無人でリモート操作や自律飛行ができるドローンは、人が活動するのに危険が伴う高所や海底などで作業を行う用途で使われることが増えてきた。機体が見えない場所で飛ばす目視外飛行を許可する動きも広がっていることから、BVLOS(Beyond Visual Line of Sight)ドローンの開発も進み、さらに悪天候や過酷な環境をものともせず運用できるドローンも登場している。
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BVLOSに最適な長距離配送ドローンを開発するスイスのドローンメーカーRigiTech社は、フランスのドローン配送スタートアップDelivrone社と協力し、診療所と病院の間で重要な医療物資を人が寝静まっている夜間でも運べるプラットフォームを開発している。
プロジェクトに使用されるRigiTech社の物流ドローン「Eiger」は、低照度でも安全に夜間飛行ができる独自の認識技術を搭載しており、急激な気温変化や気象条件にも柔軟に対応できる性能を備えている。
その機体を使うだけで夜間飛行は可能と思われるが、今回コラボしたDelivrone社は医薬品や検査用血液などを問題が生じないようにドローンで運ぶノウハウを持っており、さらに夜間飛行に適切なルートを構築することができる。つまり両社のメリットを組み合わせることで、人の命に関わる医療物資をより早く効率的に運ぶことができるというわけだ。
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両社はフランスの北部2カ所で実証実験を行い、夜間に39kmの距離を約25分という早さで、問題なく医療物資を運ぶことに成功したと発表しており、今後も対応ルートを広げていくとしている。
環境が過酷な砂漠でドローンを運用するシステムも開発されている。耐久性の高いテザー型ドローンを開発するElistair社は、気温の変化が激しく視界の確保が難しくなる上に、GPSやGNSSだけでなくラジオ周波数も使用できない環境で、監視や偵察を行えるシステム「KHRONOS」をリリースした。
ドローンの重さは約30kgで、専用のドローンボックスから2分ほどで取り出せ、ボタン一つで運用できるシンプルさが特徴となっている。バッテリーはボックスからテザーを通じて供給され、運用次第で24時間飛行が可能になり、半径10kmの範囲を昼夜問わず空撮できる。用途は主に軍用と見られるが、一般向けにも販売しており、砂漠以外の悪条件でも使えるのでそうした場所での調査や監視などで幅広く使われそうだ。
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寒さが厳しいエリアで使えるドローンも登場しており、その性能は公共機関でも認められ始めている。米国アラスカ州運輸公共施設局は重要なインフラ検査や雪崩の監視にドローンを使用しており、パイロットが現地で目視による操作を行っていたが、リモートで操作できるBVLOSで活用することを承認したと最近発表した。
使用するドローンは専用のドックで離着陸からバッテリーの充電、保温も全て自動にできる機能を備えており、FAA(米国連邦航空局)でUASの開発協力を行う組織と1年かけて実用化につなげた。これまで数日かかっていた作業を1日に短縮する効果を発揮しているが、さらに寒さが続く冬季の運用を検証してから使用する範囲を広げることが計画されている。
ここまで紹介したドローンの中で、最も過酷な環境に耐える性能を備えていると言えるのが、Black Swift Technologies社が開発した「Black Swift S0」だ。嵐の中心に飛行機で飛び込んで観測データを収集するハリケーン・ハンターという仕事があるが、かなり危険が伴う作業であるため無人機の活用が以前から検討されていた。Black Swift SOはハリケーンの大気調査用に設計された小型ドローンで約1.4mの翼を持ち、秒速17mのスピードで最長90分間飛ぶことができる。飛行中に風速と風向、気温、大気圧といった様々なデータを迅速で効率的に収集し、もちろん耐久性にも優れている。
今年10月にNOAA(アメリカ海洋大気庁)のハリケーンフィールドプログラムチームによって実施された初めてのミッションでは、ハリケーンハンター用の航空機P-3と共にデータの収集に成功した。なお、このミッションでは以前紹介したSaildroneの無人航行艇「Altius 600」も使用されており、海上データも同時に収集することができたとしている。
Vol.42 まるでハンマーを持った海洋ドローン、海の守り神としてブルーエコノミーを支える [ Drone Design ]
環境の変化に強いドローンの登場は、気象条件が多様な日本でもドローンの運用は十分可能で、ますます増える可能性があることを感じさせてくれる。もしかしたら今後は日本をテストフィールドに、さらに厳しい環境にも耐えられるドローンが新しく開発されるかもしれない。