今日の持続可能な自動車の動向は、主要自動車市場の国々においてカーボンニュートラルの目標をめぐる数々の宣言がなされたことから始まったと言える。そこで、HyundaiのパフォーマンスブランドのNは、内燃機関の次のステージである電動化に着目し、他のどのブランドよりも早く大胆な投資を行い、具体的な成果につなげた。
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Hyundaiは、レーシングカーのVeloster N ETCRで電動モータースポーツのノウハウを実証し、ローリングラボ※(可搬実験室)RM20eで電気技術のノウハウを育んできたという。
※ローリングラボ:モータースポーツから着想を得た高性能技術や、特定の電動化技術を量産モデルに適用する前に、研究開発と検証を行う車両
今年の7月に発表したRN22eは、2023年にデビューするIONIQ 5 Nによる高性能の電動化体験の先駆けとなった。このようにNブランドの電動化は、遠い将来の計画ではなく、間もなくやってくる現実になるとしている。
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持続可能な動向のさらなる成果、それがNブランドの新しいローリングラボの「N Vision 74」だとしている。RM20eやRN22eなどの現行のローリングラボシリーズとは、いくつか異なる点がある。最大の特徴は、N Vision 74がNブランド初の水素ハイブリッドのローリングラボであることだ。もう一つの違いは、デザインやテクノロジーなど、N Vision 74の中核部分に示されているように、持続可能な高性能自動車の製造を望んできたHyundaiの過去、現在、未来が含まれているということだ。
とりわけN Vision 74には、数十年前から続いているスポーツカー開発へのHyundaiの取り組みが反映されており、この数年にわたって高性能なFCEVを着実に開発してきたHyundaiの最新の成果といえる。つまり、N Vision 74は、Hyundaiの過去、現在、未来を取り込んだ高性能な水素・電気ハイブリッド車と言える。
ハイパフォーマンスブランドとFCEVの開発
Hyundaiは、N Vision 74を発表する以前から、水素を動力源とする高性能で持続可能な車の開発に力を注いできた。
その成果は、2015年のフランクフルトモーターショーにおいてのN 2025 Vision Gran TurismoコンセプトカーによるNブランドの発表となった。7年前に発表した技術は革新的で、高性能自動車の動力源は内燃機関であるという既成概念を打ち破り、水素燃料電池をベースにした高性能で持続可能な車という新しいコンセプトを提示した。
N Vision 74は、高性能で持続可能な水素電気自動車を着実に開発してきたHyundaiの努力と情熱が反映された最新のモデルだ。それだけでなく、N Vision 74は1974年に発表された韓国初のスポーツカーである「ポニーコンセプト」のデザインと遺産も受け継いでいる。
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重要なのは、ポニーコンセプトが単にデザインを誇るためのショーカーではなく、Hyundaiのチャレンジ精神が込められた量産準備のためのプロトタイプであったという点だ。このモデルは、最終的には生産されなかったが、高性能車の開発に対するHyundaiの情熱は、今日のN Vision 74に受け継がれているという。
Pony Coupeコンセプトカーのデザインと遺産を受け継ぐ
N Vision 74のデザインは、これまでのHyundai車やNブランド、あるいはローリングラボシリーズとは異なり、過去のPony Coupeコンセプトカーのデザインと遺産を示す。そのため、N Vision 74は、クラシックでありながら未来的な外観を備えている。
Hyundaiは、1974年10月のトリノモーターショーにおいて、N Vision 74のデザインのベースとなったPony Coupeコンセプトカーを初めて世界に発表した。当時最高のカーデザイナーだったイタルデザインのジョルジェット・ジウジアーロ氏がデザインを担当し、Hyundaiのエンジニアが努力と情熱を注いだコンセプトカーだった。
