この1月から、この「DRONE」のサイトのレイアウトが変わったことに気がついた方も多いだろう。メニューがDRONE、MOBILITY、SPACE、ROBOTICSという形になり、様々なエリアに“ドローンテクノロジー”が広がっていることをわかりやすく示している。
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今年の4月1日から道路交通法が改正となり、今まで様々な形で実証実験されてきた陸上走行ロボットが本格始動する。
陸上走行ロボットの開発経緯
陸上走行ロボットに関しては、1980年代よりAGV(Automatic Guided Vehicle、無人搬送車)という形で、工場や倉庫で従来は人が行っていた搬送作業を代替するロボットとして実用化されていたが、草創期に活躍していた無人搬送車のタイプは、「電磁誘導式」や「磁気誘導式」で、いずれも磁気テープや磁気棒などの誘導体(車両を誘導するための媒体)を床面に設置し、あらかじめ設定された範囲やルートのみを自動走行することができるものだった。その無人搬送車は、当時としては画期的であり利便性の高いツールだったが、決められたルートしか走行できず、誘導体の劣化やレイアウト変更に対応できないなどの課題があり、あまり大きな広がりにならなかった。
AGVの市場規模は、株式会社矢野経済研究所が2020年9月に発表した「AGV/搬送ロボット市場に関する調査」によると、メーカー出荷金額ベースで、2018年度は168億2000万円でしたが、2019年度は188億1500万円となっており、その後200億円規模の売上をキープする予測となっている。
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AGVの主要メーカーは村田機械、DAIFUKU、オムロン、ヘッズ、エレメックス、シコウ、愛知機械テクノシステム、明電舎などとなる。
その後、2010年代半ばから次世代AGVといわれるAMR(Autonomous Mobile Robot、自律走行搬送ロボット)の開発が進んできた。AMRは誘導体などのガイドが不要で、マップをもとにセンサで位置を認識してルートを自動で計算して走行することが可能で、AGVは走行ルート上に障害物があったらルートを自動変更できないため停止してしまうが、AMRは障害物を検知すると自動で回避して、再度ルートを計算して走行することが可能となっている。
こういった自律の技術に関して、ドローンでも使われているフライトコントローラー(FC)のテクノロジーが使われているケースが多い。
当初は従来通りの工場や倉庫などでの活用が中心ではあったが、2020年前後から一般的な道路などでの搬送における活用に関しての実証実験が始まった。
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空飛ぶドローンと陸走車の最大の違いは、航路と走路の精度の違いになる。
空であれば、数mの誤差はほぼ問題ないケースが多いが、陸の場合、数mの誤差はNGで、場合によっては数cmというケースも出てくる。
また、空の場合は高度の違いもあり、道路といったものもないため、衝突に関してのセンサが搭載していてもほとんど作動することは少ないが、陸の場合は、衝突防止のセンサおよび、その挙動制御は必須であり、また、制御精度も高くなければならない。
4月からの改正道路交通法
今回の改正道路交通法では、新たに「特定自動運行」や「遠隔操作型小型車」について法整備がなされている。
特にここで挙げた自動走行ロボットに関しては、「遠隔操作型小型車」となる。
「特定自動運行」に関しては、いわゆる「自動運転レベル4」を意味し、これは人が介在することなく走行し、万が一の際も自ら自動で安全に停止する機能を備えた自動運転車の運行を指す(なお、車内や遠隔地に運転者が存在するレベル3などは、現行制度上においても道路使用許可を受けることで可能となるため、特定自動運行には相当しない。)。
「遠隔操作型小型車」は、主に歩道を走行することが想定される「自動走行ロボット」がここに該当し、これは遠隔操作により通行する車であって、最高速度や車体の大きさが一定の基準に該当するものを「遠隔操作型小型車」と規定している。
このコラムでは主にこの「遠隔操作型小型車」に関して、記していきたい。
「遠隔操作型小型車」のルール
遠隔操作型小型車に関しては、交通方法に関する規定を整備しており、これは歩行者と同様の交通ルールを適用することとしているものだ。信号に関して、青色の灯火は進行することができ、黄色の灯火は道路の横断を始めてはならないなどとする歩行者の規定に、遠隔操作型小型車も加えることとしている(第2条関係)。つまり、歩行者が従うべき信号機のルールがそのまま遠隔操作型小型車にもあてはめられることとなる。
また、遠隔操作型小型車は届出制で、通行させようとする場所を管轄する都道府県公安委員会に事前に届出を行うことになっている。
以下が遠隔操作型小型車の交通方法等に関する規定の整備関係となる。
出典:警察庁
いくつかの大切なポイントを示したい。
届出制
遠隔操作により道路を通行する遠隔操作型小型車の使用者は、同車を通行させようとする場所を管轄する都道府県に対して、使用者の氏名等、通行する場所、遠隔操作を行う場所、非常停止装置の位置、遠隔操作小型車の仕様等を事前に届け出する必要がある(15条の3)。また、届出番号等を遠隔操作型小型車の見やすい箇所に表示する必要がある(15条の4)。
車体
車体の大きさは、長さ120cmx幅70cmx高さ120cm以下で原動機として、電動機を用いること、最高速度は時速6キロまで、歩行者に危害を及ぼすおそれがある鋭利な突出部がないなどの規定が設けられている。
