QPS研究所は2005年に福岡で創業された宇宙開発ベンチャー企業で、小型SAR※衛星の開発・運用を行っている。
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※SAR(合成開口レーダー):電波を使用して地表の画像を得るレーダー。雲や噴煙を透過し、昼夜を問わず観測することができる点が特長
QPS研究所の衛星2号機「イザナミ」が持つ、民間のSAR衛星として日本最高精細の記録(レンジ分解能において)を上回ることになる、アジマス(衛星の進行方向)分解能1.8m、レンジ(衛星のマイクロ波を照射する方向。もしくは、衛星の進行と直交する方向)分解能46cmを実現した画像も含まれる。
QPS研究所と北部九州を中心とした全国25社以上のパートナー企業が開発・製造した「アマテル-III」は米国SpaceX社のロケット「Falcon 9」によって2023年6月13日(火)6:35(日本時間)に打ち上げられ、79分後に高度約540km で軌道投入された。そして同日の9:30頃には、初交信に成功し、打ち上げより約21時間後に収納型アンテナを展開した。その後、初画像取得に向けた衛星機器の微調整を続け、打ち上げより1カ月後、今回の画像取得の公開に至った。
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この後は、引き続き衛星の姿勢制御の調整を行いつつ、アジマス、レンジ分解能共に46cmの高解像度モードでの観測を開始するとしている。
QPS研究所の代表取締役社長CEO、大西俊輔氏は次のようにコメントしている。
大西氏:QPS-SAR 3号機以降は衛星コンステレーション※構築に向けて改良されていましたので、今回、QPS-SAR 6号機によって画像を取得することは、準リアルタイムデータ提供サービスにおいて重要なマイルストーンでした。この日を迎えられて、まずはほっと一安心しております。
弊社の衛星開発のチーム、パートナー企業の皆様、そして衛星の調整をスピーディーに進めてくれた運用チームの技術、団結力を大変誇らしく、そして頼もしく感じています。この結果がもたらされたのも、プロジェクトにいつもご協力を賜っている株主の皆様、そしてデータ活用のスタートを心待ちにしてサポートくださっている皆様のおかげでもあり心より感謝申し上げます。この後は、皆様に46cm分解能の画像をお見せできるように、高精細モードでの観測に向けて同心協力して取り組みたいと思います。
※複数の人工衛星によって、高頻度な地球観測を可能とするシステム(コンステレーションは「星座」の意)
ファーストライト詳細
観測日時 | (1)2023年7月12日 0:30(水)(日本時間) (2)2023年7月10日 0:54(月)(日本時間) (3)2023年7月9日 0:05(日)(日本時間) |
観測場所 | (1)長野県松本市(観測時の天候:曇り) (2)富山県富山市(観測時の天候:曇り) (3)大阪府大阪市(観測時の天候:曇り) ※天候は全て気象庁の公開データより |
分解能 | (1)アジマス分解能1.8m×レンジ分解能46cm(オフナディア角30°) (2)アジマス分解能1.8m×レンジ分解能80cm(オフナディア角16°) (3)アジマス分解能1.8m×レンジ分解能60cm(オフナディア角22°) |
画像説明補足 | アマテル-IIIは分解能1.8mの通常モード(ストリップマップモード)と分解能46cmの高精細モード(スポットライトモード)の観測ができ、この度は通常モードでの観測 |
画像処理協力 | アルウェットテクノロジー株式会社 |
ファーストライト SAR画像
3号機以降のQPS-SARにはさらに高精度・高画質の画像を取得できるよう様々な改良を加えたという。展開型太陽電池パネルとバッテリーを追加し、使用できる電力量を増やし、アンテナの鏡面精度も向上させることで、さらに強い電波を出せるようになった。改良の狙い通りに「アマテル-III」の画像は、2号機「イザナミ」と比較して画質が上がったことがファーストライトからもよく分かる。
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山々や田畑の様子、海の波の様子、そして川と河川敷の区別もしやすくなり、さらに状況把握がしやすくなる。濃淡もはっきりして、視認性が高いため、SAR画像活用の幅が広がることが期待されるという。
(1)長野県松本市
(2)富山県富山市
(3)大阪府大阪市