下記の飛行規定が設けられ、この規定をこえる飛行については空撮業者であれ政府機関への申請が必要となる。
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台湾でのホビードローンについては日本同様ラジコンメーカーが牽引しており、ラジコンメーカーとしては珍しい上場企業である雷虎科技(サンダータイガー)はfollow me機能も付いているゴーストという空撮マルチコプターを2014年に発表している。また東芝のOEMも受けていた亜拓電器(アライン)は空撮マルチコプターの他レース用ドローンやFPV(First Person View=一人称視点)ゴーグルも展開している。アラインは愛好家クラブも持っており、本社のある台湾中部の台中には専用の練習場もあり、操縦研修なども行われている。
また、2015年にはiphoneのOEMで鴻海(ホンハイ)に次ぐ上場企業のペガトロンがSnapdragon 8226を採用した160グラムの軽量ドローンを発表している。さらに、ホンハイ出身者が立ち上げ、ホンハイ役員が出資をしているというレース用ドローン製造スタートアップも出てきており、ドローンがOEM企業の注目を集めているようだ。
産業用の開発についてはドイツのルフトハンザとも提携し、航空メンテナンス教育で著名な中華科技大学の動きに注目だ。台湾の工業地区である北部の新竹にメインキャンパスを持ち、新幹線が開通し今後の発展が期待される南部の雲林県(ユンリン)に分校を構える同校ではドローン人材育成課程が準備されている。新竹キャンパスには電波実験室、カーボンなどの素材加工、フライトシュミレーター等の設備を抱えており、これらをドローンの設計、開発、運用まで対応できる専門人材教育にも応用していく。さらに雲林県の分校では広いキャンパスを利用し産学連携のドローン実証特区にする構想もある。雲林県の主要産業は農業であるため、雲林県のサポートも受けながら、この特区を中心にドローンを活用した精密農業の研究が進む可能性が高くなっている。
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今後の台湾に期待
台湾は政権交代後、IoTやバイオテクノロジーを含む5大イノベーション計画を発表し、新竹に隣接する桃園市を中心にアジアのシリコンバレーを目指すとしている。さらに、2016年7月にはイノベーション計画の第一弾としてサンダータイガー、アラインも本社を構える中部の台中市を中心に精密機械のクラウド、ロボット、ビッグデータ等への応用を目指すスマートマシンシティー推進計画も発表された。この計画には中華科技大学の分校がある雲林県も含まれており、同校のドローン実証特区や産学連携プロジェクトがどう関わってくるのか、引き続き注目だ。