なお、型式認証に関しては、制度を設けるとしており、まだ具体的な制度内容は明らかにされていないが、当初はドローンの時と同様に届け出の時に個別に申請し、判断を仰ぐものと思われる。
通行場所と通行方法
遠隔操作により道路を通行する遠隔操作型小型車は「歩行者等」に含まれ(4条1項)、歩行者と同様に、歩道、路側帯および道路の右側端を通行することができる(10条1項)。そして、信号や道路標識等に従うことや、横断歩道を通行するなど、歩行者相当の交通ルールに従って通行させる必要がある(12条、13条)。
また、歩行者の通行を妨げることになるときは、歩行者に進路を譲らなければならない(14条の2)。遠隔操作型小型車の遠隔操作を行う者は、当該遠隔操作型小型車について遠隔操作のための装置を確実に操作し、かつ、道路、交通および当該遠隔操作型小型車の状況に応じ、他人に危害を及ぼさないような速度と方法で通行させなければならない(14条の3)。
法令違反に対する措置等
警察官または交通巡査員は、遠隔操作により道路を通行している遠隔操作型小型車が著しく道路における交通の危険を生じさせ、又は交通の妨害となるおそれがあり、かつ、急を要すると認めるときは、道路における交通の危険を防止し、又は交通の妨害を排除するため必要な限度において、当該遠隔操作型小型車を停止させ、又は移動させることができることとする(15条の2)。また、都道府県公安委員会は、使用者またはその使用する者が法令に違反したときは、危険防止等のため、使用者に対して、必要な措置(措置をとるまでの間の通行停止を含む)をとるべきことを指示することができる(15条の6)。
また、15条の3第1項の規定による届出をしないで、もしくは虚偽の届出をして、道路において遠隔操作を行ったとき、または15条の6の規定による公安委員会の指示に従わなかったとき、当該違反者は、30万円以下の罰金に処される可能性があり(119条の2の2)、法人につき罰金刑が併料される可能性がある(123条)。さらに、遠隔操作型小型車の遠隔操作による通行に関して、4条1項後段に規定する警察官の現場指示や信号機の信号等に従う義務(7条)、通行の禁止等(8条)の規定等に違反した者は、2万円以下の罰金または科料に処される可能性がある(121条1項2号)。
その他の改正
上に挙げたのは「遠隔操作型小型車」の改正であるが、それ以外にも今回の改正により、「自動運転レベル4」である「特定自動運行」も可能になった。
以下が特定自動航行に関わる許可制度の創設に関する規定の整備関係となる。
出典:警察庁
ここでは詳しい記載は行わないが、当然、「遠隔操作型小型車」よりも厳しい規定となっており、また、特定自動運行の許可に係る標準手数料として、特定自動運行の許可の申請に対する審査7万9,200円、特定自動運行計画の変更の許可の申請に対する審査7万8,500円となっている。
また、事前の教育に関しても、内容が定められており、第75条の19に定めた特定自動運行主任者、現場措置業務実施者、それ以外の特定自動運行業務従事者に実施しなければならない教育内容についてそれぞれ細かく規定している。
特定自動運行主任者は、自動運行装置の仕様や遠隔監視装置の作動状態の監視、特定自動運行を終了させるための措置、事故時の対応などが教育事項に盛り込まれている。
特定自動運行主任者の要件では、両眼の視力または両耳の聴力を喪失した者でないこと、遠隔監視装置その他の特定自動運行を行うために必要な設備を適切に使用することができる者であることなどを求めている。
そして、その他、「特定小型原動機付自転車(電動キックボード)」や「移動用小型車(搭乗型移動支援ロボット等)」に関しても今回の改正に盛り込まれている(「特定小型原動機付自転車」は自転車と同様、車道、普通自転車通行帯および自転車道を通行する。「移動用小型車」は「遠隔操作型小型車」と同様に歩行者等に含まれる。)。
今回の改正で動き出すこと
今回の改正により、動き出すと思われるのは以下だ。
「遠隔操作型小型車」
まずはリモコンで操作する用途となるので、配送の補助などで動き出すだろう。
その他、工事現場や農地での搬送などでも、日本は道路を走らなければならないケースがあり、こういった遠隔操作型小型車がなかなか普及してこなかったが、この改正により一気にその市場が動き出す可能性がある。
また、現在ではまだ遠隔操作のみで、自動走行まで許されていないが、「特定自動運行」の状況を鑑みながら、数年以内には、この遠隔操作型小型車の自動化が可能なルールが策定されて、より活用の場が広がっていくだろう。
この段階においては、動く監視カメラとして、住宅街の防犯対策や児童の送迎監視、徘徊老人対策などでの活用がされていくことも想像される。
「特定自動運行」
まず決められたルートを走る無人バス等、特に運転手が不足しているような地方での巡回バスが動き始めるだろう(デジタル田園都市国家構想などの大きなテーマとなる)。
都市に関しては、交通事情が複雑なこともあり、かなり限定されるだろう。
高速を走るトラックなどに関しても、比較的早くに実用化される可能性がある。
「特定小型原動機付自転車」
これは都市の移動手段として、より広がっていくことが予想される。また、観光地などの移動手段としても拡大する可能性がある。ただし、車道を走ることにより、自動車との接触事故などはどうしても増えてしまうかもしれない。そういった意味では、交通ルールが厳格化される恐れもある。
「移動用小型車」
現状は1人乗りといった形となるが、これもシニアカーとして普及していくと思われる。
今後、ゴルフカートぐらいのサイズに拡張していったり、また、これも「遠隔操作型小型車」と同様に、自動化が可能なルールが策定されて、より活用の場が広がっていくだろう。