実に6年半の期間を経てバージョンアップしたInspire 3。バージョンアップへのニーズは高く、一日も早く手にしたいユーザーも多いのではないでしょうか。編集部ではさっそくInspire 3をお借りすることができましたので、まずは外見まわりを見ていきたいと思います。
- Advertisement -
Inspire 3はやはり空撮ドローンの最高峰!6年半で飛躍的に進化したスペック
Mavic 3シリーズでも4/3インチセンサーカメラを搭載するこの頃、やはりInspire 3はフルサイズセンサー搭載の8Kカメラでデビューしてきました。最大8K/75fps ProRes RAWまたは8K/25fps CinemaDNGの撮影が可能で、映画・TVCMなどハイエンドな映像制作現場で活躍することは間違いありません。
ほかにも、飛行性能も飛躍的に向上しています。筆者もInspire 2を愛用していますが、今となっては最新機種と比較すると飛行安定性や映像伝送などに少し不安を抱えるところもありました。もちろん、それらも最新フォーマットに更新され、筆者の操縦した感覚では最新のMavic 3 Proの機敏性と安定性がそのまま大きな機体に取り込まれ、更にもう一段回上の飛行性能を手に入れたイメージです。ふらつくことなく機敏に加速・停止し、水平・上下ともに速度がでるので変化に富んだ画角を作ることができます。
Inspire 3/Inspire 2飛行性能比較
Inspire 3 | Inspire 2 | |
---|---|---|
機体重量 | 約3,995g (ジンバルカメラ、バッテリー×2、レンズ、PROSSD、プロペラを含む) |
約3,901g (X5Sカメラ・レンズ、バッテリー×2、プロペラ含む) |
対角寸法 (ランディングギアが下がった状態) |
685mm | 605mm |
最大離陸重量 | 約4,310g | 4,250g |
最大上昇速度 | 8m/s ※無風環境下、海抜約0mの高度で、ジンバルカメラとレンズを機体に装着し、他のアクセサリーは装着していない状態で飛行して測定 |
Pモード/Aモード:5m/s Sモード:6m/s |
最大下降速度 | 垂直:8m/s チルト:10m/s ※無風環境下、海抜約0 mの高度で、ジンバルカメラとレンズを機体に装着し、他のアクセサリーは装着していない状態で飛行して測定 |
垂直:4m/s、チルト:4~9m/s ※デフォルトのチルト7m/s。アプリで設定可能 |
最大水平速度 | 94km/h | 94km/h |
運用限界高度(海抜) | 標準プロペラ:3,800m 高地用プロペラ:7,000m |
標準プロペラ:2,500m 高地用プロペラ:5,000m |
最大風圧抵抗 | 離着陸:12m/s 飛行中:14m/s |
10m/s |
最大ホバリング時間 | 約25分 | − |
最大飛行時間 | 約28分(ランディングギアが下がった状態) 約26分(ランディングギアが上がった状態) |
約27分(Zenmuse X4Sを取り付けているとき) 約23分(Zenmuse X7を取り付けているとき) |
映像伝送システム | O3 Pro | − |
最大伝送距離 | シングル制御:7km デュアル制御:5.6km |
4km |
ほかにも…
- Advertisement -
- 4つの魚眼センサーをランディングギア+上部広角+底部魚眼&ToFセンサーで全方位の障害物監視を実現
- 1/1.8インチ超広角ナイトビジョンFPVカメラ搭載
- デュアルRTKアンテナ × Weypoint Pro でcmレベルの再現飛行が可能
- 脱着式1TB SSDを機体本体に搭載
- 電源を落とさずにバッテリー交換ができるホットスワップに対応
- DJI RC Plusプロポは内蔵+外付けバッテリーで最大6時間
- 2プロポは独立して映像伝送信号を受信(フェールセーフとしても利用可能)
- バッテリー充電ハブは急速で2本同時90%が35分、8本で完全充電に160分
などなど、書ききれないレベルの優れた機能を搭載しています。
Inspire 3の細部にわたるこだわりと洗練されたデザイン
では、さっそく機体の各部を見ていきたいと思います。全体的には旧Inspire 2と比較するとスリムになった印象です。本体部分などは特に薄くなり、今となっては洗練されていたInspire 2がずんぐりむっくりに見えるくらいですね。
ランディングギアは従来どおり上げ下げ可能
Inspire シリーズの特徴でもあるランディングギアは今回も上げ下げ可能になっており、カメラがパン(横方向の回転)をした際にランディングギアが映り込むことを避けることができます。ランディングギアの外側には魚眼障害物検知センサーがあります。ランディングギアに障害物検知センサーが付くことで、センサーと機体の干渉を防いでいます。