時代を超えたPony CoupeコンセプトカーのDNAは、数十年の時を経て、N Vision 74のデザインに溶け込んでいる。N Vision 74は、Pony Coupeコンセプトカーの純粋性、サイドシルエットのダイナミックなプロポーション、特別なBピラーのデザインなどを受け継ぎ、モータースポーツをイメージさせるディテールが追加されている。特に、サイドインテーク、巨大なリヤウイング、ダイナミックなボリュームのフェンダーは、N Vision 74のユニークなデザインを引き立てながら、その強力な高性能を示唆している。
また、Pony Coupeコンセプトカーへの敬意を示すフロントとリヤのパーツは、未来志向的を再現。たとえば、Pony Coupeコンセプトカーのシンボルである長方形のヘッドランプとリヤランプは、Hyundaiの最新のデザインアイデンティティであるパラメトリックピクセルデザインによって再現された。さらに、フロントスプリッターとリヤディフューザーを追加し、ハイパフォーマンスブランドにふさわしい空力性能に強化することで、N Vision 74のユニークなデザイン特徴が完成されている。
時代をリードする革新的な技術を実証するローリングラボ
技術面でもデザイン面でも、ローリングラボという名にふさわしい革新的な外観のN Vision 74は、水素・電気ハイブリッド駆動方式を採用しているが、一般的な水素燃料電池やバッテリーを搭載した電気自動車とは異なるシステム構成を備える。
水素燃料電池スタックとモーターを一体化した既存の水素燃料電池車とは異なり、N Vision 74はその2つを分離。これは、駆動用バッテリーをボディ構造と一体化し、冷却制御と空気の流れを改善するためだという。そのためN Vision 74は、フロントアクスル上に水素燃料電池スタック、リヤアクスル上に駆動モーターと2.1kgの水素タンク2個を搭載し、ボディ中央部にバッテリーをT字型に配置している。
N Vision 74に装備された水素・電気ハイブリッドシステムは、高い重量エネルギー密度を実現している。5分以内の急速充電の燃料電池技術と800Vバッテリーの急速充電技術を組み合わせることで、持続可能な電気自動車の大きなデメリットとなっている充電速度を向上させた。また、水素燃料電池を使用することによって、電気自動車と比較して1回の充電での航続距離が伸びている。
N Vision 74は、現在の持続可能な高性能車の問題を解決するために、85kWの水素燃料電池と62.4kWhの駆動用バッテリーから電力を得ている。また、後輪の駆動には、最高出力500kW(約680hp)、最大トルク900Nmの駆動モーターを2基使用する。
後輪に搭載された2基の強力な電気モーターの構造的メリットを最大限に引き出すため、N Vision 74にはRM20eで開発したツインクラッチによるトルクベクトリングコントロールが搭載されている。その結果、後輪への極端なパワー配分により、旋回力とハンドリング性能を大幅に向上させることが可能になった。また、水素を燃料とする電気自動車では珍しく、ドリフト走行も可能だという。
N Vision 74の新しい駆動システムを有効に活用するために、Hyundaiは燃料電池とバッテリーを統合するコントロールストラテジーを新たに開発した。水素燃料を基本的な動力源とし、バッテリーからの出力をブーストとして使用。その結果、N Vision 74は、静止状態から100km/hまで4秒以内に到達し、最高速度は250km/h以上という驚異的な加速力を実現。このような高性能を発揮しながら、バッテリーの残量を水素発電で維持することで、600km以上の長い航続距離を確保した。
N Vision 74のパフォーマンスには複雑な駆動システムが必要なため、サーキット走行などの過酷な走行条件では、効率的な熱対策が不可欠だという。この問題を解決するために、Hyundaiは、燃料電池スタック、バッテリー、モーター付きPEモジュール、減速機を含む3チャンネル独立型冷却システムを開発した。これにより、効率的かつ迅速な熱管理が可能となり、過酷な走行条件でも性能を持続させることができる。
N Vision 74のデザインとパワフルな性能は、量産化への期待によって注目を集めているという。それは、N Vision 74がローリングラボとして備えるさまざまな先進技術とデザインの可能性は、量産モデルに反映可能だからだ。Hyundaiとローリングラボのハイパフォーマンスブランドに対する情熱が続く限り、N Vision 74のような車が路上を走る姿を間もなく見ることができるだろう。