なお、同実証実験では、ソフトバンクが開発した、5G(第5世代移動通信システム)に対応したシリンダーアンテナを活用している。
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同実証実験で実施した内容の一部は、2022年に国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の「Beyond 5G 研究開発促進事業」の委託研究課題として採択された、「上空プラットフォームにおけるCPSを活用した動的エリア最適化技術」に基づくもの。
同実証実験の背景
エリア最適化技術は、HAPSで大容量かつ高品質の通信ネットワークを実現するために不可欠なものだという。ソフトバンクが開発を進めるHAPS用の無人航空機「Sunglider(サングライダー)」は、1機で直径最大200kmの広域なエリアをカバーするが、単位面積当たりの通信容量を改善するには、通信エリア内を複数のセル(ビーム)でカバーする必要があるとする。
加えて、人口密集地や人が少ない山間部など、通信エリア内でも場所によって通信量が異なる。そこでソフトバンクでは、HAPSと通信デバイスとの間でデータの送受信を担う「サービスリンク」向けのアンテナとして、シリンダーアンテナの活用を検討しており、デジタルビームフォーミング技術※によるビーム形成および方向制御により、地上のユーザー分布などの情報から人口密度やトラフィックが高いエリアにビームを集中させる、エリア最適化技術の開発に取り組んでいる。
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※デジタル制御により送受信信号の振幅や位相を制御することで、電波を特定の方向に集中させて送受信する技術
これにより、通信エリア内におけるニーズに応じて最適化を行うことで、通信容量の最大化などを実現するとしている。
同実証実験の概要
同実証実験では、高所作業車に搭載したシリンダーアンテナにより形成される通信エリア内の通信品質を測定することで、ユーザーの位置に応じて変化したセルの配置を確認した。また今回は、ユーザー分布の情報を把握するために、一例として通信デバイスの個別の位置情報を使用して、水平面内の6つのセルの方向およびビーム幅の最適化計算を行い、その結果に基づいてシリンダーアンテナによるビーム制御を行った。このビーム制御は、定期的に行うことで時間帯によって変化するユーザー分布に応じた動的制御を行うことも可能だという。
同実証実験の結果、通信デバイスの位置に基づいてエリア最適化技術を適用した場合に、各通信デバイスの方向に対してビームが適切に向き、各ビームの受信信号レベルが理論値通りになった。この結果、セルの配置をニーズに応じて最適に制御することが屋外環境でも可能であることが確認でき、これまで検討してきたHAPSのエリア最適化技術の実現性と有効性も確認できたという。
ソフトバンクは今後、同実証実験を通して得たノウハウやデータを基に、HAPSの実用化および通信ネットワークの高度化を進めていく方針だ。