さらに、障害物検知センサーは個別での有効/無効や障害物警告範囲を設定できるので、飛行シチュエーションに合わせてセッティングすることで安全かつ高品位な飛行をすることができます。
ランディングギアと機体は若干斜めに組み合わさっているので、ランディングギアを下ろして着陸しているときは機体前部が上を向くカタチとなり、カメラやレンズの脱着に対してとても便利です。また、ランディングギアを下ろした状態で飛行させると、前進時に機体が前傾姿勢となることで機体本体が水平となり、空気抵抗を減らすことで若干飛行時間を延ばすこともできます。
- Advertisement -
DJI史上最小のフルサイズセンサーカメラ Zenmuse X9-8K Air
ジンバルカメラ Zenmuse X9-8K Airの脱着方法は Inspire 2とほぼ同じです。レンズの装着は二重のロック機構となっており、装着異常があるとプロポにエラー表示も出るため安心です。キット標準は18mmの新開発レンズとなっているほか、Zenmuse X7等と同じDLマウントを採用していますので、既に所有しているDLマウント用レンズを使うことができるのもうれしいところです。
ナイトビジョン型FPVカメラを機体最前部に搭載
操縦オペレーター用FPVカメラは画角が約2倍の161°に進化(Inspire 2は84°)。センサーサイズも1/1.8(Inspire 2は1/7.5)インチ、解像度も1080p/60fps(Inspire 2は480p/30fps)になり、加えて高感度のナイトビジョンカメラにより鮮明な映像を(薄暗い環境でも)提供してくれます。
バッテリーは新型TB51 ホットスワップも簡単に
バッテリーは、カタチは似ているものの、Inspire 2で使用していたTB50ではなく、進化型のTB51となっています。最大28分の飛行を可能とし、ホットスワップ(電源を落とさずに片方ずつバッテリーを交換する方式)も簡単にできるようになっています。
バッテリー充電ハブも刷新され、8つのバッテリーを同時に差し込むことができ、急速充電モードでは2つのバッテリーを同時に0%から90%までわずか35分で充電することが可能です。
刷新されたRC Plus プロポは7インチ1200ニトの高輝度モニター搭載
Inspire 3に用意された新しいプロポは、7インチ1200ニトの高輝度モニターを搭載したRC Plus。DJI Pilot2 アプリで運用します(同タイプのMatrice 30用プロポと互換性はないようです)。今までのプロポサイズよりも一回り大きなタイプとなりますが、筆者の感覚ではなれると操作性に問題は全くありませんでした(ただし、ストラップは使ったほうが楽です…)。
また、標準でRC Plusは2つ付属してきます。Inspire 2でマスター/スレーブのデュアル制御設定をする際には手間取ることがあったのですが、今回のInspire 3のRC Plusはすぐに接続完了。しかも、個別に機体に接続しますので、操縦設定のRC Plusが電波断絶したとしてもカメラ操作設定のプロポでフェールセーフ的に操縦に割り当てて操縦を継続することができます(Inspire 2はマスタープロポが機体と接続、カメラ操作のスレーブはマスタープロポと接続するので電波断絶するとマスター/スレーブともに断絶します)。
挿入式 1TB SSDや折りたたみ式プロペラなど便利な機能がたくさん
映像の記録はMicroSDではなく、挿入式の1TB SSDを用います。直接USB-CでPC等と接続できるので便利です。
プロペラはMavicシリーズのような折りたたみ式になりました。秀逸なのは、このプロペラを折りたたんだ状態で収納ボックスに入れることができること(バッテリーも装着状態でOK)。Inspire 2は毎回折りたたみ式でない大きなプロペラを脱着して収納していたのですが、ちょっとした移動時に収納しなくてはならないときなどに少し煩わしさを感じていました。Inspire 3ではちょっとした収納&移動というシチュエーションでもストレスを感じさせません。
これ以上何もいらないレベルの完成度!撮影現場の空撮を変えることができるか?
ファーストインプレッションとしては、空撮に必要なものがすべて揃った機体…という印象を受けました。今回は飛行前のインプレッションとなりましたが、Waypoint Proによる再現飛行など、空撮の方法を変えてしまうレベルのポテンシャルがある機体なのではないでしょうか。
もちろん、お値段もそれなりとなりますので(1,769,900円~)、コストパフォーマンスを見て必要な方も絞られるかもしれません。自分にとって必要か、それとも"Too Much"なものなのか、記事が参考になれば幸いです。
次回は、実際にフライトさせて機能検証をしていきたいと思います。